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2011年の「ベートーヴェンは凄い」も、素晴らしかった

2011年12月31日、多摩大学経営情報学部の諸橋学部長をお誘いして、東京文化会館で「ベートーヴェンは凄い 交響曲全曲演奏」を聴いた。指揮は小林研一郎、オーケストラは例年通り、篠崎史紀をコンサートマスターとする岩城宏之メモリアル・オーケストラ。

昨年のあまりに圧倒的だったロリン・マゼールの指揮による演奏や一昨年の小林研一郎のとてつもなくテンションの高い演奏ほどの激しい興奮は覚えなかったが、心の底から感動し、ベートーヴェンの素晴らしさを堪能した。

コバケンさんの演奏は2年前の全交響曲演奏以来。2年前は第1番から凄まじいテンションに驚嘆したのだったが、今回は、ほかの指揮者に比べれば圧倒的にテンションが高いとは言えるが、驚嘆するほどではない。ただし、テンションの高い分、ザツなところがないでもなかった前回に比べると、今回はずっと細かいところまで配慮が行き届いている。オーケストラの質の高さを改めて感じた。素晴らしいオーケストラだ! 管楽器の充実を特に感じた。そのため、高いテンションを保ちながらも実にしっかりした音楽になっていた。ただ、コバケンさんであるからには、あの凄まじいテンションを聴きたかったという気持ちは抑えきれない。

第4番、5番、9番がとりわけ素晴らしかった。7番は、フィナーレは凄まじいものの、第1・2楽章に私はもっと透明感と立体感がほしいと思った。ないものねだりではあるとはいえ、少し平板な気がした。第8番も、「一気呵成」という感じの演奏だが、第7番から続けて聴くと、同じアプローチであることを感じてしまう。7番との曲の性格の違いや各楽章の異なった雰囲気をもう少し描き出してほしいと思った。

第九に関しては、文句なし。細かいところを言えば、オケのメンバーの疲れが散見されたが、それに勝る迫力があった。第1楽章は壮大。第2楽章はドラマティック。第3楽章はまさしく天国的に美しく、第4楽章は祝祭。それが最高度に達成されていた。コバケンさんならではの白熱の第九。とりわけ、フィナーレが凄まじい。こんな燃えさかるフィナーレを演奏してくれるのは、世界にコバケンさんしかいないのではないか。

独唱陣も素晴らしい。バリトンの青戸知さんがまるでオペラのような雰囲気で歌い始めたので、あっと驚いたが、テノールの錦織健、ソプラノの岩下晶子、アルトの竹本節子が、それに違和感なく受け継いで、新しい雰囲気の「歓喜の歌」を作り出していた。合唱も良かった。

万雷の拍手。感動の渦。震災のあった年の最後を締めくくるにふさわしい演奏会、そして、それにぴったりの白熱の第九だと思った。

このコンサートを主催し続けておられる三枝成彰さんに感謝する。コンサートの間に挟まれる三枝さん、ティンパニ奏者の植松透さん(この方の目覚ましいティンパニはN響のコンサートでいつも感動して聴いている!)、音楽評論家、池田卓夫さんと林田直樹の話も実におもしろかった。

 ベートーヴェンの交響曲の中で何が好きかということが、池田さんと林田さんの話の中で話題に上がっていたが、私が好きな順に書くと、9→5→4→8→7→3→2→6→1番ということになるだろうか。

4番は第一楽章の序奏からだんだん形を取っていくところに何とも言えない感動を覚えて、中学生のころから現在に至るまで大好きな曲だ。8番は実にチャーミング。7番はどの楽章も同じような雰囲気で目が回るので、大好きというわけではない。3番は若きベートーヴェンに肩の力が入りすぎて、あちこちで破綻している気がする。6番は統一感の欠如がどうしても気になる。そんな理由でこのような順序だが、何といってもベートーヴェンなので、「好きでない」といっても、ほかのベートーヴェンの曲に比べてであって、ほかの作曲家の曲に比べると、もちろん大好きな部類に属する。

 ところで、コンサート以外で印象に残ったこと。

 昼食に上野のアトレのなかのタイ料理の店に一人で入った。以前食べてとてもおいしかった記憶があったからだ(私は実はかなりエスニック料理好きだ!)。ランチの一つを選んだが、3つの皿にちょっとずつ口をつけただけで、あまりの酸っぱさのために食べられなくなり、そのまま外に出た。

店がよくないわけではない。私は酸っぱいものが大の苦手! ときどき、お寿司でも酸っぱすぎて困ることがあるほどだ。タイ料理は店によっては酸っぱいことがあるので、確認して注文するべきだった。30年ほど前、バンコク旅行中、あまりの辛さとあまりの酸っぱさとあまりの臭いに、ほとんど手をつけずに残したことがあったのを思い出した! 食いしん坊の私が、ほとんど食べずに残したのは、それ以来のことだ。

 仕方がないので、立ち食いのすし屋に入って昼食を食べ直した。これはかなりおいしかった。立ち食いとはいえ、バカにはできない。夜は、交響曲第6番と7番の間の大休憩の時間に、コンサートをご一緒した諸橋先生と同じアトレの中のフランス料理の店(L’ecrin)で夕食を取った。これもなかなかおいしかった。

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コメント

ベートーヴェン全曲演奏をお聴きになられたとのこと、かつて今は亡き岩城氏が命がけで演奏されたことを思い出しました。
今回は行けなかったけれど、岩城氏の遺志を継いだコバケン氏の演奏は意味があったと思われます。
全曲をいっきに聴くのは体力的にはなかなかしんどいですが、それをあえて実行すると、9曲全体を通して、いわばワーグナーの「リング」のように、ベートーヴェンの意図するものが見えてくるのではないでしょうか。

それゆえ、お忙しい中、聴きに行かれたのは価値がありますね。

投稿: 白ネコ | 2012年1月 8日 (日) 00時21分

新年あけましておめでとうございます。
実に素晴らしい演奏でしたが、拝読するに、前々回の演奏はもっとテンションが高かったのですか?どんな演奏だったんだろう、と気にはなります。

年末年始、何かと立て込んで(妻の実家で箱根駅伝のテレビ観戦とか・・・・・早稲田、残念でしたね)、記事を書きそびれているうちに仕事始め。ようやく自分のブログで感想を書き上げました。よろしければ、ご覧下さい。

今年も良い演奏会に巡り会えます様に。

投稿: ムーミンパパ | 2012年1月 8日 (日) 23時49分

ムーミンパパ様
あけましておめでとうございます。
コメント拝見しました。また、ブログも拝見しました。
昨年の大晦日の小林さんの演奏を聴かれたら、きっとそのテンションに驚くと思うのですが、私の記憶では、やはり3年前はもっともっと高揚していました。その年はマエストロの心の中で何事かとてつもないことが起こったのではないかとあやしむほどの凄まじさでした。私が聴いた中では、「テンション」に関してだけいえば、その前の年(4年前)が、今年レベルだったように思います。
が、いずれにしても、素晴らしい演奏だと思いました。
「溜め」の件、おっしゃる通りだと思います。
このような演奏を年の最後に聞くと、とても充実した一年になりますね。

投稿: 樋口裕一 | 2012年1月11日 (水) 09時14分

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