METライブビューイングのグノー「ファウスト」は期待通り
1月16日、東銀座の東劇でMETライブビューイング(つまりは、メトロポリタン劇場で上演されたオペラの映画版)のグノー「ファウスト」を見てきた。さすがというしかない。メトロポリタンのレベルの高さに改めて脱帽。
ファウストのヨナス・カウフマンは、前半こそ声のコントロールが甘く、輝きが以前ほどではないので、「もしかしたら、歌いすぎで声が失われたのでは・・・」と気になったが、後半、最高の声を聞かせてくれた。役柄へのアプローチは実に知的で説得力がある。容姿の素晴らしさは言うまでもない。
メフィストフェレスのルネ・パーペは申し分なし。カウフマン以上の説得力。声といい、悪魔的な歌い回しといい、まさしく最高。マルグリットのマリーナ・ポプラフスカヤも二人に匹敵する歌いぶり。後半、実にすばらしかった。先日、日本で「ドン・カルロ」のエリザベッタを聴いたときにはちょっと弱い気がしたが、今回は大迫力。もしかしたら、映画であるせいか。ヴァランタンのラッセル・ブローンも、シーベルのミシェル・ロジエも実にいい。
そして、何より気にいったのが、指揮のヤネック・ネゼ=セガン。このブログにも何度か書いたが、私は昨年、ザルツブルク音楽祭で「ドン・ジョヴァンニ」を聴いて以来、この指揮者にほれ込んできた。この人の音楽は芯があって丁寧で、しかもディオニュソス的。今回も、バカ騒ぎするのではなく、しっかりと、そして濃厚に悪魔的なものを表現している。後半の迫力のかなりの部分が指揮の功績だと思った。
演出もおもしろかった。メトロポリタンにしては珍しく、舞台を現代に移しての演出。原爆を思わせるシーンが出てくる。「人類は魂を悪魔に売り渡して、戦争をし、原爆を落としたが、まだ救いはある」というメッセージが読み取れる。
実はグノーは好きな作曲家ではない。「ファウスト」は、実演も見たことがあるし、DVDもCDももちろん持っているが、あまり惹かれたことはなかった。が、このレベルの公演に接すると、やはり深く感動する。第4・5幕はただただ圧倒されて見ていた。
ディドナートによるインタビューもおもしろかった。観客を飽きさせない工夫がなされている。さすがハリウッド映画の国。
実はとても忙しい。映画やらコンサートやらに行っている場合ではないほど。2冊の本の校正が重なり、別の原稿が最終段階に来ている。新たな企画も進めなければならない。といいつつ、今晩もコンサートに行く予定。
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