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札幌のこと、ミドリ・ザイラーのバッハについて

 64日は、北海道にわたって、立命館慶祥中学・高校で白藍塾に関わる仕事をした。高校生を相手に小さな講演をし、小論文の研修を行った。季節もよく、生徒たちの態度も素晴らしく、先生方との協力体制も確認できて、とても充実した仕事だった。

北海道は食事がおいしいので、毎年行くのが楽しみだ。

昼は、新札幌駅付近にあるシェラトンホテルの30階にある仙雲という中華料理の店で「楊貴妃ランチ」を食べた。実に洗練された味でおいしかった。ここにはこれまでにも何度か来ているが、そのたびに満足している。今回はとりわけ見事。

仕事の後、毎年恒例になった、新札幌駅付近にある魚鮮というお店で小さな懇親会。魚が新鮮で実にうまい。ウニと「さめがれい」がとりわけ絶品。実に満足

 札幌のホテルで一晩過ごして、翌日は、新千歳空港に回転ずしの名店・花まるが出店したというので、入ってみた。まだ十分に認知されていないと見えて、ひるどきなのに、札幌駅の店ほどの大行列はなく、すんなりと席につけた。味は札幌駅の店と変わらない。東京に住む人間からすると、驚異的な安さ。毎回、計算違いではないかと思うほど、安い。そして、その値段からすると驚異的に美味しい。おなかいっぱい食べた。

 

 午後、東京に到着。いくつかの仕事をこなしてから、夕方、王子ホールでミドリ・ザイラーのヴァイオリン、クリスティアン・リーガーのチェンバロでバッハの6つのソナタを聴いた。

 ミドリ・ザイラーはベルリン古楽アカデミーなどのコンサート・ミストレスとして活躍し、ソロでも演奏している日系の古楽ヴァイオリニスト。私は、ベルリン古楽アカデミーの演奏に惹かれて、何度か聴いてきた。

 とてもよい演奏だった。高潔で実に音楽に対して誠実。

私は、かつてグリュミョーの録音をかなり聴いていたとはいえ、実はこれらの曲にそれほど馴染んでいるわけではない。だから、評価するようなことは言えない。ただ、もう少し踏み込んでもよいのではないかと思った。バッハに対して遠慮がちになって、自分の表現を押し付けてこない。もう少し自己主張があってよいのではないか。

しかも、グリュミョーに慣れていたため、私は、どうしてもヴィブラートがほしくなってしまった。ヴィブラートをしない分、もっと表現の強さがほしい。クイケンを聴くと、ヴィブラートがほしくなることはないので、まだミドリ・ザイラーはクイケンのレベルには達してなさそうだと思った。

そして、鍵盤楽器はほとんど聴かず、チェンバロに至ってはこれまで数回しか意識的に聴いたことのない私には何も言う資格はないのだが、リーガーのチェンバロのリズムに少し引っ掛かるようなところを感じた。気のせいだろうか。

だが、もちろん全体的にはとてもよい演奏。大いに堪能した。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

樋口 先生

 ミドリ・ザイラーの演奏に関して、

>>どうしてもヴィブラートがほしくなってしまった。

とのコメント 拝見いたしました。

 弦楽器の最大の魅力の一つはこの「ヴィブラート」だと思われます。
 ヴィブラートによって曲は生きも死にもします。さらに、それを聞けば演奏家を特定することも可能です。
 一方で、ヴィブラート無し の演奏を好む方もおられるわけで、私ならその魅力をオルガンのような清純な和声に求めることになるでしょう。

 コメントで触れられたクイケンの演奏(モーツアルトの弦カルテット)を聞きましたが、和声部分は素晴しいものがあります。
 しかし、単独楽器で長い音を弾く時には、音程が下がって聞こえてしまい、どうしても好きになれません(早いパッセージでは、ノンヴィブラートの影響を受けず、やはり素晴しい音となります=もっぱら音程の正確さによります)。
 
 何故 音程が下がって聞こえるのか?
 私が調べましたところ、次のような事情があるらしいのです。
 ----- 弦楽器の指板上で左手指でポジションを取る場合、指は垂直ではなく、やや傾いた形で指板を押えています。
 これでヴィブラートをかけますと、指の下方部分に余計に振動(ヴィブラート)が加わってしまい、当然に音が下がり気味になってしまうのではないか、と危惧されます。
 しかし、そこは神様の御配慮によって、人間の耳は指の高い部分の振動音に敏感になっているので、そこで自然なヴィブラート聞こえてくるという仕組みになっているらしいのです。これはヴァイオリンでもチェロでも共通しています。

 ところで、ヴィブラート無し---- ですと、傾いた指の下部分の音のみが強調されて聞こえてくるという感じになり、従って音程が低く聞こえてしまうという(当然の)結果を招いてしまいます。

 そこで、心ある?弦奏者は、4弦の調弦が終わった後、わざわざ最高音の「E」弦(チェロなら「A」弦)を少し高めに調整する、ということなので私も真似をして少し高めにしております。(演奏がうまくなる訳はありませんが (^_^))。あるいは、なるべく指を垂直に立てて演奏を心掛ける、ということになります。
 こうしないと、コンチェルトのような場合、オーケストラの音に埋もれてしまう恐れがある、というのがその理由で、私も同感です。

 私は半端な知識かもしれませんが、以上のような事情を頭に入れて、弦楽器に触れ、あるいは、弦演奏や古楽器演奏を聞くことにしております。
                             権兵衛

投稿: 権兵衛 | 2012年6月 6日 (水) 15時45分

権兵衛様
コメントありがとうございます。拝見した後、どうご返事をするか迷っているうちに時間がたってしまいました。
ヴィブラートの件、とても勉強になりました。実はそのようなことは考えたこともありませんでした。なるほど、このような面でも、実際に演奏しておられる方の考えを知ることも大事なのだと再認識しましたそのような小さな技術が伝統を作り、名演奏を作っているのだということなのでしょうね。
ザイラーの演奏を聴いてヴィブラートがほしいと思ったのには、おっしゃるような理由があったのかもしれません。確かに私も、ノンヴィブラート演奏は速いパッセージが好きです。

投稿: 樋口裕一 | 2012年6月13日 (水) 10時01分

樋口先生
 ヴァイオリンのヴブラートにつきまして、自分でもよく分らない論議を振りまわしてしまい、失礼しました。
 それくらいにヴァイオリンの「音」に関しては、いろいろなことが語られているということで、そこが素人にとっても面白いと思われるところであるわけです。

 私が弾いているヴァイオリンは自作のものです。以前、1年間、ヴァイオリン制作のカルチャー教室のようなところに通ってどうにか完成させました。しかし、(意外に)なかなか良い音がするので、それまで持っていた楽器は手放しました。
 指導された方の話によると、見かけは素人臭くて「批評以前」だが、黙って売れば50万円はするだろうという話。約20年前のことです。
 実費としては当時の材料費が5万円。材料の質には上中下とあるわけですが、私は制作失敗のことも考えて「中」を選びました。それから工具(ノミ、カンナ類)の初期投資が5万円。最も高価だったのは、削った板の厚さをミリ単位で計測する器具(約2万)。ストラデイヴァリウス時代には、便利な器具はなかったでしょうに、彼らの楽器は数億円もするのですね。
 そして肝心の制作者としての「技術料は「ゼロ円」(^_^)。しかし、もし、職人としての私の日当を加えると、200万円くらいにはなるのでしょうか。
 そこで肝心の「音色」ですが、指導者の話では「音色」は楽器鑑定の規準にはならないとのこと。何故なら「音色」は人によってまちまちなので、最終的には楽器の値段は「仕上げ」によるのだそうです。優れた鑑定家によると、楽器を見れば、誰の作品であるのかは勿論のこと、制作年代までも分るとのことです。

 楽器によっては、表板、裏板を別々にして2個の楽器に仕上げることもあるとかですが、それも見分けられるそうです。
 楽器商は外国で壊れた楽器を多数仕入れてきて、日本でそれらを解体して複数の使える楽器に仕上げるのだそうですが、その経緯を正直に明かして売るのなら別に咎められることはないのでしょう。
 資源リサイクルという面で、自動車でもパソコンでも似たようなことはあるのでしょう。ただそれらを「名品」として高価で売ることが問題であるわけです。
 私もそうした合作?ヴァイオリンを買ったことがありますが、安価で良い音がしました。

 自分で楽器を作ったみた経験がありますと、楽器店員の話とか、音楽演奏を主題にした記事/小説、など、いろいろな面で考えさせられことが多いです。
 こういう話はどうでしょう。
 ヴァイオリンの鬼才ハイフェッツは、いくら努力して名演をしても、それを使用するイタリア名器のせいにす批評家に腹を立て、わざと平凡な楽器で演奏してそれを「流石名器の音は違う」と褒めそやす人たちを陰で笑っていた、ということです。
 ハイフェッツもお人が悪いというのか、この世界にはびこっている根拠のない伝説、神話、迷信などを、おちょくってみたのでしょう。
 話を戻します。
 最近、ヴァイオリン製作者として名のある松岡順治氏が亡くなられました。以前、私の楽器を見て頂いたことがあるのですが、氏はそれを眺めただけで何も言われませんでした。だた壊れずに形を保っているだけでは批評以前の作品だ、ということです。私はそれでも満足でした。
 氏の作品は、名器の本場 イタリアでのヴァイオリン制作コンクールにおいて、「音色」部門で金賞優勝されたのです。
 「音色」は鑑定の規準にはならないと前述しましたが、その「音色」で、しかも、楽器制作では後発国の日本が優勝者が出たということは、何とも誇らしい記録ではありませんか。
 この事実は、もっともっと知られて欲しいことだと思います。
 私は以前、氏の工房にお邪魔して制作作業を拝見させて頂いたことがあるのですが、勿論便利な電動工具などは使われず、それに、多数の工程の節目節目で、手を休めて、そこいらに散らばった木屑などを丁寧に掃き清め、それから次の作業に入られたこと------ 何か日本人としての節度、美感、道具を敬う心、などを教えられたようで、大きな感銘を受けた次第でありました。     権兵衛

投稿: 権兵衛 | 2012年6月13日 (水) 15時42分

樋口先生、こんにちは。
回転ずしの花まるですが、新千歳空港店は札幌駅ビル店よりもすいていますが、札幌駅ビル店よりも同じネタでもちょっと値段が高くなっています。

投稿: Y.M | 2012年6月14日 (木) 17時23分

YM様
コメント、ありがとうございます。
そうですか、空港はちょっと値段が高いのですか。
そういえば、先日、札幌の駅ビルで食べた時はもっと大量に注文したのですが、支払金額は今回と同じくらいだったような気がします。それでも、東京では信じられない安さですが。
情報、ありがとうございました。

投稿: 樋口裕一 | 2012年6月16日 (土) 07時00分

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