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スーパー・コーラス・トーキョー特別公演、モーツァルト「レクイエム」は退屈だった

 10月6日、東京オペラシティコンサートホールで、スーパー・コーラス・トーキョー特別公演を聴いた。ヘルムート・ヴィンシャーマン指揮、ロベルト・ガッビアーニ合唱指揮、東京都交響楽団で、モーツァルトの「レクイエム」(レヴィン版)とブルックナーの「テ・デウム」。

 ヴィンシャーマンという名前は昔から演奏家として知っていた。指揮者としての活動も話には聞いていた。が、あまり関心を持たずにいた。たまたま別用ができた知人にいただいて、聴いてみようという気になった。

 演奏者には申し訳ないが、かなり退屈だった。

 きっとヴィンシャーマンの指揮のせいだと思うが、ゆっくりとした一定のテンポでずっと続く。音の強弱もあまりなく、ずっと同じような音の強さ。おそらく、真摯に音楽に向き合い、そこから深い感情を引き出そうとしているのだろう。だが、演奏家たちは頑張って演奏しているが、何しろ、ずっと頑張りっぱなしでメリハリがないので、頑張っても、それがダイナミズムに結び付かない。ヴィンシャーマンは90歳を超えている。その割には足腰もしっかりし、まるで70代に見えるし、音楽も輪郭がしっかりしているが、このワンパターンは辛い。

 モーツァルトの「レクイエム」のレヴィン版というのは初めて聴いた。「ラクリモサ」の後にフーガが入るのでびっくり。その後も、歌は聞きなれたものに近いが、オーケストレーションがかなり異なっていた。これについては、なかなかおもしろかった。

 ブルックナーの「テ・デウム」もモーツァルトに輪をかけてスローテンポで、メリハリがない。ピアノとフォルテの差もあまりない。これでは音楽にブルックナー特有のダイナミズムが生まれない。それはオーケストラにも合唱にも言える。いくら音が美しくても、メリハリがないと、音楽が生きてこない。私は感動できなかった。

 歌手陣はなかなかよかった。「レクイエム」は、澤畑恵美、加納悦子、福井敬、牧野正人。「テ・デウム」はなぜか全員が入れ替わって、高橋薫子、坂本朱、中鉢聡、河野克典。いずれも日本を代表する歌手たちで、見事な歌唱だった。

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