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プレヴィン+N響の「ドイツ・レクイエム」、そしてネゼ・セガンのCDのこと

1016日、NHKホールでアンドレ・プレヴィン指揮、NHK交響楽団によるブラームスの ドイツ・レクイエムを聴いた。ソプラノは中嶋彰子、バリトンはデーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン。合唱は二期会合唱団。こけおどしのない精緻で奥深い演奏。

  第1曲は、ほぼ導入としての位置づけなのだろう。ヴェルディのレクイエムと同じように、第1曲で準備が行われ、第2曲から徐々に劇的な展開になっていく。そして、少しずつ少しずつ盛り上がって、第6曲の最後にクライマックスが来て、また静かになって全曲が終わる。そうしながら、音楽の中に、人間の生きる悲しみと祈りの気持ちが広まり深まって行く。

  私は、プレヴィンが楽壇に登場した時、ハリウッドで仕事をしていたというので、きっと派手で浅い音楽家だと思いこんでしまって、長い間、素直に聴こうとしなかった。今となっては不明を恥じるしかない。初めて真価を知ったのは、モーツァルトの室内楽のピアノ演奏だった。その後、CDで指揮もピアノ以上に素晴らしいと知ってファンになった。絶妙のリズム感と高貴な音作りに魅かれる。

  前回、N響とのモーツァルトを聴いた時も足下がふらついている様子で、年齢を感じさせたが、今回は車を押して登場。指揮ぶりも元気がなさそうに見える。が、そこは天才プレヴィン。エネルギッシュな指揮では出ない深みを出している。個人的にはもっとエネルギッシュなほうが好みだが、これはこれで素晴らしい。何度も心が震えた。

  合唱がとりわけ素晴らしかった。独唱陣も見事だった。全てが最高レベル。満足。

  ところで、このところヤニック・ネゼ=セガンのCDを夢中で聴いている。ザルツブルク音楽祭で「ドン・ジョヴァンニ」を聴いて以来、その迫力が忘れられない。CDを聴いても、実にいい。

146  ロッテルダム・フィルを振ったシュトラウスの交響詩「英雄の生涯」と4つの最後の歌(ソプラノはドロテア・レシュマン)も最高に素晴らしい。「英雄の生涯」は、最初は抑え気味。「英雄の伴侶」の部分では、人間の心の孤独、悩み、それを慰める伴侶の愛が細やかに描かれる。そして、「英雄の闘い」は、まさしく全力での闘いが繰り広げられる。私は「英雄の生涯」という曲を、シュトラウスがドン・キホーテのように、自分を過去の音楽の英雄(ベートーヴェンやワーグナー)に見立てて作曲した曲と考えている(詳しくは拙著「笑えるクラシック」参照)。つまりは、大真面目なパロディ。このネゼ=セガンの演奏は、まさしく大真面目に戦いを演じている。それがいい。

 4つの最後の歌も劣らず素晴らしい。この指揮者が振ると、芯の詰まった音になる。そして、暗くてドラマティックな要素が増す。いまどきの颯爽として爽快な指揮者とは一味違う。ネゼ=セガンの演奏には暗い情念のようなものが宿る。

037  同じロッテルダム・フィルによる、ルノー・キャプソンをソリストとしたベートーヴェンとコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲も実に味が濃い。キャプソンの繊細な音を、うまくサポートしている。とはいえ、これは、キャプソンな味が表に出ているので、ネゼ・セガンを聴くには、ちょっと不適当かもしれない。

509 もう一枚、メトロポリタン管弦楽団を振ったフロラン・シュミットの「サロメの悲劇」とフランクの交響曲ニ短調も超名演。とりわけ、フランクが圧倒的。ドラマティックで暗い情念が叩きつけられる。が、情緒におぼれるのではなく、構成も実にしっかりしている。私はこの曲は、ミュンシュ+ボストンやカンテッリ+NBCを好んできたが、それに勝るとも劣らない。が、これほど暗く陰鬱さにあふれながらも、最後には感動的なカタルシスを得られる演奏は初めて。いやはや凄い指揮者だ。

そのほか、ブルックナーの交響曲第8番も聴いてみたが、これについては、ブルックナーのほかの交響曲を聴いてから感想を記すことにする。

明日、朝から大分市に飛んで、仕事をする。そして、明後日は新宿で講演。しかも、多摩大学の私のゼミの主催するコンサート(10月21日、パルテノン多摩小ホール19時!!)も近づいている。猛烈に忙しい。仕事がたまっている。

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コメント

樋口さん、こんばんは。

プレヴィン、聴いたのですね。
彼のモーツァルトとブラームスはいいですよ!

個人的には、90年代にウィーン・フィルと組んでいた頃が、最盛期だったのかなぁ…と思います。DDGに入れた「ばらの騎士」組曲や「インテルメッツォ」(抜粋)なんて、録音・演奏ともに最高水準です。

最近は枯れ切っていますが、もともと音楽性抜群の人なので、破綻の心配はなく、なんとも味のある音楽をやりますね。

私はBプロでモーツァルト&R.シュトラウスを聴きます。

投稿: ねこまる | 2011年10月16日 (日) 22時42分

ねこまる様
コメント、ありがとうございます。
最盛期に、実は聴いていないのです!! CDを聴くと素晴らしいですね。
ロイヤルフィルを振ったベートーヴェンの第九も、とても素晴らしい演奏だと思います。私は残念ながら、Bプロは時間が合わずに、聴くことができません。シュトラウスも、きっといいでしょうね。

投稿: 樋口裕一 | 2011年10月18日 (火) 23時20分

ネゼ=セガンに注目とは、さすが樋口先生ですね。
彼は、まだ若いのに、音楽の捉え方は、なかなかのものです。
来週、29日、WOWOWで、METの2010年12月の「ドン・カルロ」が放映されますが、指揮は彼です。

投稿: 白ネコ | 2011年10月22日 (土) 20時58分

白ネコ様
コメント、ありがとうございます。
WOWOWは残念ながらまだ契約していません。ライブビューイングが放映されるということで心は動いていますが、これ以上、ソフトが増えても、見る時間がとれませんので、迷っているところです。購入したままになっているDVDやCDもかなりありますので・・・
でも、ネゼ=セガン、本当に素晴らしいですね。若いのに珍しくしっかりした骨太の音楽を聞かせてくれる指揮者だと思います。

投稿: 樋口裕一 | 2011年10月23日 (日) 08時57分

ネゼ=セガンはいいですね。ブルックナーを聴くとこの指揮者の息の長い自然な歌わせ方がとても印象に残ります。年齢は違いますが、来年来日予定のトーマス・ヘンゲルブロックと並んで自分が今一番実演で聴きたい指揮者のひとりですが、来日の予定がしばらく無いのが残念です。北海道へ行くにも高所恐怖症のため飛行機に乗れず、しかたなく電車を利用している自分には、海外への演奏会巡りは夢のまた夢ですので。

投稿: かきのたね | 2011年10月26日 (水) 09時59分

かきのたね様
コメント、ありがとうございます。
その後も、ネゼ=セガンのCDを何枚か購入していますが、きちんと聴く時間がとれずにいるところです。iPadで聴く限り、いずれもかなりの名演のようです。早く来日してほしいですね。
ヘンゲルブロックも、バッハとカンタータとメンデルスゾーンのヴァイオリン・コンチェルトを聴き、私も耳をひかれました。

投稿: 樋口裕一 | 2011年10月27日 (木) 07時24分

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