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ザルツブルク音楽祭「ナクソス島のアリアドネ」は素晴らしかった

8月15日、ザルツブルク音楽祭、モーツァルト館で「ナクソス島のアリアドネ」オリジナル版を見た。一言で言って、素晴らしい! 大いに感動した。

ずっと忙しかったので、実は今回のザルツブルク音楽祭について、あまり情報を仕入れていなかった。オリジナル版ということは知っていたので、かつて何度か聴いた覚えのあるケント・ナガノ指揮、リヨン国立歌劇場管弦楽団のCD(ちなみに、これはとても良い演奏であり、私はこの演奏でケント・ナガノの名前と真価を知ったのだった!)と同じ版だとばかり思って会場に行き、プログラムを購入して中身をみてびっくり! なんと、第一幕第一場、最初に声を発するのはホフマンスタールということになっている! いわずとしれたこのオペラの台本を書いた大詩人だ。どういうことだろうと思って、幕が開く前に必死にプログラムの英語を読んだ。

本来の第一幕が始まる前に、ホフマンスタールと伯爵夫人オットニーのやり取りが加えられていた。おそらく今回の公演のために新たに加えられたのだろう。ホフマンスタールがモリエールの町人貴族を題材にオペラを書いていることを、思いを寄せている未亡人のオットニー(実在の人物だろうか?)に語り、語られた内容が目の前で上演されているという仕掛け。しかも、ホフマンスタールが町人貴族の登場人物であるドラントに扮し、オットニーがドリメーヌ夫人に扮する。このオペラ自体が劇中劇なのだが、そこにまた新たな劇中劇を組み入れた形になっている。

こうした芝居が、第一幕全体にわたって、ほとんどが、歌でなく普通の台詞で語られる。

そんなわけで、私たちの聴きなれた「序幕」は演奏されなかった。「作曲家」はあの魅力的なメゾ・ソプラノで歌われる人物ではなく、男性が演じる。代わりに、私たちが「町人貴族」組曲として知っている曲のいくつかが演奏される。とはいえ、私の記憶が正しいとすると、ケント・ナガノのCDともかなり異なるようだ。近いうちにDVDが発売になると思うが、その際、専門家に詳しい説明を書いてほしいものだ。

第二幕は、私たちの知っているものとほとんど同じ「オペラ」。ただし、ツェルビネッタの大アリアなど、ところどころ耳慣れない音楽が現れる。上演されているオペラを町人貴族ジュールダン氏がみているという設定で、時々、声を挟む(ケント・ナガノのCDでもオペラの中にジュールダン氏が登場して声を挟むが、これもかなり異なっているように思った。どちらかがオリジナルを修正しているのか?)。

また、演出上、ホフマンスタールとオットニーが舞台の登場し、バッカスとアリアドネに重なる。つまり、ホフマンスタールは自分と伯爵夫人の恋をバッカスとアリアドネの恋に重ねて台本を書き、結局恋を成就した・・・という物語になっている。

・・・と、この台本について説明したが、かなりわかりにくい。見ていない人にわかってもらえる自信は全くない。このくらいにしよう。

 私は最前列だったので、字幕を読みにくいこと、この上ない。歌でも、英語の字幕だと苦労するのに、台詞が多いので、字幕を追いかけるのが間に合わない。よくわからないところが多かった。が。わからないところが多いながらも、ともあれ、とても面白かった。役者たちの芸達者なこと。しかも、容姿も、まるで台本からできたかのよう。

そして、何よりも音楽が素晴らしい!!

 エミリー・マギー(アリアドネ)、エレナ・モシェク(ツェルビネッタ)、ロベルト・サッカ(バッカス)、そして道化役者たち、三人の妖精、すべてが完璧。図抜けた歌手はいないがアンサンブルが素晴らしい。マギーもモシェクもサッカも、シュヴァルツコップやグルベローヴァやカウフマンと比べると少し劣るのかもしれないが、生を聴いている間はそのようなことは気にならない。指揮はダニエル・ハーディング。かつては切れの良さを強く感じていたが、今回は実にしなやかで美しい。そして、ウィーンフィルの音の美しさ! 潤いがあり、しなやかで色気がある。弦とクラリネットにうっとりした。

 演出も、第一幕の芝居の部分といい、第二幕のオペラの部分といい、一つ一つの動き、顔の表情など、ほんとうに見事というしかない。芝居として最高の楽しさ。色づかいも最高。

 ただ、少々腰が痛くなったのが心配・・・・

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コメント

先生のブログ、いつも楽しく読ませていただいております。私もこの日の公演を聴きました。(といっても最上階の立ち見!)ただ、第一幕はちんぷんかんぷん。先生のブログを読んでなるほど!という感じです。ありがとうございます。数日前のカウフマンの出た公演も聴きましたが、声の美しさ、フレージングの見事さなど、もう絶品でした。もちろんこの日のサッカも素晴らしかったと思います。
「魔笛」(←これが私のザルツブルク訪問の目的!楽屋口で偶然アーノンクールにも遭遇しびっくり!)「迷宮」「ラ・ボエーム」「タメルラーノ」などを聴きました。あと、ゲルネ&エッシェンバッハ、ゲアハーヘル、バレンボイムのリサイタルも素敵でした。
先週の土曜に帰ってきて、今日は仕事ですっかり現実の世界に連れ戻されてしまいましたが、先生のブログでもうしばらく夢の続きを見ることができそうです。楽しみにしております!!

投稿: 高橋幹雄 | 2012年8月20日 (月) 23時29分

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