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時間に余裕ができたので、「マイスタージンガー」「美しきエレーヌ」「アレコ」のDVDを見た

 先週は相変わらずの忙しさだった。月曜日には京都に行き、その後は大学の仕事でぎっしり。その間、私の郷里である大分県日田市が洪水に襲われ、両親の住んでいる地域がもう少しで避難勧告地域に入るところだったらしい。テレビで見てびっくりして、両親に何度か電話した。とりあえず、おおごとにならなくて良かった。

 昨日の夜、仕事が一息ついて、やっと少しだけ余裕ができた。今日は、オペラのDVDをいくつか見た。

 

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・ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 ニュルンベルク国立劇場。

 素晴らしい舞台。演奏も見事。マルクス・ボッシュの指揮が特に素晴らしい。がっしりとしていながら、重ったるくなく、きびきびと音楽が進んでいく。しかもまぎれもなくワーグナーの音がする。第3幕第5場など、はっとするほど、美しく、切れが良く、しかも軽くない音が広がる。かなり若い指揮者だが、私の知るところでは、ネゼ=セガンと双璧をなすのではないか。大注目指揮者だと思った。これまで知らなかったことを恥じた。

 歌手にも知っている名前はない。ニュルンベルクで活躍している歌手たちらしい。確かに、図抜けた人はいないし、圧倒的な迫力の人はいないが、粒がそろい、みんながしっかりと歌っている。音程も確かで、何よりも若々しい。ダヴィッド(ティルマン・リヒディ)やエファ(ミヒャエラ・マリア・マイヤー)はまるで役柄そのもの。そうか、こんな若い人たちの登場する楽劇だったのだ、と改めて思った。二人の若い歌手がしっかりと歌って、実に気持ちがいい。

 ザックスを歌うアルベルト・ペーゼンドルファーが、歌手たちの中では一番良かった。堂々たる歌いっぷり。ベックメッサーを歌うヨッヘン・クプファー(この歌手の顔に間違いなく覚えがあると思うのだが、どこで見たのか思い出せない)もよかった。ただ、ヴァルター役のマイケル・パッチはちょっと生彩を欠いた。ヘルデン・テノールとしては弱い。

 ダフィト・モウフタール=サモライの演出もいい。色遣いが素晴らしい。いわゆる読み替えはしていない。第三幕は、要するに老いも若きも一緒になって伝統を尊重しつつ新しい文化を築こうというメッセージなのだろう。これまでに「マイスタージンガー」のように物々しくも大袈裟な舞台ではなく、若々しい舞台。そこがいい。

 

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・オッフェンバック「美しきエレーヌ」 パリ・シャトレ座2000。

 実に楽しい。音楽的にも演劇的にも、実に充実している。これぞ、甘いも酸いも知った大人の娯楽。エレーヌを歌うのはフェリシティ・ロット。大写しになると年齢は隠せないが、スタイルもよく、エレーヌ(ギリシャ神話のヘレネ)という世界を揺るがす美人に十分に見える。歌は言うまでもなく気品にあふれ、演技力もあり、ユーモアも十分。ミシェル・セネシャルやフランソワ・ル・ルーなどの懐かしい顔も見える。パリスを歌うのはヤン・ブロン。名前に覚えがあるが、初めて聴いた気がする。とてもいい。出てくる歌手みんなが芸達者で歌も見事。

 指揮はマルク・ミンコフスキ。きびきびとして実に楽しい指揮ぶり。演出はローラン・プティ。これも素晴らしい。しゃれていて、躍動的で、ユーモアにあふれている。いかにもフランス。

 私はオッフェンバックが大好きなのだが、やはりこの人のオペレッタは、ギリシャ神話のエピソードがたくさん出てくるので、その方面の知識がないと、日本人にはついていけないところが多い。フランス人なら大笑いするだろうところが、ピンとこない。ギリシャ神話ネタを上手にカットするようなヴァージョンを作って、日本人向けにもっと上演することはできないだろうか。少々カットしても、オッフェンバックだったら許してくれそうな気がする。

 

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・ラフマニノフ「アレコ」、リムスキー=コルサコフ「不死身のカシチェイ」 ソ連制作のオペラ映画。録音はともにモノラル。

 ラフマニノフとリムスキー=コルサコフの2本の短いオペラを収録したDVD。

「アレコ」は、ドミトリ・キタエンコ指揮。モスクワ国立交響楽団&国立放送合唱団。最初と最後に、ラフマニノフのオペラとは無関係の映像が含まれている。

アレコを歌うのが、エフゲニ・ネステレンコ。このネステレンコだけが、映像にも登場しているが、そのほかは歌っている歌手と、映像に出ている役者は別の人物。ネステレンコだけが大スターなので、このようなことになったのだろう。ただ、率直に言って、ほかの俳優さんがみんな実に役にピッタリで、ゼムフィーラもその新しい恋人も若くて美形なのに、ネステレンコだけが老年なのが、何とも違和感がある。しかも、1986年のソ連映画のはずなのに、まるで1950年代の映画のように古めかしい。音楽の音質も良くない。とはいえ、演奏は悪くない。ネステレンコはさすが。この曲はラフマニノフが19歳のころのオペラだが、とてもおもしろい。もっと上演してほしいものだ。

「不死身のカシチェイ」は、「アレコ」の翌年の1987年に作られた映画のようだが、いっそう古めかしい。しかも、かなり安っぽい。まるで学生の作った映画の雰囲気。演奏も、冴えを感じない。レニングラード・ドミトリ・ショスタコーヴィチ交響楽団、指揮はA.トリフォノフとの表記がある。この映画も、歌手と演じている役者が別の人物のようだ。魔法使いの出るおとぎ話だが、あまり感動は覚えなかった。

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