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ネゼ=セガンは近年まれにみる傑出した指揮者だ!

 1975年生まれの若い指揮者ネゼ=セガンのCDを聴き続けている。いやはや本当に素晴らしい指揮者だ。近年稀にみる傑出した指揮者だと思った。新たに聴いた数枚について、簡単に感想を書く。ネゼ=セガンの演奏するブルックナーのCDもiPadで聴く限りでは圧倒的な名演だと思うが、自宅でじっくり聴く時間がないので、これについてはもう少ししてから感想を書く。

577  「ドイツ・レクイエム」。ロンドン・フィル。ソプラノはエリザベス・ワッツ、バリトンはステファヌ・ドゥグー。これは正真正銘、最高の演奏! じっくりと、かなり重めに深い感動を作り出す。まさにすでに巨匠の指揮ぶり。第二曲がとりわけ凄い。いたずらにドラマティックなわけではない。少しずつ盛り上がっていく。そして、腹の奥底から魂を揺さぶる。どのオーケストラの演奏も、ティンパニの音が実にいい。ロンドン・フィル合唱団も実にきれい。オーケストラは重めだが、合唱はすこし軽めな印象。運命を呪い、人生を悲しむと同時に、この合唱の中に神への祈りの心がこもっている。第三曲も第六曲も素晴らしい。独唱もいい。久しぶりにこの曲の名演CDに出会った。

473 ベルリオーズの「幻想交響曲」と「クレオパラ」。ロッテルダム・フィル。「幻想」もとてもいい。前半は抑え気味だが、第一楽章から研ぎ澄まされた音で異常な世界を作り上げていく。音が実にリアル。なぜ、この人が振るとこんなに中身の詰まった深い音がするのか不思議だ。第四楽章から、とりわけ大きなドラマが爆発してくる。が、我を忘れて狂気の世界に入るこむわけではない。冷めた爆発とでもいおうか。そこが凄い。ただ、私としては、ベルリオーズについてはもっと狂ってもいいのではないかと思う。ちょっと、その点で不満。が、もちろん、これはこれで凄まじい。

753 サン・サーンスの交響曲第3番といくつかのオルガン曲。オーケストラは、「メトロポリタン・オーケストラ」だというので、ニューヨークのメトロポリタン・オペラ管弦楽団だとばっかり思っていたが、ライナーノーツを読むと違うようだ。1981年に設立されたカナダのケベックのオーケストラで、ネゼ=セガンは2000年から芸術ディレクターを務めているという。が、見事なオケだと思った。深くてうねるような厚い音を私は満喫した。オルガンはフィリップ・ベランジェ。ネゼ=セガンのフランスものは実にいい。フランクの交響曲も素晴らしかったが、サン・サーンスも同じように素晴らしい。第一部は、わくわくするような期待感に胸がはずむ。白熱しているが、我を忘れるわけではない。論理的な白熱とでもいうか。うねり、弾み、徐々に興奮が広がっていく。

742_2   ラヴェル作品集。ロッテルダム・フィルによる。「ダフニスとクロエ」第二組曲、「高貴で感傷的なワルツ」「ラ・ヴァルス」「マ・メール・ロワ」組曲。これも見事。まず、「ダフニスとクロエ」第二組曲の冒頭「日の出」に驚く。静かでしなやかで、しかし芯の強い音で、まさに日の出が描写される。そして、その後の盛り上がりの凄さ。フランス的な繊細で美しい洗練と芯の強い深みが同居している。いずれの曲も、流動し、題名にもある通りに高貴。・・・ただ、「ラ・ヴァルス」については、私はちょっとバタバタしすぎているように思った。この曲の微妙な形が崩れているように思った。私の勝手な思い込みかもしれないが、もっとしなやかに龍が空を舞うような演奏であってほしい。

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コメント

こんばんは!

ネゼ=セガンは、確かに良い指揮者です。カナダでのポストのせいでしょうが、ケベック州のレーベルが支援につき、多くの録音がきけることは幸いです。しかし、いまのところ、私はまだ彼の振るオーケストラの録音には満足しきっていません。

NMLページへ:
http://ml.naxos.jp/album/ACD22327

このディスクを聴いてもらいたいと思います。古楽器のフォルテピアノを弾いて、ソプラノのスージー・ルブランの伴奏をしていますが、この録音がネゼ=セガンのもので、いちばん良いと感じるものです。オーケストラではまだ、ここまでふくよかに歌う、妙味のある演奏にはなっていないと感じています。ということは、まだ、オーケストラの指揮ではネゼ=セガンの本領は完全に発揮されていないということを示すはずです。

ルブランはカウンターテノールみたいな独特の肉厚な声をだしますが、それと対話するネゼ=セガンの伴奏が柔らかくて、なんとも素晴らしいと感じています。これを越えたものを出したとき、ネゼ=セガンはいよいよ本物になるのではないでしょうか。

投稿: アリス | 2011年11月 2日 (水) 21時22分

アリス様
コメント、ありがとうございます。
モーツァルトのリート集、聴かせてもらいました。面白い演奏ですね。早速注文しました。
が、私はオーケストラ指揮のほうがずっと好きですね。このピアノフォルテ伴奏のような雰囲気の指揮を聴いたのであったら、私はこれほどネゼ=セガンにいれあげたりしないでしょう。
柔らかい指揮、高貴な指揮、生き生きとした指揮をする人はたくさんいます。が、ネゼ=セガンの指揮はそれとは根本的に違います。もっと激しいものを奥に秘めているのを感じます。
私が最初に実演を聴いた「ドン・ジョヴァンニ」は、まさしく恐ろしくなるような悪の世界があふれていました。彼の演奏には、どす黒い何か、人間の奥底にあって人間を成り立たせている言葉にならない何か、そんなものがはっきりあることが感じられるのです。ディオニュソス的なものといってよいかもしれません。フルトヴェングラー以来、あまり感じることのなかったもの、それが彼の演奏にはあるのです。
そうしたものは、彼のピアノフォルテ演奏には少しも感じられません。やはり、彼は根っからの「オーケストラ指揮者」なのだと改めて思いました。

投稿: 樋口裕一 | 2011年11月 3日 (木) 20時00分

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