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カンブルラン+読響の第九、見事!

 昨日(12月21日)、やっと大学の今年の授業が終わった。少しだけ時間的な余裕ができた。

 12月22日、東京芸術劇場でシルヴァン・カンブルラン指揮、読売日本交響楽団によるベートーヴェンの第九の演奏を聴いた。木下美穂子(ソプラノ)、林美智子(メゾ・ソプラノ)、小原啓楼(テノール)、与那城敬(バリトン)、合唱は三澤洋史の指揮による新国立劇場合唱団。

 第一楽章が始まった途端、あまりの速さに驚いた。CDではこのくらい速い第九の演奏をいくつか聴いた記憶があるが、実演では初めて。荘重さを大袈裟に作り出すのではなく、無駄なものをそぎ落とした、引きしまった現代的な第九といってよいだろう。曲の構造を浮かびあがらせ、アクセントを強くし、リズムを強調して音楽的なドラマを作り出す。

 私としては、あまりの速さとあまりのアクセントの強さに多少の抵抗を感じないでもないが、それはそれできわめて説得力がある。情緒に流れることなく、ぐいぐいと音楽を推進し、要所要所ではびしっと決める。しばしば感動に震えた。読響はこの速さにしっかりとついて、美しい響きで答える。第二楽章のティンパニも見事。

 先日、ヤンソンス+バイエルン放送響の圧倒的な第九を聴いたばかりだったが、今回もまた大いに感動した。まったく別のタイプの演奏だが、かつての巨匠風の壮大な作りを否定しようとしている点では共通する。

 ただ、第3楽章については、もう少しゆっくり演奏してくれるほうが、私としては感動すると思った。もちろん、カンブルランはもっと別の感動を求めようとしているのだと思うし、確かに説得力を感じる部分もあったが、やはり急ぎすぎの印象。

 第四楽章は、実に素晴らしい。バリトン独唱の始まる前の部分も、きわめて知的に処理して、不自然さは少しも感じさせない。歌手たちも堂々たる歌唱。とりわけ、与那城さんのバリトンは、世界の名歌手たちにまったく引けを取らないと思った。テノールは、高橋淳さんが健康上の理由でキャンセルになった。小原さんはとても立派に歌っていたが、高橋淳ファンの私としては高橋さんの歌を聴きたかった。最後は劇的に盛り上がった。

 第九の演奏会は、ふだんほとんどクラシックのコンサートに足を運ばない人がかなりいるようで、私の慣れているコンサートと雰囲気が異なる。演奏中に話をする人、プログラムをぱらぱらめくって読む人もたくさんいる。が、第九はそのような人たちも引き付ける力を持っている。最後には誰もが感動した様子を見せる。ただし、素晴らしい演奏のわりには大喝采にならなかったのは、きっとコンサートに慣れていない人たちが、あまりおおげさに表現しないせいだろうと思う。

 それにしても、年末の池袋は人であふれている。人込みをかき分けながら、家路についた。

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コメント

これはCDで出るみたいですね。

聴きに行けば良かったです(;_;)

投稿: スパゲティ | 2013年3月21日 (木) 09時35分

スパゲティ様
情報ありがとうございます。早速ネットで注文することにします。

投稿: 樋口裕一 | 2013年3月23日 (土) 08時27分

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