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帰国してザルツブルクとバイロイトを総括

 昨日の午後、日航機の無事に帰国。あまりにありふれた感想だが、ヨーロッパから日本までは遠い! そして、日本は蒸し暑い!! マイレージがたまっていたので、行きはエグゼクティブにしたが、帰りはちょっとマイルが不足のためエコノミー。余計に辛さを感じた。

 音楽祭についての全体の印象を簡単にまとめておく。

 

●ザルツブルク音楽祭

昨年のティーレマン「影のない女」のような圧倒的な凄味のある上演はなかったし、演目が私の好みではなかったが、もちろん、全体的に満足。来年は、ワーグナー「リエンツィ」(コンサート形式)、「マイスタージンガー」、「ドン・カルロ」(カウフマンが歌う?)、「イル・トロバトーレ」、「コシ・ファン・トゥテ」などが予定されているらしい。来年も行けるものなら行きたくなった。

 今年、私の見た上演に敢えて順番をつけると、以下のようになる。

① アーノンクール指揮、ウィーン・コンセントゥス・ムジクス 「魔笛」

(演奏、演出を含めて、きわめて刺激的で、美しい)

② ガッティ指揮、グスタフ・マーラー。ユーゲント・オーケストラ 「ばらの騎士組曲」「ラ・ヴァルス」 (音による色彩の魔術!)

③ ハーディング指揮 ウィーンフィル 「ナクソス島のアリアドネ」

(第一幕が初版に基づく演劇だったので、せりふを十分に理解できなかったのが残念)

④ ポリーニ ベートーヴェンのソナタ30・31・32

(私がこれらの曲にもっと精通していれば、もっと楽しめただろう)

⑤ メッツマッハー指揮 ウィーンフィル ツィンマーマン作曲「軍人たち」

(ウィーンフィルの強烈な音の世界に圧倒された。このオペラについて十分に予習していなかったのが悔やまれる)

⑥ ガッティ指揮 ウィーンフィル 「ラ・ボエーム」

(ネトレプコは素晴らしいが、ネトレプコをもってしても私はこのオペラを好きになれなかった)

⑦ ラトル指揮 ウィーンフィル 「カルメン」

(知的で清潔で上品な「カルメン」だったので、魅力を感じなかった)

⑧ ボルトン指揮 モーツァルトウム管弦楽団 ヴィンター作曲「迷宮」

(楽しかったが、やはり音楽がほかと比べるとかなり劣る)

 

●バイロイト音楽祭

 ワーグナー生誕200年にあたる来年に行きたいとずっと思っていたが、入ってくる情報では、それは難しそう。そこで、今年のチケットを入手した方の誘いもあって、行くなら今だと思って行ったのだった。日本でのツアーがほとんどなかったためだろうが、例年に比べて日本人客が少ないのを強く感じた。

 上演に関してはやはり演出偏重がとても気になる。演出が音楽を邪魔するのが当然のことになっている。有名な歌がうたわれているとき、歌っている歌手に注目されることは、どの演出でも皆無に近い。必ずほかの人物が何か意味ありげなことをしていたり、舞台上で何か大きな出来事が起こったりしている。そして、その演出が、台本とはまったく関係がなく、別の物語を語ることが多い。それがあまりに音楽とかけ離れていたら、音楽が耳に入らなくなる。それほど音楽からかけ離れていなかったら、まだしもよかったと思うことになる。

 このような傾向が続くなら、私はバイロイトはしばらく行く必要がないと思った。私はオペラ作曲家としてはワーグナーを最も愛しているが、そうであるがゆえに、音楽が演出に邪魔されているのを見るのは忍びない。

 敢えて今年の上演の順位をつけると以下のようになる。

 

① ティーレマン指揮 グローガー演出 「さまよえるオランダ人」

(オペラそのものとしては、ほかのものに比べてぐっと弱いこの「オランダ人」に最も感銘を受けた。ティーレマンが素晴らしく、演出もおもしろかった。歌手たちも最高度に充実)

② シュナイダー指揮 マルターラー演出「トリスタンとイゾルデ」

(音楽を理解していない演出で、二人の主役に不満だったが、やはりワーグナーの力と、指揮のシュナイダーや脇役の力でよかった)

③ ジョルダン指揮 ヘルハイム演出 「パルジファル」

(突飛な演出だが、二度目ということもあって、あまり気にしないで音楽を聴くことができた。ヴァーンフリート館、つまりドイツの歴史が重ねあわされていることだけを重視し、それ以外の細かい意味の充満についてはあまりに気にしないことにした。演奏はまずまず。しかし、これもワーグナーの力で雄弁)

④ ティーレマン指揮 バウムガルテン演出「タンホイザー」

(胎内を工場に見立て、工場労働者たちは細菌を表現した演出。生命そしてエロスはきわめて生理的な肉体そのものに宿り、それが生命を生み出しているというメッセージなのだろう。それはわかるが、音楽とかけ離れている。ティーレマンにも凄味を感じなかった)

⑤ ネルソンス指揮 ノイエルエルス演出 「ローエングリン」

(意味不明のネズミの演出にまいった。指揮も破綻が感じられた。フォークトは素晴らしかった)

 

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