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ラザレフと日フィルのブラームス4番など

11月19日、大学で仕事をした後、車で大雨の中を横浜みなとみらいホールに出かけ、アレクサンドル・ラザレフ指揮、日本フィルハーモニーの演奏を聴いた。前半は、ピーター・ウィスペルウェイのチェロが加わって、ドヴォルザークのチェロ協奏曲、後半はブラームスの交響曲第4番。

 S席を買ったのに、2階の後ろから二番目という席。デッドな音。しかも、なぜか後ろからシャリシャリ音がかすかに聞こえてくる。客の出す音ではない。金属の近くにいるときに、反響で聞こえるような音。初めは耳のせいかと思ったが、そうではない。後ろの壁が反響するのかもしれない。気になって仕方がなかった。

 そのせいかもしれないが、ドヴォルザークには感動できなかった。それに、ラザレフもウィスペルウェイも、あまり情緒的なタイプではないので、ドヴォルザークの憂いに満ちた感情が浮かび上がってこない。ラザレフの音楽も、おとなし目で、遠慮がち。もちろん、それなりにしっかりとした構成の音楽にはなったが、盛り上がりを欠いたと私は思った。やはりドヴォルザークは、郷愁にあふれた音楽が鳴り響き、憂いや懐かしさを覚え、心の中に葛藤が生まれないと、あまりおもしろくならない。少なくとも、私の好きな演奏ではなかった。

 ウィスペルウェイのアンコールで、バッハの無伴奏チェロ組曲の第6番からサラバンド。だが、あまりにゆっくりと、そしてかなり草書風に演奏。遅すぎて、私には違和感があった。ウィスペルウェイはラ・フォル・ジュルネで何度か聴いたが、どうも出来不出来の差の大きい人だと思う。今回は、私に言わせれば、不出来の回だった。

 休憩時間に席を移った。4席ほど横にずれただけだが、反響音は聞こえなくなった。

 ブラームスの4番はとてもよかった。第1楽章の冒頭からして、オーケストラがうねり、音が重なりあい、微妙に強弱が生まれて、実にいい。かなり細かく音をいじっているが、嫌味ではない。無作為にいじっているように見えて、じつに整理されており、音楽が生きてくる。ブラームス特有の哀愁とか諦観といったものはあまり感じないが、音の重なりとして、実に見事。第3楽章と第4楽章が特によかった。ブラームスはドヴォルザークと異なって、論理的な演奏でも、いや、むしろそうであるからこそ、深く感動する。これはこれで本当に素晴らしい。アンコールは、ハンガリー舞曲第21番。

 土砂降りの中を車で帰ってきた。一部で、道路が川のようになっているところがあった。

 

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コメント

ラザレフはこのブラームスに特別なものがあるらしいです。彼がボリショイ響と来日したときもこの曲を演奏していました。しかしラザレフはフォルムにこだわりますね。そのせいかマーラーなどにけっこう消極的ですし、また簡潔な曲でもあまりにシンプルで食い足りないと評価すると今度は見向きもしないというところがあります。こういたタイプの指揮者だと、本来はRシュトラウスなどを得意としているような気がするのですがなかなかやってくれません。この人の哲学というか好みはなかなか複雑ですが、それが演奏ではシンプルかつ曲のもつ最大限の情報量を引出にかかるひとつの要になっているような気がします。複雑だけどシンプルな面白い指揮者です。

投稿: かきのたね | 2011年11月20日 (日) 00時55分

かきのたね様
コメント、ありがとうございます。
ラザレフはとても不思議な指揮者ですね。以前、フランス音楽の指揮を聴いたとき、その諧謔的で漫画風の演奏に驚きました。今回もまた不思議な魅力に引き付けられたのですが、今回は、以前とは全く異なった雰囲気でした。とても素晴らしいと思いながら、どうも正体がつかめずにいます。
そうですね、シュトラウスをやるとおもしろそうですね。期待したいものです。
これからも聴いてみたい指揮者の一人であることは、間違いありません。

投稿: 樋口裕一 | 2011年11月20日 (日) 22時38分

樋口さん、こんばんは。

ラザレフ、杉並では爆発していました。内声部をあんなに抉る人って珍しいです。

ところで、来年のザルツブルク、ネトレプコの『ボエーム』ですね。プッチーニ・アレルギーが直るかな?と考えております(樋口さんも?)。『椿姫』のときのように、犯罪紛いのダフ屋が出るんでしょうね。しかもオケはガッティ&ウィーン・フィルって、もう理想のコンビ!

他のオペラ公演は、シャイーの『アリアドネ』(初稿)、ラトルの『カルメン』、アーノンクールの『魔笛』、メッツマッハーの『兵士たち』などなど……前二者は指揮者が今ひとつ冴えませんね。『アリアドネ』はぜひともナガノにやってもらいたいし、『カルメン』は若さ溢れるネルソンス(もしくは樋口さんイチオシのネゼ・セガン)に振ってほしい!あくまで個人の嗜好ですが。

投稿: ねこまる | 2011年11月29日 (火) 20時43分

ねこまる様
コメント、ありがとうございます。
ラザレフ、追いかける価値のある指揮者ですね。
ところで、ザルツブルクの情報、ありがとうございます。あまりに魅力的なプログラムですので、来年もまた行きたくなりそうです。2013年にはワーグナー生誕200年のバイロイトに行きたいと思っていますので、来年はおとなしくしていようと思っていたのですが。

投稿: 樋口裕一 | 2011年12月 1日 (木) 22時12分

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