レイチェル・コリー・ダルバのリサイタルは期待ほどではなかった
7月24日、武蔵野市民文化会館小ホールでレイチェル・コニー・ダルバのヴァイオリン・リサイタルを聴いた。ピアノ伴奏はクリスティアン・シャモレル。
たまたま買ったイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタのCDに圧倒されて、私はずっとダルバに注目していた。さきごろのアクセルロッド指揮、NHK交響楽団との「詩曲」と「ツィガーヌ」が期待ほどではなかったので、今日こそはと思って出掛けた。プログラムは、前半にシューマンの2番のソナタとイザイの無伴奏3番「バラード」。後半にイザイの無伴奏ソナタの5番とフランクのソナタ。
結論を言えば、今日も期待ほどではなかった。もちろん、悪くない。イザイのCDを聞いていなかったら、私は大満足だっただろう。だが、CDの演奏は、火花の散るようなイザイが素晴らしい。私は心から圧倒された。それに比べると、実演はかなりおとなしい。もっと凄まじい演奏を期待していた。期待が大きすぎたともいえるだろう。
とりわけシューマンについては、かなり不満を持った。私は実はシューマンのヴァイオリン曲はかなり苦手だ。同じことの執拗な繰り返しが多く、メロディを楽しめない。ダルバの演奏は、シューマンの弱点をカバーしているようには聞こえなかった。それに、ピアノとぴたりと合っていなかった。
それに比べれば、イザイとフランクはかなり良かった。情熱的なところは情熱的に、そして美しいところは美しい。だが、残念ながら、私の魂に刺さってこなかった。CDのような激しさがない。それに、構成にも少し難があるように思った。唐突に感じるところが何箇所かあった。
先日のNHKホールでの演奏の際、ある音楽評論家に、ダルバは指を怪我したために、武蔵野のプログラムをイザイの無伴奏ソナタの全曲演奏からシューマンやフランクに変えたと聞いた。そう言われると、とても納得できる。これがダルバの本調子とは思えない。
事実、会場でfrench impressionsと題されたダルバのCDを買い、さっそく聞いてみたが、ここに含まれるサンサーンスの3番の協奏曲や詩曲、ツィガーヌもこのたびの実演よりもずっと冴えている。イザイのCDと同じほどに素晴らしい。激しい表現があり、リアルな迫力が素晴らしい。録音技術のせいではないと思う。
このたびの実演は怪我のために実力を出せていないと考えると、つじつまが合う。
ともあれ、もう少しダルバの演奏を追いかけてみたい。傑出したヴァイオリニストであることは間違いない。
アンコールは、現代的な曲とイザイの「子どもの夢」。とても雰囲気のある良い演奏だったが、実はこれについても少し物足りなかった。
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