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「マイスタージンガー」のグラインドボーンのDVDのことなど

 久しぶりの休み。会議や推薦入試やAO入試、オープンキャンパスなどで休日出勤も続いていた。大学の授業のない日もあったが、そんな日も何かしらの出かける仕事が入って、ゆっくりできなかった。20日ぶりくらいの休み。今日は身体を休める。

 昨日は衆院選挙だった。選挙結果については、私の望む方向にはならなかったが、やむを得ないと思う。この3年間の民主党のマニフェスト違反や言葉をなくすような無能ぶりは、国民の信頼を失って当然だと思う。今回の選挙の結果を受けて、自民党が自信を持ちすぎて右傾化するのを恐れるが、とりあえず日本がしばらく安定するのは好ましいことだろう。その間に、民主党もこの3年間を反省して、現実的な力をつけてほしいものだ。次の選挙まで、民主党が健在だといいのだが・・・。

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 そんななか、しばらく前に購入したまま見る機会のなかったDVDを見た。グラインドボーン音楽祭2011年の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」。

何よりもハンス・ザックスを歌うジェラルド・フィンリーが圧倒的。歴史に残る当たり役ではないか。太くて美しい声で、しかも実にしなやか。表現力豊かで、喜怒哀楽のある人間的な要素が浮かび上がる。私は、昨年のザルツブルク音楽祭で、フィンリーの歌うドン・ジョヴァンニを見て、凄味のある歌と演技に驚嘆したが、ザックスにおいても同じことが言える。

これまでフィンリーはワーグナーを歌ったことがないという。が、これを聴くと、ザックスだけでなく、もっとヴォータンも歌ってほしいと思う。

それに比べるとほかの歌手たちはかなり小粒といえるかもしれない。ベックメッサーを歌うヨハネス・マルティン・クレンツレは芸達者で歌も実にいい。ヴァルターのマルコ・イェンチュ、ダヴィットのトピ・レティプー、エファのアンナ・ゲイブラーは容姿は理想的だが(ただ、ちょっとイェンチュは少し太りすぎ)、歌は弱い。実演を聴くと、もっと強くそれを感じるだろう。

指揮のヴラディーミル・ユロフスキはきびきびした指揮ぶり。ちょっとメリハリが付きすぎて、ワーグナーらしいじっくりとしたうねりがあまり感じられない。そのため、前半は違和感を覚えたが、だんだんと納得していった。「トリスタンとイゾルデ」や「リング」でこのようにされると困るが、この楽劇はこれでよい。オケのコントロールに関しては、私は大いに満足。

デイヴィッド・マクヴィカーの演出はきわめて穏当なもの。奇をてらったところはまったくない。時代をワーグナーが少年時代を過ごした19世紀初めに移しているとのことだが、違和感はない。ベックメッサーがちょっと大柄なシューベルトのように見える。人物の表情や集団の動きが実に計算されており、見ていて楽しいし、美しい。これこそ王道の才能ある演出といったところだろう。フィンリー以外の歌手はかなり弱いとは言えるが、演劇として見たところでは、しっかりと人物として動いているので、特に不満はない。一言で言って、とても満足できる映像だ。

ところで、ワーグナーつながりで少し付け加える。

NHK-FMの年末のバイロイト音楽祭の全演目放送にゲストとして呼ばれた。解説は音楽評論家の広瀬大介さん。私が学生のころ、毎年、柴田南男先生の独特の語りによる解説の入るこの番組を何よりも楽しみにし、必死の思いで録音しては繰り返し聴いたものだ。その意味で、あれから40年ほどたって、この番組にかかわれたことは、内心、実にうれしい。

すでに収録を終え、26日の放送予定。全体的には、広瀬さんのおかげで楽しく話ができたのだが、「あれを言うべきなのに、言わなかった」「質問された時、うろたえてしまって、バカなことを言ってしまった」ということがいくつもある。でも楽しかったから、まあいいか・・・。

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コメント

こんにちは
昨日の放送(12/26)を聞きました。
演奏もティーレマン指揮ということで期待大で聞きましたが、
なにより演奏終了後のバイロイト談義を楽しく拝聴させていただきました。
今後、DVDで発売されるであろう「さまよえるオランダ人」をじっくり楽しめそうです。

投稿: こうちゃん | 2012年12月27日 (木) 11時23分

こうちゃん様
コメント、ありがとうございます。
広瀬さんとの話を楽しんでいただけたとしますと、とてもうれしく思います。もちろん、広瀬さんがとても的確に話を向けてくれたおかげでうまく話ができたのですが。
きっと「オランダ人」の映像が近いうちに発売されると思います。ぜひご覧になってください。私はこれはこれからしばらくバイロイトの売り物の一つになってほしいと思っています。

投稿: 樋口裕一 | 2012年12月28日 (金) 08時33分

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