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ウィーン国立歌劇場公演「フィガロの結婚」は素晴らしかったが、興奮はしなかった

 1023日、神奈川県民ホールでウィーン国立歌劇場公演「フィガロの結婚」を見た。一言で言って、大変素晴らしかった。ただ、興奮するには至らなかった。

 何よりもオーケストラが素晴らしい。最高の音色。音そのものに感動する。こんな音でモーツァルトを演奏されたら、そりゃ感動するのも当然。

 歌手もみんなが高レベル。とりわけ素晴らしいのは、伯爵のカルロス・アルバレスと伯爵夫人のバルバラ・フリットリ。アルバレスは太い声で他を圧倒し、声の演技力も言うことなし。フリットリは実に美しい声で、第三幕のアリアはしみじみとして心の底から感動した。

そのほかは、スザンナのシルヴィア・シュヴァルツは最高に美しい声。声量はないが、ヴィブラートの少ない透明な美声は心に響く。フィガロのアーウィン・シュロットとケルビーノのマルガリータ・グリシュコヴァ、そしてバルバリーナのヴァレンティーナ・ナフォルニータもなかなかよかった。とりわけアンサンブルがとてもきれい。全員の声の質が実にピッタリと合っている。そのほかの役も誰もが満足できるレベル。ただ、ちょっとバルトロのイル・ホンは第一幕は少し不調だったかもしれない。しかし、第二幕以降は不満はなかった。

フリットリもシュヴァルツも容姿もよく、とても美しい。男性陣も登場人物が抜け出したかのよう。最近のオペラ上演は容姿の良い人がそろっている。見る側からするとありがたいことだが、これほどきれいな人たちでなくてもよいような気がする。容姿重視になりすぎているのではなかろうか。

 ペーター・シュナイダーの指揮についても、とてもよかった。自然体で無理がなく、美しく歌っている。ただし、もっと心が浮き立つようなところがほしいと思うところは何箇所かあった。が、もちろん、これはないものねだりだろう。ザルツブルクに何度か行くなどして、耳が贅沢になりすぎている自分を感じる。

 ジャン=ピエール・ポネルの演出については、まさしく定番中の定番。

 それにしても、「フィガロの結婚」を見るたびに思うが、本当によくできたオペラだ。音楽も素晴らしく、台本もおもしろい。落語と同じで、すでにストーリーもセリフもよく知っているのに、また笑ってしまう。

 満足して雨の中を帰った。

 もう少し書きたいことがないでもないが、仕事が忙しい。今日もこれからまた仕事をしなくてはならないので、ブログを書くのはこのくらいにする。

 

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コメント

残念ながら予算計上不可能につき、ウィーン国立歌劇場が初来日以来二回に一回は日本に持って来ている(今回は当初の予定にはありませんでしたが。もう定番化して、次々回もまたやって欲しいですね)「フィガロ」、僕は今回も見送りとします。
樋口先生は、1980年のウィーン国立歌劇場初来日の際にも、ベーム指揮の生でお聴きになっていらっしゃいますか(この時は大分芸短声楽科でツアーを組んで聴きに行っています。ぼくは当時緑丘の高校生でしたので行きませんでしたが、緑出身の、ツアーに参加した先輩からその話を聞かせてもらいました)?僕はテレビで観ただけですが、すでに枯れていたベームの指揮はともかく、超豪華な歌手陣の歌は堪能しました。考えてみれば、美男美女が揃っている訳でもありませんでしたが、一人一人の存在感が大きく、お互いの個性を尊重し合った見事なアンサンブルでしたね。尚、後にルチア・ポップさんが歌うコンサートで、バックのオケで、エキストラとして弾くという幸運に恵まれました。その時、ウィーン・フィルがフルトヴェングラー指揮で演奏した時クラリネットのウラッハがファゴットのエールベルがーに囁いた言葉が、そっくり僕のものにもなりました。「こんな感激が味わえて、その上報酬ももらえるなんて」。ポップの死はそれから数年後でしたので、惜しんだものです。
さて、樋口先生が生かテレビかで、ベーム指揮ウィーンのフィガロを聴かれたとすれば、どうしても無意識に比較してしまわれるのも無理ないと思います。

投稿: 崎田幸一 | 2012年10月24日 (水) 06時50分

いつも、楽しみにブログ拝見しております。昨夜は、会場でお見かけしました。素晴らしい一夜でした。いつもは高いところからオペラを見ていますが、昨日はかなり前の方でしたので、歌を十分楽しむことができました。と言って、これからは是非前方でみようという訳には行きませんが。
オペラやコンサートで、素晴らしいと思った時、良かったけれど 何となく腑に落ちないというようなとき、先生のブログを読んで、なるほどと納得できることが多々あります。これからも楽しみにさせていただきます。

投稿: kn | 2012年10月24日 (水) 10時02分

崎田幸一様
1980年前後は実は私の人生の中で最もつらい時期で、経済的な余裕がなく、「サロメ」と「エレクトラ」の文字通り、最も安い席をやっとの思いで買ったのを覚えています。「フィガロ」まで手が出ませんでした。ですから、「フィガロ」は、残念ながら、テレビでしか見ていません。先ごろ、DVDが発売になりましたので、それは購入し、とても懐かしい気持ちで見ました。あれは、歴史に残る名演でしたね。ナマで見なかったのを残念に思ったものです。そうですね、あれに比べると、今回は全体的にかなり小粒だったように思います。ポップはその後何度か聴きましたが、本当に素晴らしい歌手でしたね。同じ演奏に加わったなんて、うらやましい限りです。
私が実演を見て心の底から感激した「フィガロ」は、77年にパリのオペラ座で見たドホナーニ指揮のものでした。マーガレット・プライスの伯爵夫人、テレサ・ベルガンサのケルビーノもさることながら、ドホナーニの指揮が最高でした。
私はあの時のドホナーニの、颯爽として繊細で知的でわくわく感がある演奏を忘れられません。

投稿: 樋口裕一 | 2012年10月24日 (水) 20時38分

kn様
コメント、ありがとうございます。そして、私のブログを読んでいただき、ありがとうございます。オペラやコンサートから帰ってすぐに、文章を練ることもなく、思ったままを書くだけの雑文ですが、読んでいただいて、とてもうれしく思います。昨晩の「フィガロ」は、深く満足できるタイプの演奏でした。豊穣で歌にあふれ、幸せな気分に浸ることができました。
でも、会場で見られていると思うと、緊張します・・・

投稿: 樋口裕一 | 2012年10月24日 (水) 20時44分

今回の来日で、先に上演された「サロメ」を予習した中に、ドホナーニ指揮のCDとレーザーディスクがありました。いずれも名演ですね。この二つの他にも、ドホナーニが振ったCD等を聴くと、手堅く誠実な音楽づくりに感銘を受けます。生で聴い指揮者の一人ですが、もう高齢ですから難しいかも知れませんね。

投稿: 崎田幸一 | 2012年10月26日 (金) 05時39分

崎田幸一様
コメント、ありがとうございます。
ドホナーニはかなり好きで、私は何度か実演をききました。CDもかなり所有しています。ウィーンフィルを振ったメンデルスゾーンの交響曲全集、とりわけ第3番の演奏が、私がパリで聴いた「フィガロ」を思い出させます。私の大好きな演奏です。

投稿: 樋口裕一 | 2012年10月27日 (土) 23時20分

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