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秋期卒業式、そしてイタリアとスペインのオペラDVD

 本日、私の勤める多摩大学経営情報学部で教授会があり、その後、秋期卒業式が行われた。事情があって卒業の遅れた人たちの卒業式。卒業生代表として、私のゼミに所属する女子学生が挨拶した。大学生時代を振り返る挨拶だったが、私のゼミで熱心に活動し、苦楽を共にした学生だったので、挨拶を聴くうち、涙がこみ上げてしまった。卒業式で涙を流すなんて、本当に初めてのこと。自分の卒業式でも、自分の子どもの卒業式(そもそも、子どもの卒業式には出席した覚えがない)でも、そんなことはなかった。

 先日は、私のゼミ生の一人がオーストラリアのケアンズに短期留学し、現地の新聞の一面に取り上げられた。重い障害があって、たくさんのハンディがあるにもかかわらず、努力している姿が現地の新聞記者に目にとまったらしい。頼りない教師に頼りないゼミ生の集団ではあるが、ゼミ生の着実な成長が嬉しい。

 

 ところで、ザルツブルク、バイロイトで十分に音楽を堪能してきたので、日本に帰ってからしばらく、あまり音楽を聴く気分になれなかった。買いためたCDはたくさんあるのだが、ほとんどがバッハ、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス。バイロイトで重い音楽のためにお腹いっぱいになった身には辛い。

 そんななか、買い置きしていたイタリア・スペイン系のオペラのDVDを見る気になった。数日かけて、少しずつ見た。私は、好んで見聞きするのは、ドイツ、スラブのオペラであって、イタリア・オペラは稀にしか見ない。だから、ふだん以上に素人の感想以外の何ものでもないが、とりあえず感想を書きつける。

 

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ドニゼッティ「ドン・パスクァーレ」メトロポリタン歌劇場

 アンナ・ネトレプコがノリーナを歌っているので、買ってみた。METだけあって、すべてにおいて最高レベル。オットー・シェンクの演出も、実に楽しい。

ネトレプコはチャーミング。意地悪なふりをするところも、実にかわいらしい。声も素晴らしい。ネトレプコが歌うのなら、もっとノリーナの役に聞かせどころがほしいほど。ドン・パスクァーレを歌うジョン・デル・カルロも愛嬌があってなかなかの芸達者。エルネストのマシュー・ポレンザーニ、マラテスタのマリウシュ・クヴィエチェンも文句なし。指揮のレヴァインも堂々とオケを歌わせて、実にうまい。

このオペラはエヴァ・メイの歌う映像(ほかに、シラグーザ、コルベッリ。コルステン指揮、カリアリ歌劇場)で楽しんでいた。エヴァ・メイも、歌はもちろん容姿も素晴らしく、見ているうちに微笑みたくなるような雰囲気を醸し出すので、とてもよかった。今回のMETのものも、それと同じくらいに楽しめる一枚。指揮とオケについては今回のMETのほうが本格的。ただ、その分、エヴァ・メイのもののほうが本来のこのオペラのあり方に近いともいえるだろう。

それにしても、ドニゼッティという作曲家、まさしくロッシーニの後輩という感じで、とてもおもしろい。気軽に聞けるし、エンターテインメントとして楽しませてくれる。ただ、やはりロッシーニに比べると、あと一歩の深い充実感が不足するのは事実だ。

 

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ベッリーニ「ノルマ」 
2003年 新国立劇場公演

 日本の新国立劇場での公演。ブルーノ・カンパネッラ指揮、東京フィル。私は、イタリア・オペラにはそれほど関心がなかったので、実演は見ていない。

 東京の新国立が高いレベルのオペラを上演していることがよくわかる。ノルマを歌うフィオレンツァ・チェドリンス、ポリオーネを歌うヴィンチェンツォ・ラ・スコーラ、アダルジーザを歌うニディア・パラシオス、オロヴェーゾを歌うジョルジョ・スーリアンの4人の外国人勢が本当に素晴らしい。とりわけタイトルロールのチェドリンスは熱唱。美しい声で、迫力がある。パラシオスとの二重唱は凄い。フラーヴィオの中鉢聡もクロティルデの鳥木弥生もまったく外国勢の遜色がない。

 演出はウーゴ・デ・アナ。かなりオーソドックスな演出だが、十分に楽しませてくれる。

 ただ、やはり東京フィルは、ドイツ、オーストリアの世界最高レベルのオケに聴き慣れた耳からすると、心細い音を出したり、処理がザツだったりといった箇所をところどころに感じる。が、世界の各地の一流劇場でのイタリア・オペラの公演と比べて特に劣るわけではなかろう。

 イタリア・オペラに対して、私はそれほど酔うことはないが、ベッリーニはときどき胸に迫ることがある。凛として気高いアリアの旋律が素晴らしい。ただ、オーケストレーションがうまくないのと、ストーリーが不自然なのが、やはりどうしても感動を妨げる。

 

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ベッリーニ 「カプレーティ家とモンテッキ家」 
2005年 ルチアーノ・アコチェッラ指揮

「ロミオとジュリエット」の物語の別ヴァージョンだが、イタリア・オペラに疎い私は、予備知識なしに見始めて、ロメオがいわゆるズボン役なのにびっくり! 「この女、誰だろう?」と思いながら見ているうち、しばらくしてロメオだと気付いた。

 このロメオ(クララ・ポリート)、とてもいい。十分にロメオに見えるし、声にも力がある。そして、パトリツィア・チョーフィのジュリエッタが、何といっても可憐で清純で、たおやかな歌いぶりでとても美しい。昨年の新国立でヴィオレッタを歌った歌手だが、私は別の用があって急に行けなくなり、知人にチケットを譲ったのだったが、今さらながら残念に思った。

ただ、指揮のアコチェッラとイタリア国際管弦楽団をどうも美しく感じない。常識といえるのかもしれないが、ドイツ系のオペラばかり聞いてきた人間からすると、「イタリア・オペラの歌手たちは層が厚くて、出てくる人出てくる人、みんな素晴らしいが、指揮とオケには感動しないなあ」とつい思ってしまう。

ベッリーニ特有のメロディは素晴らしい。ただ、やはり「ノルマ」や「夢遊病の女」「清教徒」などと比べると、聞かせどころなく終わってしまったという思いは禁じえなかった。

 

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ファリャ「はかない人生」(「はかなき人生」) ヴァレンシア歌劇場

 CDは聞いたことがあったが、映像は初めて見た。もちろん、実演も見たことがない。CDを聴いた時、まるでフラメンコみたいな節回しの歌だと思っているうち、本当にフラメンコが出てきて驚いた記憶がある。

 恋人にもてあそばれたと知ったジプシーの娘が、恋人と金持ちの女との婚礼の場に押し掛け、そこで命を失う物語。演出では、自ら命を絶つことになっている。

 情熱にあふれ、迫力ある音楽。いかにもスペイン的な音楽だが、ヤナーチェクと同じような激しい緊迫感がある。とりわけサルーを歌うクリスティーナ・ガラルド=ドマスの第二幕の初めの嘆きの歌が感動的。悲嘆がひしひしと伝わってくる。短いオペラだが、サルーが出ずっぱりで、まるでモノオペラの雰囲気(そういえば、このオペラ、三枝成彰さんのモノオペラ「悲嘆」を思わせるところがある!)。フランメンコを歌うエスペランサ・フェルナンデスも最高に素晴らしい。一時期、フラメンコに惹かれて、アントニオ・マイレーナやウトレーナ姉妹を感動して聴いていたが、久しぶりにフラメンコにしびれた。

 演出はジャンカルロ・デル・モナコ。赤い色調に統一し、秘めた暗い情熱を暗示する。スペインを表に出している。舞台上でしばしば天上扇がぐるぐる回っている。それが運命の回転を思わせる。

 指揮はロリン・マゼール。よく知らない曲なので、演奏についてどうこうはいえないが、緻密で中身の詰まった音楽は素晴らしい。

 ファリャという作曲家については、実はよく知らない。実演は、数年前、ファンホ・メナ指揮ビルバオ交響楽団で「三角帽子」組曲を聴いた驚いた記憶があるくらい。CD数枚と「ペドロ親方の人形芝居」のLDくらいしか持っていないような気がする。もう少し聞いてみたい気になった。

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コメント

先週末たまたま通りがかった目黒駅前のHMVの小さなクラッシックコーナーで何気にEMIの999円シリーズのCDを眺めていたらありました! 前から探していたハイドシェックのモーツアルトのPF協27番、後25,20,23も。
これまで27はバックハウス、あとはグルダ盤を愛聴してましたが、おそまきながら評判のハイドシェック盤をはじめてじっくり聴きました。本当に素晴らしい!
ピアノも抜群ですがパリ音楽院O.が素晴らしい。これは天下の名演
です。同じ頃このオケがクリュイタンスと録音したラヴェルの管弦楽全集のなかでホルンがやたらヴイブラードがかかっているのですが(たとえば亡き王女のパヴァーヌの出だしのソロなど)27番でもやはりかかっていました。どうやったらホルンであんなにヴィブラードがかけられるのか不思議。話が横道にそれましたが60年ごろのステレオ初期の
録音には名盤が実に多いですね。ちなみにカラヤンの新世界もブルックナーの8番も59年のEMI録音がベスト。

投稿: ラヴェル好きのおっさん | 2012年9月30日 (日) 20時54分

ラヴェル好きのおっさん様
コメント、ありがとうございます。
ハイドシェックのモーツァルトの協奏曲、そんなにいいですか。私はピアノに疎い人間ですので、あまり関心を持たずにきたのですが、今度、聴いてみることにします。以前、このブログでもハイドシェックを薦められました。
パリ音楽院だけでなく、戦後すぐのフランスのオケは金管に強いヴィブラートがかかっていることが多いですね。私もかなり違和感を覚えます。とはいえ、クリュイタンスのラヴェル、私も愛聴しています。

投稿: 樋口裕一 | 2012年10月 2日 (火) 07時42分

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