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ヘンゲルブロック指揮+NDRの個性的な演奏

 5月29日、サントリーホールでヘンゲルブロック指揮、北ドイツ放送交響楽団をコンサートを聴いた。曲目は、前半に「フィガロの結婚」序曲とメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリンはテツラフ)、後半にブラームスの交響曲第1番。

 一言で言って実に新鮮で生き生きとした演奏。素晴らしかった。が、実は興奮するまでには至らなかった。この指揮者、CDを何枚か聴いて、素晴らしかったので、もっと興奮するかと思っていた。

 斬新な音。ピリオド楽器的な響き。音の重なりが重層的で、盛り上げ方にかなり特徴がある。情緒的にならず、論理で押すというか。構築的というか。音の重なりを積み上げ、観客に感動を与えていく。NDRの管楽器が実に美しい。以前、ヴァントと来日した時、弦の美しさに驚いた記憶があるが、今回は木管楽器の美しさを特に感じた。

 メンデルスゾーンの協奏曲については、どうも私はテツラフとは相性がよくないのを感じた。確かに、テクニックは素晴らしい。透明で知的で音も美しい。が、なんだかこじんまりと弾いている感じがしてしまう。以前聴いた時も同じように思ったが、サントリーホールの私の席(いちおうS席なんだが・・・)まで響いてこない。その結果、素晴らしいなあと思いつつ、揺り動かされない。もう少し狭いホール向きのヴァイオリニストではないかと私は思う。

 ブラームスは聴き慣れたブラームスとはかなり異なる音色。後期ロマン派的なふくよかさがない。ピリオド楽器的な奏法のせいだろう。コントラバスが右と左に分かれて配置されている。おもしろい効果だった。私の好きなタイプのブラームスではないが、これはこれで素晴らしいと思った。第一楽章と第四楽章の後半のドラマティックな盛り上がりの切れの良さは素晴らしかった。

ただ、これも音が直接に響いてこない。もう少し狭いホールで聞いたらもっと感動的だっただろう。

アンコールはドヴォルザークの「チェコ組曲」だそうだが、初めて聴く曲だった。ブラームスの「ハンガリー舞曲」にも似ているし、ドヴォルザークの「スラブ舞曲」にも似ているし、なんだろうと思って聴いていた。とても演奏効果の上がる楽しい曲。

 

このところ訃報が続いている。フィッシャー=ディスカウに続いて、吉田秀和先生が亡くなった。昨年だったか一昨年だったか、週刊文春に「之を楽しむものに如かず」の書評を書かせていただいた。その時、何冊か読みかえしたが、改めて音楽に対する理解の深さに圧倒された。遠くからお見かけしたことは何度もあるが、話を交わしたことがなかったのが残念。

実は、フィッシャー=ディスカウも吉田先生も、若いころは好きではなかった。生意気な若者だった私は、このような大物に反発を感じていた。が、大人になってこれらの人々に触れると、やはりぬきんでているのを感じる。若かりしころの自分については、反省することばかりだ。

 

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音楽」カテゴリの記事

コメント

お久しぶりです。

このところのあいつぐ音楽家の重鎮の訃報。残念です。
フィッシャー=ディースカウ氏、音楽評論の畑中良輔氏、畑中氏はお若い頃、二期会で藤原氏と同時代にバリトンで出演されていたということですね。

そして、吉田秀和氏。私事ですが、某月刊誌で20年以上、吉田番(担当のこと)をしておりました。吉田氏のようなお方はこれからも出現しないでしょう。なによりその筆致は、魅力的な独自の文体でした。音楽のみでなく、絵画、文学、さらに時代の趨勢まで、幅広い興味をお持ちでした。
時代が変わりゆくのを痛感します。ご冥福をお祈りいたします。

ところで、ヘンゲルブロックは今年のバイロイトは降りてしまい、その代り、ティーレマンが<タンホイザー>を7回振ります。樋口先生、今年のバイロイト音楽祭へいらっしゃるなら、ティーレマンの新演出の<オランダ人>か、<タンホイザー>いずれかをご覧になられますか? ご覧になられるなら、また聴後感をお聞かせください。

投稿: 白ネコ | 2012年5月30日 (水) 09時55分

ヘンゲルブロック聴かれましたか。自分の言った前日の古典派プロの方がなんとなくピンとくるかなと思ってそちらに行きました。印象はとてもよかったですが、

>実は興奮するまでには至らなかった。

というのは正直同感でした。これはホールの大きさというものや響きの関係もあるでしょうが、このあたりはもう数年かけて築いていくものという気がします。ただこの人の熱さはひょっとしてブーレーズのような熱さとどこか根本に同質のものがあるのかもしれません。興奮しないが愉しくも熱いベートーヴェン。

吉田さんの訃報は正直驚きでした。かつてラジオで野村光一さんと他の出演者そっちのけでリヒテルは是か非かの大激論をやったというのが懐かしいですが、フィッシャー=ディスカウとともにまた自分の若い時にお馴染みだった方が亡くなることは、なんか自分のみなれているまわりの風景がどんどん変わっていくようで寂しいかぎりです。

投稿: かきのたね | 2012年5月30日 (水) 14時51分

白ネコ様
畑中先生もコンサートでよくお見かけしました。
音楽関係ではありませんが、学生時代、大好きな監督の一人として追いかけていた新藤兼人監督も亡くなられたようです。
お二人とも、かなり高齢でしたが、吉田先生と同じようにいつまでも生きておられるような気がしておりましたので、とても残念です。
そうでしたか。吉田先生の担当をなさっていたのですか。たくさん思い出をお持ちなのでしょうね。
今年の夏、バイロイトに行く予定ですが、ヘンゲルブロックからティーレマンに変更になったとのこと、初めて知りました。もちろん、ティーレマンを聴けるのはうれしいのですが、ヘンゲルブロックのワーグナーも聴いてみたかったですね。
情報がありがとうございます。

投稿: 樋口裕一 | 2012年5月31日 (木) 23時02分

かきのたね様
コメントありがとうございます。
おっしゃること、想像できます。ベートーヴェンの演奏の雰囲気、私の聴いたブラームスとよく似ているように思います。とても雰囲気がよく、とても熱く、そしてわくわくする感じはあるのですが、なぜか興奮しませんでした。それがなぜなのか、自分でもわからずにいるのですが。
あと数回聴いてみたいと思っています。
私がクラシック音楽を聴き始めたころ、まだワルターも存命でした。当時の巨匠たちはもちろん、中堅だった演奏家も次々と亡くなって行きます。寂しい限りです。

投稿: 樋口裕一 | 2012年5月31日 (木) 23時10分

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