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長尾洋史のピアノリサイタル 圧倒的な長尾さんの世界!

 1月10日、JR東日本の研修の講師として講演をした後、今年最初のコンサートとして、ルーテル市ヶ谷ホールで長尾洋史のピアノリサイタルを聴いた。

曲目は前半にリストの「バッハのカンタータ〈泣き、嘆き、憂い、おののき〉の主題による変奏曲]」と「孤独のなかの神の祝福」。後半はバッハのゴルトベルク変奏曲(反復なしヴァージョン)。とてつもない長尾さんの世界を堪能できた。

 リストの2曲は、先ごろ発売され、「レコード芸術」で特選に選ばれ、レコードアカデミー賞にもノミネートされたCDに含まれる曲。CDがあまりにすばらしいので期待して聴いたが、ナマが聴けて実に幸せだった。

 この音を何と表現するべきだろう。透明で揺るぎなく怜悧に輝いている。が、そこにみずみずしくてロマンティックな精神が宿っている。いかにもリストらしく、技巧的にばりばりと弾きまくる。まったくリズムが揺れず、センチメンタルに感情を込めるわけでもない。だが、そうであるだけに、奥底にロマンティックな精神が垣間見える。私がピアノに疎いせいもあるかもしれないが、ほかにこのようなピアノを私は聴いたことがない。

 ゴルトベルク変奏曲も同じように長尾の独特の世界というべきか。抑制した音で、様々な変奏を弾きわけるが、そこにはずっと透明で豊かな世界が広がっている。虚飾は一切なく、余計なものはすべて取り去られている。が、そうであるからこそ、本質的なものが残っている。まさしくバッハの世界!

 ただ、私としては、できれば全部反復して、もっとじっくりと弾いてほしかった。せっかくの世界があっけなく通り過ぎていった感がある。

 

 アンコールはドビュッシーだとのこと。が、恥ずかしながら、ピアノに疎い私は、何という曲なのか知らない。が、これもまた技巧をこらした中に、透明に輝く世界がある。

本当にすごいピアニストだと思う。繰り返すが、私はピアノに疎いので、これ以上、うまく表現する力を持たない。もし私が20代のころに長尾さんのピアノを聴いていたら、今頃、大のピアノマニアになっていただろう。長尾さんのピアノに出会うのが遅すぎたために、私はオーケストラやオペラや弦楽四重奏や弦楽器の無伴奏曲ばかりを好んで聴く人間になってしまった。つい最近まで、この私がピアノにしびれるなどとは思ってもみなかった。

ともあれ、大満足!

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