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ヤンソンス+バイエルンのベートーヴェン6・7番も素晴らしかった

1130日、サントリーホールでマリス・ヤンソンス指揮、バイエルン放送交響楽団のベートーヴェン・チクルス、ベートーヴェンの交響曲第6番・7番を聴いた。一言で言って素晴らしかった。

これまで1番から5番までを聴いてきたが、もちろん同じ路線。メリハリがあり、切れが良いが、わざとらしくなく、実に豊かで自然。正攻法で、小細工はまったくない。大袈裟に振りかざすのでなく、内的な喜びにあふれている。細かいところに実に神経が行き届いており、音楽がまったく停滞しない。ちょっと停滞しかけると、ヤンソンスがアクセルを少し踏み込んですぐに生き生きとしてくる。信じられないような知性で音楽を組み立て、オーケストラは即座にそれに反応していく。

6番「田園」は美しいという言葉しか浮かばない。管楽器がとりわけふくよかで素晴らしい。起伏に富んだドラマを展開して第五楽章ではまさに賛歌になる。幸せにあふれ、内的な喜びが充満する。

7番は、実に論理的な演奏だと思った。これ見よがしにリズムを強調するわけではない。ヤンソンスは、音と音の重なりあい、展開の妙に重点を置いているように思える。私はこれまでこの曲を聴くときには、躍動するリズムに酔ってきたが、今日はむしろ理詰めの音が次々と押し寄せ、それが見事に整理され、高揚に向かっていくのに感嘆した。論理的感動とでもいうべきものを感じた。

ただ、実を言うと、今日のコンサートの前半、ちょっと音楽に乗れずにいた。音楽がよくないわけではない。ただ、目の前にいる客二人が、スポンサーになっている企業関係の人らしく、音楽を聴いている人とは異なる動きをする。きょろきょろしている感じ。演奏中にプログラムをぱらぱらめくったりもする。まったく音楽と関係なく、しかも頻繁に頭が動くので、どうしても違和感を覚えた。

コンサートでの感動の一つに場内全体の一体感がある。最高度に感動した時というのは、コンサート全体が一つになって盛り上がった時だ。だから、目の前で一体感が殺がれると、どうも乗れなくなってしまう。その客を非難するつもりはない。はじめてコンサートに来たのだろう。それはそれで、クラシックファンからすると、とてもありがたいことだ。私ももっと寛容になりたいと思った。が、どうしても乗り切れなかった。

それと、私の視野に入るP席の前のほうの二人が演奏中に何度もおしゃべりをしているように見えた。もちろん、私にその話声が聞えるわけではないので、特に気にする必要はないのだが、ヤンソンスがそれに気づいたらどう思うだろうかと気になってしまった。P席の前のほうの列なので、ヤンソンスにも十分に見えるはずだ。

私は講演などをしている時、客がおしゃべりをしていると、とても気になる。おしゃべりを早くやめてほしいと願いながら講演を進める。大学の授業などでは、「静かに!」と一喝するが、大人のお客相手の講演などではそうもいかないので、困ってしまう。しゃべっている人は気付かれてないと思っているのかもしれないが、壇上にいると、一人ひとりのしゃべりが手に取るように見える。もしかしたらヤンソンスもおしゃべりに気づいているかもしれない、ヤンソンスが気を悪くしなければいいが、などと余計なことを考えているうちに、音楽に乗れなくなった。

とはいえ、ベートーヴェンの7番の第3楽章になると、これは「乗れない」などと言っていられなくなる。先ほど述べたような論理的な音の洪水に鳥肌が立ち始めた。第四楽章に至っては悪寒がしてきて、風邪でも引いているのではないかと思ったほど。が、どうやら感動の震えだったらしい。

終わってみれば、やはり大いに感動していた。素晴らしい指揮者に素晴らしいオーケストラ。音楽を聴く幸せを今日も心ゆくまで味わった。

 

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コメント

私も今夜の演奏会、行って来ました。素晴らしかったですね。ただ田園の時に多少管楽器が「残念」をしたところが気にはなりましたが。特に管楽器に歌わせる曲だから尚更だったと思います。ヤンソンスの解釈は仰る通りだと思います。何も足さない、何も引かない、ひたすら真面目に作曲者の意図を酌んで、と言うスタイルだと思いました。また、観客へ応える時も、P席にも配慮をしたりと、とても紳士的な対応に感心しました。

投稿: 通りすがりのクラシックファン | 2012年12月 1日 (土) 02時29分

通りすがりのクラシックファン様
コメント、ありがとうございます。
おっしゃる通り、管楽器、3,4回ほどとちったのを覚えています。が、「田園」はあまり好きな曲ではないというせいもあるかもしれませんが、私には十分に許容範囲でした。
それにしても、素晴らしい演奏でした。そして、第8・9は、それにも勝る凄まじい演奏でした。これからも何度も来日してほしいものです。

投稿: 樋口裕一 | 2012年12月 2日 (日) 01時22分

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