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バイロイト音楽祭 「ローエングリン」、演出に怒り、フォークトは凄い!

 8月25日、バイロイト音楽祭で「ローエングリン」を見た。危惧したとおりになってしまった!

 アンドリス・.ネルソンスの指揮、ハンス・ノイエルフェルスの演出。昨年、日本でも生中継されたのと同じネズミが出てくる演出。私は、途中で演出が不快になってテレビ放送をみるのをやめたので、ちゃんと見るのは初めてだった。

 で、やはり演出に対して不快に感じた。それどころか、怒りを覚えた。

 ネズミが不気味と思うわけではない。ただ、あまりに意味不明。どうやら、ネズミを実験台にした研究室という設定のようだが、そもそもなぜネズミなのか、これとローエングリンとどう関係があるのか、ネズミたちの様々な服装(禿げ頭のカツラ、黄色い服、黒い服、白い服、鮮やかな色の服、あれこれのしっぽ)や仕草にどんな意味があるのか、まったくわからない。おそらく、演出家本人以外、誰ひとりわからないだろう。いや、おそらく、ローエングリンとは全く無関係なことをネズミを使ってやっているのだろう。

 あまりにプリミティブな感想だが、こんな演出家の独りよがりを許していいのだろうかと思ってしまう。このような妄想に付き合わされるのはたまらない。

 そんなわけで、音楽に集中したいと思うのだが、目の前でネズミたちがあれこれの仕草をしているので、それに気を取られて、音楽が耳に入らない。しかも、目の前の仕草と音楽は全く無関係。

 おそらく、演出家は偉大な伝説となったワーグナーを卑小化したいのだろう。そして、むしろ笑いの世界にしたいのだろう。現に、第二幕や第三幕など、ネズミの仕草に対してあちこちで笑いが起こっていた(きっと笑っていたのは、ワグネリアンと呼ばれる人たちではないと思うが)。そうすると、ワーグナーの音楽とまったくかみ合わなくなってしまう。が、おそらく演出家はあえてそうしているのだろう。

 しかし、それはワーグナーの音楽を聞きにバイロイトまでわざわざ来た人にとっては、演出が音楽の邪魔をしていることにほかならない。

 近年の演出過剰の一つの現象を見て、私は大いに落胆し、怒りを覚えたのだった。

 

 音楽に関しても、昨日ほどには感動しなかった。もしかしたら、演出に気を取られたせいかもしれないが。

 圧倒的に素晴らしかったのは、ローエングリンを歌ったクラウス・フローリアン・フォークト。これはもう言葉をなくす凄さ。バイロイトの歴史に伝説として残されるのではないかと思われるほど。軽く声を出しているのに、芯のしっかりしたやわらかくて美しい声がまっすぐに響き渡る。高貴で優雅。まさしくローエングリンにぴったり。第三幕は独壇場といってよいほど。しびれた!

 オルトルートを歌ったスーザン・マクリーンもドラマティックな声でなかなか良かった。 テルラムントは第一幕はトーマス・J・マイヤーが歌ったが、体調が悪いとのことで、第二幕からユッカ・ラジライネンに交代。ラジライネンは、明日、マルケ王を歌うはずなのだが・・・。とてもよかった。伝令のサミュエル・ユンは昨日のオランダ人に続いての出演だが、これもいうことなし。

 ただ、ハインリヒ王のヴィルヘルム・シュヴィンクハンマーとエルザのアネッテ・ダッシュはほんの少し弱いように思った。とりわけ、ダッシュは、第二幕以降はかなり持ち直した気がしたが、第一幕はオーケストラと合わなかったり、ほかの歌手と音程がかすかにずれたりしたように思う。ただ、全体的には、容姿も美しく、可憐で清潔な声で、とても感銘を受けた。

 指揮のネルソンスについては、私は少し疑問に思った。第一幕では、集中力を失って、宙に浮いたような部分があるように思った。第二幕も、私の大好きなオルトルートとテルラムントの二重唱の部分が、ぞくぞくするような迫力に乏しかった。弛緩したような部分を感じた。どうしたのだろう。ティーレマンに比べると、やはりまだまだだという感じがしてしまう。ただ、第三幕はすばらしかった。

 わけのわからない演出に気を取られずに、もっとワーグナーの音楽を聞きたかった! 明日は、2008年に見て、今日と同じように演出に対して怒りを覚えたのと同じプロダクションのマルターラー演出の「トリスタンとイゾルデ」。しかも、私は昨年のザルツブルク音楽祭でマルターラー演出の「マクロプロス事件」を見て、これまた激しい怒りを覚えたのだった。

 明日もまた、今日と同じように演出に対する怒りを書くことになるかましれない・・・

 

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