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三鷹市芸術文化センターでの悪魔のトリル、今日もまた凄まじい演奏

 まだ昨晩の兵庫県立芸術文化センターでのネマニャ・ラドゥロヴィチの凄まじい無伴奏リサイタルの興奮が冷めない中、三鷹に移動して、11月23日、ネマニャを中心とした「悪魔のトリル」の演奏を聴いた。弦楽五重奏のメンバーをバックにして、ネマニャがソロヴァイオリンを弾くスタイル。今年の3月と同じ趣向だが、コントラバスのメンバーが変更になり、曲目はまったく異なる。

 演奏は、ネマニャ・ラドゥロヴィチのほか、ヴァイオリンのギヨーム・フォンタナローザとフレデリック・ドゥシュ、ヴィオラのベルトラン・コス、チェロのアンヌ・ビラニェ、そして、コントラバスのナタナエル・マルヌリーが加わっている。

 曲目は、前半、サラサーテの「バスク奇想曲」、モーツァルトのアダージョとロンド ハ短調 、バッハのシャコンヌの弦楽伴奏版。後半に、セドラルの新作「日本の春・2011」、ショーソンの「詩曲」、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。アンコールにヴィヴァルディの「四季」と「シンドラーのリスト」の音楽。

 一言で言って、今日も凄まじかった。ネマニャは3月の演奏よりももっとずっと気合を入れて激しく演奏。弓の糸(正確にはどう表現するのかわからないので、糸と呼ぶことにする)がどれほど切れるかが、気合の入れ方のバロメーターだとすると、3月よりも、ずっと糸の切れ具合が激しい。常に弓から糸が数本垂れ下がった状態で弾き、休止ごとにあわてて糸を切っている雰囲気。絡まりはしないかと、見ているほうはかなり気になるが、本人は慣れているせいか、いたって平然と激しく弾きまくる。

本来無伴奏ヴァイオリンのために作曲された「シャコンヌ」の弦楽伴奏版もおもしろかった。ヴァイオリン・パートは原曲通り。それに弦楽五重奏の伴奏が付いている。実にうまく伴奏が付いているのに驚く。違和感はまったくない。ぞくぞくするほど感動的な部分がいくつもあった。

 私はとりわけ、「詩曲」と「ツィゴイネルワイゼン」が気にいった。「詩曲」の耽美的な美音が何とも言えない。細身で音程がびしっと決まっているので、甘美でありながら、実に清潔。ポエムというよりも、ある種の瞑想(メディタシオン)の世界に入るかのよう。「ツィゴイネルワイゼン」は、起伏にあふれ、まさしくジプシー的演奏。身振りが大きくダイナミックで激情的。しかし、音が研ぎ澄まされているので、下品にならず、まさしく聴いている者の魂を揺り動かす。

 私はサラサーテが好きだったことはない。「ツィゴイネルワイゼン」も、若いころは何度か聴いたが、特に感動したことはなかった。が、今回のような演奏を間近で聴くと、度肝を抜かれる。この曲はこんなに深い曲だったのかと初めて思った。「詩曲」についても、これほど魂を揺り動かす音楽だとは、今日まで思わなかった。

「春の日本」については、CDで聴いた時、これが「上を向いて歩こう」をパラフレーズしたものだとは不覚にも気づかなかった。日本的なメロディだとは思ったが、子どものころからはやり歌の類は一切聴かなかった私は、このタイプの曲には疎い。が、言われてみれば、確かに「上を向いて歩こう」だ。が、やはり、ほかのクラシックに比べると、やはり多少、曲のつくりにザツな部分は感じる。

 それにしても、ネマニャの音楽性に改めて驚く。ずば抜けて美しい音、ずば抜けた技巧、そして、聞いている人を揺り動かす躍動感。これほどそろった人はいない。聴いた人は誰もが驚嘆し、感動する。なぜ、メジャーな存在にならないのか不思議でならない。

 今日も素晴らしかったとはいえ、やはり昨日はネマニャとしても特別だった。私はこれまでネマニャのコンサートを10回以上は聴いているが、昨日、最も深く感動した。やはり、ネマニャのソロが聴きたい。

 帰り、新宿まで出て、ファンクラブのスタッフ数人と、26日のファンクラブのイベントについて打ち合わせをした。スタッフの数人も、私と同じように兵庫、三鷹とネマニャを追いかけている。ヨーロッパまでにネマニャのコンサートに行くメンバーもいる。感動を共にする人たちと話をするのは実に楽しい。

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コメント

樋口先生こんにちは
私は今回は行けませんが、ネマニャといえば
来年11月に東京交響楽団と共演して引き振りをするようなので楽しみですね。11月10日土曜日に東京公演をした翌日に新潟にも行くようです。

投稿: Y.M | 2011年11月24日 (木) 12時03分

私も昨日三鷹に行きました。
あんなに激しいシャコンヌは初めて聴きました。
兵庫はプログラムが違っていたのですね。
ネマニャの無伴奏を聴きたい、と以前から思っていたので聴き
逃して残念です。
ツィゴイネルワイゼンも最初あまり聴きたい気がしなかったの
ですが、ネマニャの演奏は技巧を主張するようでなく、上手く
言えませんがジプシーの悲哀のようなものが表現されているよ
うで、感動しました。
今度は是非東京でバッハの無伴奏とツィガーヌを聴いてみたい
ですが、ファンクラブでリクエスト出来れば本当に嬉しいです
ね。

弓の毛(馬の尻尾なので)は来日公演中もつのか、心配するほ
ど切れてましたが、どこかのタイミングで張り替えをするのか、
尋ねてみたい気がします。

投稿: mitsu | 2011年11月24日 (木) 12時33分

Y.M様
コメント、ありがとうございます。
メンデルスゾーンに弾き振りのニュースは私たちも驚きました。とても楽しみにしています。26日にファンクラブのイベントがありますが、そこではそのことについて、ネマニャ本人に質問してみたいと思っています。私は未定ですが、クラブの何人かは新潟にまで聴きに行くつもりのようです。

投稿: 樋口裕一 | 2011年11月25日 (金) 08時20分

mitsu 様
コメント、ありがとうございます。
三鷹の演奏、本当に素晴らしかったですよね!!
でも、兵庫での無伴奏のシャコンヌ、もっとすごかったと思います。ぜひ、東京で、バッハの無伴奏全曲を演奏をしてほしいですね。ファンクラブが力をつけて、そのようなリサイタルを開きたいものです。

投稿: 樋口裕一 | 2011年11月25日 (金) 08時22分

NHKのBSで聴いて一度にファンになった。
You Tubeでチゴイネルワイゼンを聴いて、今までハイフェッツがNO1との考えが揺らいだ。
東京公演が楽しみ。

私はスタジオ・ミュージシャンです。
スタジオで皆に聞いても意外に知らない、NHKBSのDVDを聴かせても「いいとこもあるね」程度の反応。
世の中には堅物の評論家同様の精神の喜びを下賎…と感じるつまらないミュージシャンも多い様ですね。

投稿: まーたん | 2013年7月28日 (日) 00時42分

まーたん様
コメント、ありがとうございます。
ネマニャの凄まじさがまだ十分に知られていないのが、とても残念です。ぐいぐいと聴衆をひきつける力は、現代最高だと私は思っています。10月の公演が楽しみです。

投稿: 樋口裕一 | 2013年7月30日 (火) 23時35分

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