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二人の大先輩の著作 「翔べよ源内」と「悔しかったら、歳を取れ」

 二人の大先輩の著作を立て続けに読んだので、感想を書かせていただく。

519dbvcmdcl__sl500_aa300_  一つは小中陽太郎先生の「翔べよ源内」(平原社)。小中先生とは、このところ、親しくさせていただいている。小中先生の話術とエッセイの語り口の面白さについて常々感服していたが、本書はそれが一層際立っている。

 平賀源内を扱った小説だが、自由で楽しくてハチャメチャな源内の生き方を、まさしく源内にピッタリの自由な語り口で書きつづっている。遊びが多く、脱線が多い。下ネタもあちこちに出てくる。まさしく融通無碍の文体。

従来の小説で多用される描写が極めて少ない。自然や人物、状況について、必要不可欠な情報だけしか与えられない。にもかかわらず、いや、むしろそうだからこそ、登場人物は自由に飛翔する。時代小説愛好者は、時代特有のにおいがないと言うかもしれない。が、それこそが源内の在り方であり、小中先生の生き方でもあるのだろう。良い意味で、実に軽やか。司馬遼太郎に近い歴史的アプローチだが、読後感は全く異なり、もっとずっと自由ですがすがしい。

小中先生は、まさしく現代の平賀源内とでも呼ぶべき存在だと、改めて思った。

 

41ty9guypyl__sl500_aa300_  もう一冊は、野田一夫先生の「悔しかったら歳を取れ! わが反骨人生」(幻冬舎 ゲーテビジネス新書)。野田先生は、私の勤める多摩大学の初代学長であり、現在の寺島学長が就任する前の学長代行だった。「和をもって貴しとなす」という言葉を何より嫌い、反骨を貫いた半生を描いている。

 野田先生は現在85歳。先月だったか、久しぶりに先生にお会いしたが、80歳代とは思えない。お世辞でも何でもなく、60歳以下に見える。背筋をぴんと伸ばし、元気な声で話をされ、速足で歩く。話の内容も、大学生などよりもずっと若々しい。私はこれまでの人生で、野田先生ほど若々しかったことは、20代のころを含めて一度もないだろう。

 本の中身は、私は既に聞いたことのある話が中心だったが、改めて野田先生のスケールの大きさに感服。私が気に入っているのは、足の悪い学生のエピソードだ。

 ある時、教室に遅刻して足を引きずる学生が入ってきた。野田先生は「何だ、その歩き方は」と怒鳴った。野田先生はこのようにしてしょっちゅう怒鳴る。ところが、その学生は生まれつき足が悪かった。学生がそのことを伝えると、先生はこういったという。「ああ足か。足でよかったな。世の中には頭の悪い奴がいっぱいいるが、見えんから、本人も気がつかん。足なんか気にするな。むしろ、頭の悪い奴のことを同情してやれ」

 これぞ野田流。頑固一徹。頭の回転が速く、当意即妙に警句を吐く。必ずしもだれもが賛同する価値観ではない。反発を覚える人もいるだろう。だが、そこには深い人間観察と温かい人間愛が含まれている。だから、話が面白い。このレベルの警句は、野田先生と話していると、5分に一つくらいは出てくる。この本の中にも、このようなエピソードが現れる。

 この本はとてもおもしろい。しかし、正直言うと、野田先生と話をしていると、もっともっとおもしろい話がたくさん出てくる。野田先生にはこれからももっとたくさんの本を出してほしいものだ。

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