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グスタフ・マーラー・ユーゲントの「ばらの騎士」と「ラ・ヴァルス」に興奮!

 8月21日、ザルツブルク音楽祭祝祭大劇場で、ダニエレ・ガッティ指揮、グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラの演奏を聴いた。私の今回のザルツブルク音楽祭で最も興奮する演奏だった。

 前半は、「パルジファル」の「聖金曜日の音楽」と、ベルクのヴァイオリン協奏曲。要するに、亡き人々を偲んで祈る曲。始まったとたん、グスタフ・マーラー・ユーゲントの音の凄さにびっくり。数年前、ハーディングの指揮で聞いて、その時もオケのあまりのうまさに驚いたがそれ以上。びしっと音程があって、研ぎ澄まされ、透明で、しかも機能一点張りではなく最高の美しさがある。はやくも涙が出てきた。あまりに美しい。

 フランク・ペーター・ツィンマーマンのヴァイオリンが加わってのベルクの協奏曲は、実はあまり感動できなかった。以前、日本でツィンマーマンの演奏するブラームスの協奏曲を聴いた記憶があるが、その時と同じ印象。はっきりいって何をしたいのかよくわからなかった。音も小さめで深い思いが伝わるわけでもなかった。ツィンマーマンのアンコールでバッハの無伴奏(ソナタ第2番のアンダンテ?)も、構築性がなく、ただ進んでいく感じ。少しがっかり。

が、休憩後が凄かった。ワルツを中心とした曲が2曲。まずは、シュトラウスの「ばらの騎士」組曲。私はオペラ「ばらの騎士」は大好きだが、組曲に感動したことはなかった。たいした曲と思っていなかった。ところがところが、これが凄まじかった。

透明な音が重なりあって、妙なる音の世界を作り出していた。「オックス男爵のワルツ」のなんと美しいこと。これがこんなに美しい音楽だったなんて! 信じられないようなヴァイオリンの弱音。第三幕の三重唱の部分の管楽器の微妙な美しさも、これまで聴いたことがない。音そのものの快感で涙が出てきた。最高の音の響きの世界。すべての楽器が一糸乱れぬ動きで生命を帯びて動き出す。最後の盛り上がりにおいても、透明に鳴り響いて一つ一つの楽器の音がクリアに聞こえる。それを束ねるガッティも素晴らしい。

最後の曲がラヴェルの「ラ・ヴァルス」。これも「ばらの騎士」と同じ雰囲気。楽器が次々と命を吹き込まれ、大きなうねりとなってワルツを奏でていく。そして、それがまるで音の龍のようになって見えない空に舞い上がる。一人ひとりのメンバーのうまいこと。ウィーンフィルも凄いが、それとは違った凄さ。もっと研ぎ澄まされ、もっと新鮮で、もっと透明。こんなオーケストラ、聴いたことがない。

アンコールはとてもよく知っている曲。私はワーグナー好きでありながら、この部分をとりだされて演奏されると、「あれ、この曲、何だっけ?」と思った。たぶん、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の第三幕。ふだん独立して演奏されることのほとんどない部分なので、音楽の才能のからきしない素人の悲しさというべきか、どの部分なのか自信がない。CDで確かめたいが、今、ザルツブルクなので、その術がない。

静謐で柔らかくて深くて豊かな音楽。「こんな音楽もこのオケは上手に演奏できるんだよ」と示すための選曲だろう。

弦楽器を演奏するオケのメンバーはほとんどが女性。しかも、みんな20代に見える。若くてきれいな女性がずらっと並んでいる。管楽器、打楽器はかなり男性がいるが、もちろん、みんな若い。本当に将来が頼もしい若者たちだ。

昼間、ホテルで夜のコンサートに備えて昼寝をしようとしたら、突然楽器の音が聞こえてきて、眠れなくなった。トランペットやホルンの音で、音階を鳴らし、有名曲のパッセージを断片的に吹いている。それが数時間続いた。どうも私と同じホテルに、グスタフ・マーラー・ユーゲントのメンバーが宿泊していたようで、その練習だったようだ。このような音のために眠れないのなら幸せだと思うべきだと思い直した。

明日、バイロイトに移動する。今日のコンサートで私の2012年のザルツブルク音楽祭が終わる。昨年ほどではなかったが、最高に満足できた。

 

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コメント

樋口先生、
先日は、私のコメント(ナクソス島のアリアドネ)にわざわざメールでお返事いただき、ありがとうございました。
私も10日ほど前に、'Young Conductors Award'というコンサート(ネスレとザルツブルク音楽祭主催の若手指揮者コンクールの優勝者コンサート、フェルゼンライトシューレにて)でグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラを聴きました。セミプロの指揮者とセミプロのオーケストラのコンサート、というつもりで聴きに行ったのですが、全く違いました。
先生のおっしゃる通り、技術的水準が非常に高いうえ、当日のメイン、ストラヴィンスキーのペトルーシュカでは、この曲に対する彼ら(彼女ら)のイメージが、音楽を通じてそのまま聴き手の心の中に飛び込んでくる、そんな素晴らしいコンサートでした。指揮者はリトアニア出身のMirga Gražinytė-Tyla、25歳の小柄な可愛らしい女性なのですが、洗練された的確な指揮ぶりで喝采を浴びていました。
会場では、有料のパンフレットのほかに、無料で'Gustav Mahler Jugendorchester Summer Tour 2012'という冊子が配られ、その冊子に今回先生が聴かれたコンサートの出演者、曲目の紹介が載っていて、聴きたいなあ(←でもすでに私は帰国、涙・・)、と思っていたところでしたので、先生のブログを見て、うれしくなりました。また、その冊子には、オーケストラ全員のプロフィール、これまでのコンサートツアーの記録(小澤征爾さんの名前も・・)、世界のトップオーケストラ(VPO、BPOなど)で活躍する卒業生の名前などが載っていて、とても興味深いものでした。
余談ですが、休憩時間、ロビーに指揮者のメッツマッハーさんがおられ、サインをお願いしたら、「きょうは私のコンサートではないのだけどね!」とおっしゃりながらもニコニコと笑顔で応じてくださり、握手までしていただきました。
では、バイロイトからのブログを楽しみにしております。どうかお気をつけていらしてください!

投稿: 高橋幹雄 | 2012年8月23日 (木) 00時46分

高橋幹雄様
前回は、ホテルのIT環境のために、なぜかブログのコメントへの返事ができませんでしたので、個人的に返事を差し上げました。
再びコメント、ありがとうございます。バイロイトのホテルの移って、返事できるようになったようです。
そうですか。マーラー・ユーゲントをお聴きになりましたか。まさしく驚異の団体ですね。
そういえば、写真入りの冊子を見ている客が何人かいました。そんなものだったんですね。入手できなくて残念です。
メッツマッハーさんは、素晴らしい指揮者ですね。東京でも見られるのが楽しみです。

投稿: 樋口裕一 | 2012年8月23日 (木) 04時26分

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