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東響、シュタインバッハーのヴァイオリンにしびれながらも、指揮に不満だった

 98日、東京交響楽団東京オペラシティシリーズを聴いた。指揮はマーク・ウィグルスワース。前半はアラベラ・美歩・ュタインバッハーのヴァイオリンが加わって、ブラームスのヴァイオリン協奏曲。後半はチャイコフスキーの「悲愴」。CDを何枚か聴いてとても魅力的だったので、シュタインバッハーを聴きたくてチケットを購入したのだった。

 シュタインバッハーは、私の席からは、細身の美少女に見えた。見慣れた写真よりはずっと外見も美しく見える。

ごく最初の音に失敗したせいか、第一楽章は乗りきれなかったが、その後、だんだんと調子が上がった。清潔でしっかりとしたヴァイオリンの音。小細工をしないで真正面から演奏して、それでいて素晴らしい。ただ、ブラームスの協奏曲については、私には指揮が邪魔しているように思えた。そのため、あまり感動できなかった。

むしろ、アンコールで弾いたイザイの無伴奏ソナタ第2番第1楽章が最高に素晴らしかった。技巧をひけらかすわけではない。むしろ、抑え気味。きわめて冷静で知的。透明で筋の通った音がびしっと決まって、一つ上の境地に人々を導くかのよう。情をかきたてるのではなく、知的に感動させる。ヒラリー・ハーンほど怜悧ではなく、もっと温かみがあるが、同じほど素晴らしいと思った。

ウィグルスワースという指揮者、名前も初めて聞いた。もちろん、演奏を聴くのは初めて。どうも私にはこの人の指揮は理解できない。味を感じない。

食材はあれこれ使っているし、量も多いが、少しも出汁がきいていなくてコクのない料理を連想した。指揮台での顔の表情を見ているとロマンティックに演奏しようとしているように見えるのだが、出てくる音に、少なくとも私はロマンティスムを感じない。どの楽章も同じような音の作りで、ブラームスとチャイコフスキーにもそれほどの違いがあるとも思えない。あれこれといじってはいるが、本質的に一本調子に感じてしまう。後半、かなり音響としてはまとまってきたが、音楽そのものは少しもおもしろくならなかった。正直言って、後半、かなり退屈だった。

東京交響楽団の音については、ザルツブルク、バイロイトでウィーンフィルやマーラー・ユーゲント・オーケストラなどの超一流のオーケストラを聴いた直後だったので、初めのうち、かなりザツさを感じた。だが、徐々に縦の線が合って来て、しかも音も美しくなった。後半、オーケストラとしてはなかなかの力演だと思った。しかし、やはり、指揮がこのようでは、私としては不満に思わざるを得ない。

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コメント

ヨーロッパの旅お疲れさまでした。ウィグルスワースはショスタコーヴィチでかなりの素晴らしい録音をしています。12番などは、ムラヴィンスキー以上のスケールの大きな演奏でかなり驚かされた記憶がありますが、この指揮者は手数の多い膨大な情報量の曲をいかにシンプルに表現し、かつ最大のエネルギーに転化するかということに極めて長けた指揮者という気がします。それだけに今回の曲目は「どうなのかなあ」という気がして、躊躇しているうちに聴き逃してしまいました。

そのためこれを読ませていただいて、「ああ、そうなったか」となんとなく納得してしまいました。

東響はミューザの天井崩落の影響がじわじわでてきているようで少々気の毒です。来年4月再開できるものの、音響の変化やホールの音がおちついてくるまでにさらに数年かかりますので、あと数年は厳しい状況が続くと思います。ここしばらくなんとか耐えてほしいものです。

投稿: かきのたね | 2012年9月 9日 (日) 02時15分

かきのたね様
コメントありがとうございます。
そうですか、ウィグルスワースはそのような指揮者でしたか。そう言われますと、とても納得できます。少なくとも、まったくもって「下手な指揮者」ではありませんでした。が、私の好きなタイプの指揮者ではないことも間違いなさそうです。
東響につきましては、前半は、らしからぬ音だとは思いましたが、後半、かなり持ちなおしたように思いました。健闘を期待してタイですね。

投稿: 樋口裕一 | 2012年9月10日 (月) 23時27分

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