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スクロヴァチェフスキ+読響のベートーヴェン

 3月13日、サントリーホールで、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮、読売日本交響楽団のコンサートを聴いた。曲目は、ベートーヴェンのレオノーレ3番と交響曲4・5番。素晴らしい演奏だった。

 前にも書いたとおり、私はスクロヴァチェフスキが好きではなかった。むしろ苦手な指揮者だった。とてもよいと思うこともあるのだが、どうしても「外面的」という気がして、好きになれない。いじくりまわして音楽が崩れていると感じることもある。逆に、あっさりしすぎて、まったく面白くないと思うこともある。私とは相性が良くないのでもう聴くのはやめようと思いつつ、どうも気になって、もう一度聴いてみたいと思ってしまう。そんなわけでまたも足を運んだのだった。

 今回は、自然に音楽が流れ、鳴らすべきところはしっかりと鳴らし、クリアに音が重なり、リズム感もよく、緊迫感にあふれ、本当に素晴らしい演奏だった。私の聴いたスクロヴァチェフスキの演奏の中で一番感銘を受けたと言えるかもしれない。

 まさしくオーソドックス。変な小細工はしていないと思う。ひたすらに引き締まった音楽。それが実にいい。こういう演奏だったら、むしろ私の好きなタイプの指揮者ではないかと思いなおした。

オケも実に見事。木管が特に美しい。ティンパニも素晴らしいと思った。大いに感動して聴いた。第4番の第1楽章と終楽章、第5番の終楽章のきわめて論理的な音に重なりに圧倒された。

 ただ、実はショックなことがあった。なんと、隣の席の人に、「身動きしないでくれ」と注意されたのだ! 私は、時々腹が鳴ることがあるものの、声を立てることもなく、音を立てることもないので、模範的な客だと自分で思っていたのだったが!

 曲の間に聞いてみると、どうやら私は音楽に合わせて首を振っていたらしい。もちろん、まったく意識していなかった。すぐに謝って、できるだけ体を動かさないように気を付けた。

 これまで、一度もそのようなことを言われたことがなかった。遠慮のない関係の人とも席を隣にしてコンサートを聴いたことも何十回とあるが、それでも、そんな注意をされたことがない。

 が、ベートーヴェンを聴きながら、気付いた。確かに、私はベートーヴェンを聴くとき、首を振ってリズムをとろうとしているようだ!! とりわけ、演奏に感動すると、身体が動いてしまう。おそらく、ほかの作曲家の場合はそんなことはないと思う。大好きなワーグナーもブラームスも、むしろじっくり耳を傾ける。が、どうもベートーヴェン、とりわけ4番、5番、7番に関しては、小学生のころレコードを聴いていたころから、音楽に乗ってくると体でリズムをとって聴く癖がついているような気がする。確かに周囲の人は迷惑に感じるだろう。

 注意してもらってよかった。もしかしたら、これまで何人もに迷惑をかけてきたかもしれない。猛省!! これから、こんなことがないように気をつけよう。

 それにしても、自分の欠点には本当に気付かないものだ。恐ろしいことだと思う。

 音楽の素晴らしさに酔いつつも、大いに反省して帰途に就いた。

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コメント

素晴らしい演奏だった様で、何よりです。私も行きたかったな〜〜〜。年度末は忙しくて・・・・・

私もどちらかと言うと、曲に没入すると無意識のうちに体を動かす方で、時々妻に注意されます。
ただ、周りの人にぶつかるほど大きな身振りならともかく、首が動くくらいなら構わないのではないでしょうか。
隣の人はおそらく、音楽は身じろぎせず畏まって聴くものだと思っている人かも知れませんね。

聴く人もいろいろですから、ケンカなどしないにこしたことはありませんが、何だかつまらない人生の様に思えます。

感動を押さえて聴く方が苦痛かも・・・・・

投稿: ムーミンパパ | 2012年3月14日 (水) 00時27分

屁理屈はいいから、反省しとけ。
アタマ振るやつほんとめいわく。

投稿: | 2012年3月14日 (水) 01時17分

ムーミン・パパ様
お久しぶりにコメント、ありがとうございます。
そう言ってくださるととても気が休まります。
が、以前、異様に首を振る人が前にいて、とても気になったことがあります。もし、私もその人のように首を振っていたのだとすると、これは大いに反省するべきだと思っています。ともあれ、自分に気づかないことは恐ろしいことだと認識した次第です。

投稿: 樋口裕一 | 2012年3月14日 (水) 08時59分

匿名の方へ
はい。私も同じように、頭を振る人間はとても迷惑だと思っていますので、屁理屈は言わないで、大いに反省しています。

投稿: 樋口裕一 | 2012年3月14日 (水) 09時01分

そんな声かけをした人は、むしろ無粋だと思います。ライブ会場では、いろいろなものの考え方をする人がいます。それに対する耐性がないのなら、家に籠っているべきです。先日、私の行ったコンサートでも、後ろのほうで口論している客がいましたが、よりにもよって3月11日のコンサートで、よくもそんな気になるものだと憤慨した記憶があります。

しかし、私は無視しました。そして、なるべく演奏を聴くことに集中するようにしました。

そんなことで反省する必要があるのでしょうか? 無意識にやっておられるのだから、それが身体にとって自然なことなんだと思います。クラシック音楽の多くは、ご存じのように、舞曲と深い関係があります。もう踊るための音楽ではないとしても、まったく動かないことは、むしろ不自然なのかもしれません。

それを集中力で抑えるのが、理知的なことです。しかし、ずっと理知的な態度に囚われているほど、つまらぬこともないのではありませんか!?

投稿: アリス | 2012年3月14日 (水) 23時14分

アリス様
コメント、ありがとうございます。そして、私の身動きにご理解を示していただき、とてもありがたく思っています。そして、私の中には、もちろんアリスさんのように思う心もあります。
が、私が心から音楽を楽しもうとしている人の邪魔をしたのは間違いのない事実だと思います。
私にはクラシック音楽によって育ち、絶望のただなかにいるときもクラシック音楽に支えられてきたという思いがあります。そのクラシック音楽を楽しむ人の邪魔をしたということは、私としては、われながら実に情けないことです。腹が鳴ったり、ちょっとだけ動くのは許してほしいと思いますが、きっと私は隣の人の許容レベルを超えて身動きしたのだろうと思います。これでは、私は猛省するしかありません。
近いうち、ベートーヴェンの7番の交響曲を聴くのですが、大いに気をつけたいと思っています。

投稿: 樋口裕一 | 2012年3月15日 (木) 08時36分

樋口さん、お久しぶりです。
私も興に乗ってしまうと体が動いてしまう方で、家でCDを聴いている時は殆どリズムを取りっぱなしなのですが、コンサートホールでは意識して控えるようにしています。最初は堅苦しい感じがありましたが、慣れてしまえばどうと言うことはありません。
以前ヨーロッパで現地のオケをいくつか聴いた時、聴衆の多くは皆楽しそうにリズムを刻んでいたのが印象的でした。こういった聴衆の割合が日本では少ないため、集団主義的に、皆神妙に聴くことがマナーとなっているのでしょう。将来的にヨーロッパのようになって欲しいとは思っていますが、如何せん今の日本では変わりそうもありませんね。

投稿: たくぽん | 2012年3月22日 (木) 08時39分

たくぼん様
コメントありがとうございます。
その通りだと思います。ともあれ、私としては、なるべく身動きしないように気をつけるべきだと思っています。
当時に、ほかの人が身動きすることに対しては、寛容でいたいとは思っています。

投稿: 樋口裕一 | 2012年3月25日 (日) 08時25分

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