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亡き友を偲ぶ

 ひとりの友が世を去った。昨日、共通の知人からのメールで知らされた。電話でも確認したが、間違いないらしい。詳しいことはわからないが、どうも自ら命を絶ったようだ。

不思議な因縁の友だった。

 小学校5年生の時、私は大分県中津市の小学校から、大分市の大分大学付属小学校に編入した。そのとき、同じクラスに彼はいた。

 担任の先生の影響で私はクラシック音楽に夢中になった。同じように夢中になったクラスメートが私のほかに二人いた。そのうちの一人が彼だった。

 小学校だけでなく、同じ中学校、高校に通った。何度も同じクラスになった。彼はクラシック音楽を聴くだけでなく自ら演奏をする方向に向かった。フルートを吹き始めた。育ちの良い邪気のない人間だった。その通りのフルート演奏だった。学校の文化祭などでも、何度か彼のフルートを聴いた。私は彼のフルートが大好きだった。

 高校では疎遠になっていたが、大学時代、偶然、私鉄駅付近で出会った。歩いて10分くらいのところに住んでいることがわかって、再び親しく付き合い始めた。

 学生時代が終わって、また疎遠になった。広告代理店に就職が決まったことは知っていたが、互いに別の生活が始まったので、連絡は取らなかった。

 そして、10年ほど前、今度は偶然、京都のホテルで出会った。互いに仕事で京都を訪れたところだった。再び、交流が始まった。

 その後も不思議なことに何度も偶然の出会いがあった。確か二度ほど、近くの駅で出会った。「この駅で降りることはめったにないのに、たまに降りると、樋口に会う」と彼は話していた。

その後、彼は仙台に引っ越したが、彼の妹と、私のたった一人の仙台の知人の奥さんが親しくしていることが判明した。そこでまた再会した。仙台に何度か行く機会があったが、そのたびに出会った。

 精神的な病に苦しんでいたらしいことは、本人に聞かされた。仕事を辞め、仙台から別の地域に引っ越したことも電話で聞いた。ときどき、電話で話した。メールも来た。私のこのブログも読んでくれていて、時々感想を言ってくれた。

 最後に電話がかかったのは、先日の多摩大学の卒業式の日だった。式典の最中に携帯が鳴った。日曜日だったので、私が暇だと思って電話をくれたのだろう。私は、電話をとることができず、しばらくして、空き時間にこちらからかけた。「久しぶりにクラシックの話でもしたいと思って…」と彼は話していた。が、私は、その後すぐにまた別の用があった。そのことを言うと、彼は遠慮して早々に電話を切った。

 もっと話せばよかった。それが最後になった。

 思うところはたくさんある。そんなに深刻な精神状態だとは知らなかったので、あまり親身になってあげられなかった。私が親身になったからと言って状態が変わったとは思えないが、それでももう少し何かできたのではないか。昨晩は、彼のことが頭から離れずに、ほとんど眠れなかった。

 彼のことをブログに書くことにはためらいがあった。が、このブログを読んでくれていた彼なので、私は敢えてここに書きたいと思った。冥福を祈る。

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コメント

大変痛ましい事です。僕も大学時代の友人が、思い悩んだ末自ら死を選んだという事がありますので、樋口先生のご心痛はお察し出来ます。ご友人が違う世界に逝かれて、クラシック音楽を心行くまで楽しまれる事をお祈り申し上げます。

投稿: 崎田幸一 | 2012年4月13日 (金) 21時38分

ご友人のご冥福を祈ります。私は1951年生まれですが、同世代の方の、この年になってからの自死は、痛ましくてなりません。

投稿: Eno | 2012年4月14日 (土) 18時51分

崎田幸一様

コメントありがとうございます。
とても繊細で優しい、そしてそうであるがゆえに、
社会の荒波についてゆけないタイプの友でした。
今となっては、冥福を祈る以外にはないとおもっています。

投稿: 樋口裕一 | 2012年4月15日 (日) 08時15分

Eno様
コメントありがとうございます。
亡き友も私も同じ1951年生まれです。
彼は、これから新たな人生を築きたいと語っていたのですが、それをなしえないと思いつめたのかもしれません。
なにかとマイナス思考の人間だったことを、今更ながら残念に思います。


投稿: 樋口裕一 | 2012年4月15日 (日) 08時30分

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