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ヤンソンス+バイエルンのベートーヴェン8・9に大感動

 121日、サントリーホールで、マリス・ヤンソンス指揮、バイエルン放送交響楽団のベートーヴェン・チクルスの最終日、交響曲第8番と9番の演奏を聴いた。これはもう言葉をなくすほどの素晴らしさ!! 

 前半は8番。これも圧巻だった。きりりと引き締まっていながらも、しなやかで躍動的。音楽をゆがめることは一切していない。大袈裟に自己主張することもない。ふつうに演奏しているのだが、そこに様々な工夫がなされ、極上の音楽が生まれてくる。そして、きわめて論理的。音が緻密に構築され、それが折り重なって一つの世界を作り出していく。第一楽章と第四楽章にとりわけ圧倒された。

 個性的な演奏を好む人は、ヤンソンスの指揮を物足りないと思うかもしれない。だが、私は、これぞ演奏の模範だと思う。音楽そのものに内在するものをすべて描き出している。どこかを恣意的に誇張するわけでもない。それでいて、最高の感動を引きだしている。神技としか思えない。

 後半は第九。これは8番に勝る凄さ。

 力むことなく、素直に始まる。3番や5番と同じように、それほど英雄的でも悲劇的でもない。おどろおどろしさもない。だから、「苦悩を経て歓喜へ」という感じはあまりしない。だが、音楽が生きているので、そのようなドラマ性が感じられなくても、音楽そのものにぐいぐいと引きつけられていく。

 第2楽章のティンパニの素晴らしさに驚嘆。躍動そのもの。しかも、楽しい。うきうきする。心が躍動する。この楽章の最後の音がびしっと決まって本当に心地よい。第3楽章は穏やかで幸せな世界が広がった。ホルンの音、そしてオーケストラのファンファーレが魂を昇華させる。まさしく至福の時。第4楽章は、まさに喜びに沸きたつ。

 ソプラノのクリスティアーネ・カルク、アルトの藤村実穂子、テノールのミヒャエル・シャーデ、バリトンのミヒャエル・ヴォッレ、みんなが実に素晴らしかった。

 最後はもう幸せいっぱい。高らかに笑顔で喜びをいっぱいに歌う。フルトヴェングラーなどを聴くと、打ちのめされ絶望した後の歓喜を強く感じるが、ヤンソンスは育ちがよいせいか、深い絶望の経験がないのだろう。だから、絶望の後の歓喜ではない。だが、そうであるがゆえに、いっそう屈託のない幸せが感じられる。まさしく等身大の歓喜。その分、実にリアリティがある。

 ベートーヴェン・チクルスを聴き終えて、最高に幸せだった。2010年の大晦日にベートーヴェンの全9曲をロリン・マゼールが指揮した「ベートーヴェンは凄い!」も凄まじかったが、それにも勝ると思う。ヤンソンスの正統派指揮の凄さを味わい、バイエルン放送交響楽団の実力を思い知った。むりに個性的にしなくても、無理矢理どの部分かを誇張しなくても十分に観客を感動させられることをヤンソンスは教えてくれた。

ともあれ、一生の思い出になるベートーヴェン・チクルスだった。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

過大評価講師。ナンバーワン。

投稿: | 2012年12月 2日 (日) 14時12分

投稿者様
私がヤンソンスを「過大評価」している「講師」だという批判でしょうか。
いくつかの点で誤解なさっているようですね。私の文章をきちんと読んでいただければ、そのような誤解をなさるはずはないのですが。
私はヤンソンスを過大評価などしておりません。そもそも「評価」などしていません。私は音楽好きの素人として、ヤンソンスの音楽に接した感動を書いたまででして、「評価」などというおこがましいことをする立場にはありません。
また、私は「講師」などではありません。ヤンソンスに関して、音楽に関して、「講師」はしておりませんので。
繰り返しますが、私はあくまでも素人として、音楽に感動したり、不満を抱いたりして、それをブログに書いています。それだけのことです。
「ナンバーワン」という言葉はありがたく受け取りたいところですけれども、そのようなわけで、私は単なる音楽好きですので、ナンバーワンもツーもないわけです。

投稿: 樋口裕一 | 2012年12月 3日 (月) 08時08分

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