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「ラクメ」と「ドン・キショット」DVD

 昨日まで息をつく暇もないくらい忙しかった。もちろん、コンサートやオペラに行って自分で忙しくしている面はあるが、それにしても、それ以外の時間はずっと仕事をしている。

 今日やっと切羽詰まった仕事がなくなったので、ゆっくりすることにした。自分に仕事を禁じて、オペラDVDを2本見た。

 

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レオ・ドリーブ作曲「ラクメ」 シドニー・オペラ・ハウス

 

このオペラは、以前、ボニング指揮、サザーランドがタイトルロールを歌うLDをもっていたが、今、入手できる映像はこれしかないのではありまいか。その意味ではきわめて貴重。

ただ全体的に、最高レベルというわけではない。オーケストラは合わせているだけといった雰囲気があって、あまり雄弁ではない。指揮はエマニュエル・ジョエル・ホーナク(Emmanuel Joel-Hrnak)も推進していく指揮ぶりではない。それに、音楽そのものも、やはりワーグナーやシュトラウスやヴェルディとは比べようもない。

歌手たちはオーケストラよりも粒がそろっていると思う。図抜けた人はいないが、ラクメのエマ・マシューズ、ジェラルドのアルド・ディ・トーロ、マリンカのドメニカ・マシューズも、ニラカンタのステファン・ベネットも清潔にしっかりと歌っている。が、やはり「健闘している」という感じが強い。「鐘の歌」は、美しい声でとてもいいが、サザーランドやCDによるデセイなどと比べると、やはり輝きがなくてぎこちない。しかし、そんなないものねだりをしても仕方がないだろう。

インドを舞台にしたオペラだが、エキゾチックな雰囲気があって、なかなか楽しめる。主役の二人は美男美女というわけではない(とりわけ、トーロはかなりの年齢に見える)が、映像を見ているうちに、十分にイギリス人将校とインド娘の恋に見えてくる。

 ともあれ、久しぶりにこのオペラを見て、楽しむことができた。

 

 

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ジュール・マスネ作曲「ドン・キショット」 モネ劇場

 マルク・ミンコフスキ指揮、ロラン・ペリ演出のモネ劇場で上演された映像。

 私にとっては、カラヤン時代に大活躍だったジョゼ・ヴァン・ダムを見るためのもの。この上演当時69歳だったという。もちろん、往年の知的で格調高くて奥深い美声を求めるほうが無理だろう。声はかすれ、音程もときとして怪しくなり、かつての豊かな声量もない。だが、見ているうちに、この役はこれでよいと確信してくる。なにしろ、老いたドン・キホーテの滑稽でありながらも高貴な姿を描くオペラなのだから。ほかの人では出せない味を出している。並みの69歳ではない。最後の死の場面は実にリアルで感動的。

 サンショ・パンサを歌うヴェルナー・ヴァン・メヘレンは忠実で愚直な感じが出ていてなかなかいい。納得できないのが、デュルシネを歌うシルヴィア・トロ・サンタフェ。ヴィブラートが強くて、私はかなり聴くのがつらい。しかも、エディット・ピアフのようなシャンソン的なヴィブラート。私には美しい声に思えないし、むしろ下品な感じがしてしまう。容姿も高貴な感じはしない。なぜこの人を選んだんだろう。

 指揮のミンコフスキは例によって生き生きとした表情の音楽に仕立てている。ただ、これまでのミンコフスキのようにいたずらにきびきびした感じでなく、優雅で繊細な部分も出そうとしているのがよくわかる。ロラン・ペリの演出については、実にしゃれていて、見ていて飽きない。

 

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コメント

はじめまして。オランダ在住のレイネと申します。(アムステルダムよりもブリュッセルに近いオランダ南部に住んでるので、行きやすいのはモネ劇場の方です)

さて、モネ劇場の『ドン・キーショット』DVDをご覧になられたとのこと。わたしは、TV放映で鑑賞しました。ファン・ダムの老いたドン・キホーテは妄想と現実がごちゃ混ぜでほろりとさせたり笑いを誘うハマリ役でしたが、さすがに年齢による歌唱の衰えは隠せません。彼のオペラ引退公演という歴史的意味合いが強いものと言えましょう。

>納得できないのが、デュルシネを歌うシルヴィア・トロ・サンタフェ。ヴィブラートが強くて、〔中略)なぜこの人を選んだんだろう。

当初の予定では、ジェニファー・ラーモアが歌うはずだったのですが、何かの理由でキャンセルしたようです。彼女だったら気品もあり、役の印象も相当異なったろうと思い、残念です。トロ・サンタフェは、男性的で力強さがあるちょっと個性的な声で、癖のある歌い方が耳に障ったり好き嫌いが分かれるかと思いますが、今回の役では下品で蓮っ葉な感じがかえって合っていたように思えました。それよりも、昨年のアムステルダムDNOでのヘンデル『デイダミア』(これもDVD発売されました)でのウリッセ役はミスキャストに感じました。好みの歌手ではありません。

モネの『ドン・キーショット』は、全体的にいかにもペリらしいファンタジー溢れる舞台装置と演出のプロダクションでした。

投稿: レイネ | 2012年10月25日 (木) 21時12分

レイネ様
コメントありがとうございます。そして、情報、ありがとうございました。
サンタフェというのは、そのような歌手だったんですね。いずれにせよ、私の好きな歌手ではなさそうです。とはいえ、おっしゃる通り、全体的にはとてもよい公演だったと思います。ファン・ダムの味のある歌をきけただけでも価値があります。
モネ劇場に行きやすいところにお住まいとは、うらやましい限りです。

投稿: 樋口裕一 | 2012年10月27日 (土) 23時16分

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