« ザルツブルク音楽祭「ナクソス島のアリアドネ」は素晴らしかった | トップページ | ザルツブルク音楽祭の「魔笛」は凄まじかった »

ザルツブルク音楽祭、「魔笛」の続編である「迷宮」はおもしろかった

8月16日、ザルツブルク音楽祭、レジデンツホフでピーター・フォン・ヴィンター作曲のオペラ「迷宮」を見た。

会場が「レジデンツホフ」だというので、あちこち探したが、ザルツブルク旧市街のレジデンツ(宮殿)内部の中庭での野外劇場だった。第二幕の前で簡易屋根が張られた。夜の8時に始まり、111時半近くに終わった。昼間の気温は25度前後あったと思うが、夜は冷え込んだ。まさか野外劇場とは思っていなかったので、厚着していなかったため、かなり寒かった。

このオペラは、モーツァルトの「魔笛」の続編で、台本は同じシカネーダー。「魔笛」の大成功に味をしめたシカネーダーが、モーツァルトの死後、ヴィンターという当時人気のあった作曲家に依頼して、続編を完成させたという。初演は1798年というから、モーツァルトの死後6年余りがたっている。

 ストーリーは「魔笛」とよく似ている。ほとんどが同じ登場人物。タミーノとパミーナ、パパゲーノとパパゲーナの二組の結婚を、夜の女王とモノスタトスが邪魔しようと画策するが、試練のための迷宮を克服したタミーノが改めてパミーノを射止めるお話。三人の少年、三人の侍女、ザラストロが登場する。新たな登場人物としては、パミーナに恋し、夜の女王と結託してタミーノの邪魔をしようとするティフェウス、その友人シトス、そしてパパゲーノの両親がいる。

 台本は、「魔笛」と同じように、だらだらとして無駄が多く、わかりにくい。これと比べると、あのわけのわからない「魔笛」も、まだしもよくできた台本だと思えてくる。だが、これは大衆オペラなのだから、これでいいのだろう。それはそれでとても楽しい。次から次にいろいろなことが起こって盛りだくさん。

 音楽は、言うまでもなくモーツァルトに比べるとまさしく凡庸。しかし、なかなかおもしろい。モーツァルトよりももっと平易で親しみやすいメロディがふんだんに出てくる。しかも、モーツァルトにとてもよく似ている。序曲の最初の和音は「魔笛」を彷彿とさせるし、それぞれの登場人物のアリアも、雰囲気がそっくり。夜の女王のコロラトゥーラのアリアもちゃんとある。パパゲーノはパパゲーノらしく、しかも笛の音も出てくる。タミーノの吹くフルートのメロディもとてもよく似ている(「魔笛」のメロディの変奏と言えるのかもしれない)。あちこちで既視感を覚える。ただし繰り返すが、モーツァルトをモーツァルトたらしめている圧倒的な美、圧倒的な凄味が全くない。改めて、モーツァルトの偉大さを感じる。

演出はアレクサンドラ・リートケ。とても楽しい演出。わかりにくいオペラをよく整理していたし、野外オペラという制約をうまく利用していた。

 演奏はまずまず。野外劇場であるため、歌手たちはかなり苦しかったかもしれない。そのなかで全体的に男声陣のほうがよかった。タミーノを歌ったミハエル・シャデは、容姿はとてもタミーノに見えないが、よく伸びる美声で、しっかりと歌っていた。パパゲーノのトーマス・タッツィもとてもよく演じ、しかも良く通る声。クリストフ・フィッシェッサー(ザラストロ)も悪くなかった。女声陣はやや劣る。夜の女王のユリア・ノヴィコヴァは声が伸びず、音程も少し不安定だった。不調だったのかもしれない。パミーナのマリン・ハルテリウスもかなり弱さを感じた。ほかの歌手陣はなかなかの芸達者。パパゲーノの姉妹を演じた小さな子どもたちや合唱もよかった。

 指揮はアイヴァー・ボルトン。メリハリのあるキビキビした演奏で、このオペラにはぴったりだと思った。オケはモーツァルテウム管弦楽団。もちろんとてもよいオーケストラだが、やはりウィーンフィルとはかなりの違いを感じる。

 感動というほどまではいかないが、ともあれ珍しいオペラがみられてよかった。明日は、正真正銘の「魔笛」をアーノンクールの指揮で見る。

|

« ザルツブルク音楽祭「ナクソス島のアリアドネ」は素晴らしかった | トップページ | ザルツブルク音楽祭の「魔笛」は凄まじかった »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/55441199

この記事へのトラックバック一覧です: ザルツブルク音楽祭、「魔笛」の続編である「迷宮」はおもしろかった:

« ザルツブルク音楽祭「ナクソス島のアリアドネ」は素晴らしかった | トップページ | ザルツブルク音楽祭の「魔笛」は凄まじかった »