ジンマン+グリモー+N響のブラームスにちょっと欲求不満
1月17日、サントリーホールで、NHK交響楽団定期公演を聴いてきた。指揮はデーヴィッド・ジンマン。前半はブゾーニ作曲の「悲しき子守歌」とシェーンベルクの「浄められた夜」。後半は、エレーヌ・グリモーが加わってブラームスのピアノ協奏曲第2番。私としてはちょっと欲求不満。
ブゾーニの曲は、実はかなり退屈だった。録音も含めて、この曲を聴くのは初めてだが、私はどうもこういう曲はかなり苦手。暗くて、とりとめがない感じがして、よくわからなかった。
「浄められた夜」は素晴らしかった。少なくとも、私と波長がぴったり合った。私は前から3列目だったが、弦の精妙な重なりがしっかり聞こえて、実に素晴らしい。ジンマンの指揮はかなり機能的な感じがするが、機能的であればあるほど、この曲は官能的になる。妙に思い入れをしていない様子なのに、ぞくぞくするようなエロティシズムがある。N響メンバーの音の重なりも実にいい。音に酔っているうちに、あっという間に曲が終わった。
後半はブラームス。不思議なブラームスだった。重心の低い、低音を強調したブラームスなのだが、まったくロマンティックではなく、あっさりと流れていく。ふつう、ブラームスの低音を強調すると、重くて思い入れの強いロマンティックなブラームスになりがちなのだが、ジンマンの指揮は、低音が強調されているのに、少しも重くない。
グリモーのピアノも、重くならず、ロマンティックになりすぎず。第一楽章と第二楽章は、スタッカート風の音の切り方にちょっと違和感を覚えたが、ともあれ、かなり満足して聴いていた。ひとつひとつの音が美しく、盛り上がりもとてもよかった。ところが、第三楽章以降、どうもあっさりしすぎて、少しも盛り上がらなくなった。第三楽章はロマンティックに演奏しないと、存在の意味がないように思えるのだが。第四楽章も、少しも燃焼しないまま終わった。何が起こったのか。もしかしたら、このような音楽を意識的に作ろうとしたのか。どうもよくわからない。私には、第三楽章以降、突然、音楽がちぐはぐになり、息が合わなくなったように思えた。
ともあれ、私としては今日の最大の収穫は「浄められた夜」だった。それについては、とても満足。
ところで、一昨日(1月15日)、銀座の東劇でMETライブビューイング「仮面舞踏会」を見た。グスタヴのマルセロ・アルヴァレスの声に威力に圧倒された。レナートのディミトリ・ホヴォロストフスキーとウルリカのステファニー・プライズの歌の迫力にも驚いた。アメーリアを歌ったソンドラ・ラドヴァノフスキーもとてもいい歌手だと思った。指揮のルイージもとてもいい。ともあれ、満足。ただ、どうも私はこのオペラにはそれほどの感動を覚えない。今さらこのようなことを言うのも野暮なのだが、ストーリーに無理があるように思えてしまう。文学部出身者の性(さが)というべきか、どうもオペラのストーリーに関して寛大になれない・・・
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