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エベーヌSQ、エリシュカ、そしてネゼ=セガン おっ!と驚いたCD、DVDのことなど

 忙しい! 年末から現在まで、まったく余裕なく過ごしている。学務のほか、立て続けに3冊分の本の校正をし、新たに原稿を書き、大学や企業の研修で書いてもらった大量の文章を添削し、新企画の本の準備をし、講演を行い、その合間にコンサートやオペラに行っている。そのため、年賀状も書かず、いただいた年賀状の返事もほとんど書く時間がなく、そのまま2月に突入してしまった。

しかも、12月からずっと作ってきた教材を全面的に書き改めなければならなくなったので、これから先もしばらく余裕のない状態が続く。暗い気持ちになっている。

昨年の今の時期はナントのラ・フォル・ジュルネに行って、音楽を楽しんでいたが、今年は仕事が忙しく、しかも今年の特集であるロシア音楽は大の得意というわけではないので、ナントには出かけないことにした。

代わりに、夏にバイロイトとザルツブルクに行こうかと計画中。実は、バイロイトには、ワーグナー生誕200年である来年に行きたいと思っていた。来年、何とネトレプコがエルザを歌うと言うではないか! だが、来年はどうもチケットの入手が難しそう。そんな折、今年、バイロイトに行き、ついでにザルツブルクにも行かないかと音楽友だちに誘われて、その気になった。

そんな中、なんとか暇を見つけてCDやDVDを聴いている。特に耳をひかれたいくつかの演奏について書くことにする。

375 ・エベーヌ弦楽四重奏団 モーツァルト弦楽四重奏曲K421、K465「不協和音」など。

 先日、武蔵野市民文化会館であまりにすばらしい演奏を聴いたので、CDを入手してみた。K421の最初の2、3小節であまりの美しくも研ぎ澄まされた音に驚く。余計な思い入れなどまったくないが、そうであるだけにモーツァルトの書いた音楽のそのままの力が迫ってくる。「不協和音」も、もやもやしたところのまったくない、あまりに明晰な音で始まるが、その後の展開の美しさは言葉をなくすほど。素晴らしい名演奏だ。

 同時にドビュッシー、フォーレ、ラヴェルの弦楽四重奏を集めたCDと、ブラームスの1番の弦楽四重奏と山本亜希子のピアノを加えてのピアノ五重奏曲のCDも購入した。こちらもとてもいいが、フランスものはちょっと緻密すぎて、もう少し「遊び」がほしいと思った。

060 ・ラドミル・エリシュカ指揮 札幌交響楽団 ドヴォルザーク 交響曲第6番など。

 先日、このエリシュカとNHK交響楽団の演奏で同じ曲を聴いたばかり。素晴らしい演奏だったので、札幌交響楽団とのドヴォルザークの交響曲の録音を3枚購入した。確か、この3枚、発売を知ったと同時にどこかにネットで注文した記憶があるのだが、商品は届かず、そのまま忘れていた。どうなっていたんだろう?

 解説を書いている音楽ジャーナリストの岩野裕一さんと日本ヤナーチェク友の会の代表の山根英之さんがエリシュカの音楽に惹かれ、力を尽くして販売にこぎつけたCDがこれだ。このCDによって、それまで隠れた存在だったエリシュカの名前が日本中に広まった。

 N響との演奏を聴いた後で山根さんは「札響との演奏がチェコ風だとすると、N響との演奏はドイツ風」と話していた。その時はピンとこなかったが、このCDを聴くと、まさにその通りだと思う。こちらのほうが、エリシュカの作りたい音楽そのものなのだろう。

 何と懐かしい音の響きだろう。N響を聴いてもそう思ったが、札響との演奏はそんなものではない。まさに田舎の風景が目に浮かんでくる。ひなびて、しなやかでくすんで柔らかい。N響との演奏も素晴らしかったが、こちらはもっと素晴らしい。

 ドヴォルザークの5番と7番のCDも同じくらい素晴らしかった。本当にいい指揮者だ。

798 ・グノー「ロメオとジュリエット」DVD 2008年ザルツブルク音楽祭 ネゼ=セガン指揮。

 先日、メトロポリタン・オペラのライブビューイングで同じネゼ=セガンの「ファウスト」を見たばかりだったが、「ロメオとジュリエット」のザルツブルクのDVDも凄い。

 ロメオはロランド・ヴィラゾン。ジュリエットはニーノ・マチャイゼ。ともに文句なし。実に美しく輝きのある声。ローラン役のミハイル・ペトレンコ、キャプレット卿役のファルク・シュトリュックマン(何度見ても、私はこの人の顔の識別ができない! 声を聞いて、あれ、もしかして?と思って配役表を見てやっと確信が持てる)も実にいい。

 が、やはりそれ以上に圧倒的なのが、ネゼ=セガンの指揮。張りがあり、ドラマティック。しかも、意味もなく力んだり、いたずらにドラマを盛り上げようとするのでなく、実に正統な音楽に即している。中身の詰まった音がする。そして、私はディオニュソス的なものを強く感じる。これまで私はグノーという作曲家に惹かれることはほとんどなかったが、ネゼ=セガンの指揮を聞くと、これは凄い作曲家なのだと認識する。

 ともかく、ネゼ=セガンの指揮ぶりに酔った。

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コメント

エリシュカのCDをご紹介下さりありがとうございます。ただし、岩野氏と山根はライナーノートを書いておりますが、このCDを製作には携わっておりません。CDの製作者は、エリシュカ氏の日本の招聘窓口であるオフィス・ブロウチェクです。

投稿: Pilsner | 2012年2月 2日 (木) 19時43分

「このCDを製作」⇒「このCDの製作」です。
文章の先生の赤ペンが入りますね。

投稿: Pilsner | 2012年2月 2日 (木) 19時45分

Pilsner 様
大変失礼しました!!
お詫びして、訂正させていただきます。
ちょっと誤解してしまいました。が、お二人(そして、池田卓夫さんもですね!)の力がCD作成の実現を大きく推進したのは間違いありませんよね!
改めて、感謝の気持ちを覚えます。

投稿: 樋口裕一 | 2012年2月 3日 (金) 08時30分

エリシュカとN響の定期は、「幻の名指揮者」と札幌響を指揮したCDのオビに銘打たれていたし、珍しい曲(恥ずかしながら、ヤナーチェクのシンフォニエッタもよく知りませんでした。話題の小説で重要な役割を果たしたという時も、さほど関心を持ちませんでしたが、今回は生で聴いたからかいい曲だと感じました)が中心なので行きました。N響は元々ドイツものがレパートリーの中心でしたから、オーストリアの支配下にあった歴史を持つチェコの音楽もよく合っている様に思い、エリシュカの素朴な音楽造りも良かったですね。
そこでコンサートの翌日、余韻を楽しもうと東京文化会館の資料室で札響との『我が祖国』CDを聴きました。N響に比べると劣るのではないかと懸念しながら聴き始めました。しかし予想外でした。エリシュカの音楽的な意図はN響以上に浸透していますね。一層素朴な上に、この曲が内包する愛国心(イデオロギー的なものではない、自然発生的な)や人類愛が感じられ、オケの技術も、CDで繰り返し聴くに堪える程の高いものでした。このコンビの東京公演が実現すればいいですが、北海道旅行を兼ねて聴きに行ってみたい気もしますね。

投稿: 崎田幸一 | 2012年2月 4日 (土) 10時58分

樋口様、崎田様

4月の札響の定期登場は次のとおり、オール・ドヴォジャーク・プログラムです。「新世界」は無論のこと、特に哀愁を帯びた佳曲「野鳩」が注目されます。是非、聴きにいらして下さい。

札幌交響楽団~第548回定期演奏会
2012年4月27日(金)、28日(土)
札幌コンサートホールKitara
指揮:ラドミル・エリシュカ

ドヴォジャーク:スケルツォ・カプリース
ドヴォジャーク:交響詩「野鳩」
ドヴォジャーク:交響曲第9番ホ短調作品95「新世界から」

投稿: | 2012年2月 5日 (日) 08時45分

「ロメオとジュリエット」私も映像を観ました。マチャイゼ素晴らしかったですね。ヴィラゾンは歌はうまいが、私はどうもあの容貌はちょっと...単に好みだけの問題ですが。なによりネゼ=セガン!!やはり進化しています。

ネトレプコ、2012年バイロイト登場ですか。先日、METの「アンナ・ボレーナ」と「清教徒」を観て、その圧倒的な声量と美しい容姿に、現代最高のディーヴァといわれる訳を納得しました。実際の声は、いかばかりかと思われます。
バイロイトはいよいよティーレマンの「オランダ人」新演出で登場です。歌手もピエチョンカなど実力派揃いがラインナップですね。

投稿: 白ネコ | 2012年2月 5日 (日) 13時03分

崎田幸一様
コメント、ありがとうございます。
本当におっしゃる通りだと思います。札響都の演奏のほうがずっとエリシュカの音楽が浸透しているように思います。この組み合わせの演奏、ぜひ生で聴きたいものです。ただ、札幌に行くのはなかなか難しいですね…

投稿: 樋口裕一 | 2012年2月 6日 (月) 09時25分

Pilsner 様
ご案内、ありがとうございます。行きたいのは山々ですが、連休中にラ・フォル・ジュルネが行われるため、連休前は様々な仕事が立て込んで、動きが取れない状態です。その1週間前には札幌に行く予定があるだけに、とても残念ですが。
次の機会があるとよいのですが。

投稿: 樋口裕一 | 2012年2月 6日 (月) 09時28分

白ネコ様
コメント、ありがとうございます。
ヴィラゾンの容姿、確かにちょっと異様ささえ感じますね。が、彼の映像はいくつも見てきましたので、だいぶ慣れてきました。
ネゼ=セガン、本当に感動させてくれる指揮者だと思います。
ティーレマンの「オランダ人」、10数年前の日本公演がよくなかっただけに、楽しみです。

投稿: 樋口裕一 | 2012年2月 6日 (月) 09時33分

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