マウロ・ペーターのテノール、そしてラ・フォル・ジュルネのこと
1月28日、武蔵野市民文化会館小ホールで、マウロ・ペーターのテノール・リサイタルを聴いた。曲目は、シューベルトの「美しき水車小屋の娘」。ピアノ伴奏は斎藤雅広。
チラシに「ヴンダーリヒの再来」とあったので興味をひかれたのだった。かなり若い歌手。ヴンダーリヒほどではないにしても、確かにみごとな美声。声も伸びているし、声のコントロールも素晴らしい。まれにコントロールが崩れるが、この若さでこのくらいの失敗は当然だろう。
端正な容姿というところもヴンダーリヒを思わせるが、ヴンダーリヒのような知的な雰囲気はない。ペーターはかなりの大男で、ちょっと素朴な印象を抱いた。
音楽的には、あと少し成熟がほしい気がした。しっかりとコントロールして、とても良い声なのだが、少なくともヴンダーリヒにはもっと凄味があった。第7曲「いらだち」のように激しい曲は実の率直な表現で説得力があるのだが、次の「朝の挨拶」のようなしっとりした曲で、それほど強い感銘を与えることができない。もう少しこのような曲で深い感動を与えられるようになったら、世界最高の歌手になるだろう思った。
全体的に、素晴らしい歌手だが、ヴンダーリヒやフィッシャー=ディスカウの域にはまだ達していないのも間違いなさそう。とはいえ、これからが楽しみ。
それにしても、武蔵野市民文化会館に登場する歌手たちのレベルの高さに驚嘆する。常にあまり名前の知られていない人でありながら、聞いてみると、ほとんどが最高レベル。プロデュースしている栗原一浩さんの見る目の確かさに改めて脱帽。
ところで、そろそろナントのラ・フォル・ジュルネの季節。我が家に、今年の案内が届いた。知人がナントに向かって出発するというニュースも聞いた。
多摩大学で入試委員長の大役を引き受けていなかったら、ぜひともフランスに出かけたいところだが、そうはいかない。このところ、入試業務に明け暮れている。
今年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンのテーマは「パリ、至福の時」とのこと。今回取り上げられる中で、ベルリオーズ、サンサーンス、フォーレ、ラヴェル、サティ、プーランクは好きな作曲家なので、とても楽しみ。コルボのフォーレ「レクイエム」をまたぜひ聴きたい。
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