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山本裕康、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番と第5番は素晴らしかった

 2月9日、九段下の寺島文庫カフェ、みねるばの森で、多摩大学樋口ゼミ主催のコンサートを開いた。曲目は、山本裕康のチェロによるバッハの無伴奏チェロ組曲第1番と第5番。最高の演奏だった。

 みねるばの森は、多摩大学の寺島実郎学長が運営するカフェだ。私は、はじめてこのカフェを見たときから、ここで無伴奏曲のコンサートを開き、ここを無伴奏の殿堂にしたいと思った。それができたら、どんなに幸せだろうと思った。

 バッハをはじめとする無伴奏曲は、ホールよりも、小さな室内に適している。親密な空間で楽器を目の前にして聴いてこそ、無伴奏の醍醐味を味わえる。寺島学長の運営する知の殿堂は、まさしくバッハの無伴奏の演奏にふさわしい。そもそも、ミネルヴァとは、知の女神にして音楽の創造者でもある。

 この場所が無伴奏の殿堂になり、毎週のように無伴奏曲が演奏され、音楽好きの人々がここに集まって、くつろいだ空間でバッハを聴く。ここに来たら、バッハの無伴奏曲が最高の演奏で聴ける・・・そんな評判のできるカフェ。それを夢見た。そして、それを私のゼミ活動の一環としてできたら、どんなに良いだろうと思った。

 実を言うと、多摩大樋口ゼミでは、学生と相談して、クラシック音楽のコンサートを行っている。が、今回は、ゼミ生に手伝ってもらうだけで、私の夢を推し進めることにした。ゼミ生には、私の夢の実現を手伝ってもらうことにした。

 最初の無伴奏コンサートにぜひ演奏をお願いしたいと思ったのが、山本裕康さんだった。山本さんには、2009年に一度、無理を言って多摩大学で演奏をお願いしたことがある。その時、バッハの無伴奏組曲の第一番を弾いていただき、あまりの素晴らしさに感動した。CDも聞かせていただいたが、それも圧倒的だった。

そこで、私の夢を実現するべく、おそるおそる山本さんに私の夢をお話しした。すると、うれしいことに快諾を得たのだった。こうして、今日、私の夢である、山本さんによる無伴奏組曲のコンサートが実現したのだった。

 予想にたがわぬ素晴らしい演奏だった。ゆったりとしたふくよかな響き。お人柄を示すような心が広く、深みにあふれた音。一つの音にもさまざまな音色が聞き取れる。バッハの曲は、その人のすべてが現れる。抑制された中で高揚し、シャイで心やさしくて、まじめでしかも情熱的な山本さんが聞こえてくる。

 狭い空間なので、目の前でチェロが鳴り、チェロの音に包まれる。観客の全員がチェロと一体になる。

 第1番も素晴らしかったが、私はどちらかというと、これまでちょっと苦手意識を持っていた第5番に非常に強くひかれた。

 この曲は、重々しくて暗いと思っていたのだが、山本さんが演奏すると、そうはならない。むしろ、人生の深みとやさしさを感じる。人生の悲しみを抱えながら、それを抑えて高みを目指そうとする精神が感じられる。

 実に感動した。それはその場に居合わせた40人ほどの客全員も同じだったようで、終演後、多くの人が興奮して感動を口にしてくれた。

 ゼミ生たちもよく働いてくれた。

 今日はともあれ、私の夢の第一歩が実現した日だった。が、これで満足してはいられない。みねるばの森を無伴奏の殿堂にするべく、努力したい。もっと多くの人に無伴奏曲を味わっていただきたい。

 なお、次回、4月20日(土)には、同じ山本裕康さんの演奏で無伴奏曲の2番と6番、6月22日(土)には3番と4番をお送りする。かなり席が埋まっているが、あと少し余裕がある。ご希望の方、ご連絡をいただきたい。

 チケットの予約申し込みは、以下に。 tamazemi@gmail.com

 

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コメント

 昨日のバッハの無伴奏チェロ組曲の演奏会には本当に感動しました。まじかでチェロの独走を聴くのは初めてでしたが、山本裕康さんのチェロ演奏には熱い情熱が感じられて引き込まれてしまいました。第1番、第5番とも素晴らしい演奏でしたが、少し長めの軽食休憩後は自分の聴く気持ちが散漫になるかと懸念したところ、どうしてどうして休憩後の5番の重厚な演奏には圧倒されました。聴いてる方々も微動だにせず演奏に集中してる様子がうかがわれさすがと感じ入った次第です。“チェロの聖書”といわれるこの組曲のシリーズ、今後が楽しみです。

投稿: 佐藤勝宏 | 2013年2月10日 (日) 09時44分

佐藤勝宏様
山本裕康さんのコンサートにおいでくださり、ありがとうございました。アンケート結果を見ましても、ほとんどのお客様に心の底から満足いただけたようで、とてもうれしく思っています。狭い空間であるがゆえに、まさしく楽器と一体となり、演奏者と一体になることができたと思います。私自身、とても満足し、感動しました。私自身、次回がとても楽しみです。

投稿: 樋口裕一 | 2013年2月11日 (月) 11時32分

素敵な時間を過ごさせていただきました。
あんな間近でぎゅうぎゅうのお客さんを前にしても、やっぱりいつもと変わらない山本さんの誠実さが伝わってくる演奏でした。
こういう小さな空間でこそ、と樋口先生がおっしゃったとおり、チェロの音色が震動となって床から感じられた時は、鳥肌が立ちました。
5番がこれほど聴きごたえがあるなんて!今まで特別に心に留めてはなかったので、感動と驚きとでうろたえてしまうほどでした。オリジナルの調弦で、とのこと。もしかしたら、とても貴重な演奏を聴かせていただいたのでは?
次の演奏会を楽しみに待ちたいと思います。

学生さんたちが、こちらが戸惑うくらい真面目に一生懸命なのにも、感心しました。お食事もひとりひとりに準備していただいて、「まあなんて手間の掛かることを」と思いましたが、初めて会ったお隣の方と楽しくおしゃべりしながら頂くのには、よいですね。ありがとうございました。
どうぞよろしくお伝えください。

投稿: 平田 | 2013年2月11日 (月) 12時07分

6月22日のチケット申し込みのメールを文中のメルアドに送りましたが届いておりますでしょうか?  山本氏のバッハを是非聴いてみたいと思っております。
11日にスダーン東響の海を聞きました。東響の演奏はここのところ
大変素晴らしくこの日も木管(特にオーボエとフルート)が素晴らしく70年の大阪フェステイバルで聞いたパリ管以来感動しました。
あとラフォルジュルオネのプログラムが発表になりましたが
仏物の好きな小生にはどれに行くか迷ってしまう三日間になりそうです。

投稿: 明田重樹 | 2013年2月16日 (土) 17時45分

先連と行き違いになりましたが確かに6月22日の切符の確認をいただいておりました。失礼しました。昔NJPのコントラバス奏者(故人)のご自宅でよく室内楽の集まりがあり小さな空間で聞く室内楽に大変リラックスした記憶あり。6月のバッハも楽しみにしております。(当方はシュタルケル盤を愛聴しています)

投稿: 明田重樹 | 2013年2月16日 (土) 17時53分

明田重樹 様
コメント、ありがとうございます。予約確認の連絡が届いておりましたこと、安心いたしました。
私も、シュタルケルの演奏によってバッハの無伴奏チェロ組曲になじみました。そのせいか、今に至るまで、カザルスの演奏にも、それほど心動かずにいます。次回の山本さんの演奏をぜひお楽しみください。そして、私も、ラ・フォル・ジュルネのプログラムを見て、とても楽しみにしております。

投稿: 樋口裕一 | 2013年2月19日 (火) 07時13分

6月のバッハ楽しみにしております。ところで昨日小澤氏が8月のサイトウキネンフェステイバルでラヴェルの子供と魔法でカムバックとの報道がありました。このチケット取得は相当難易度が高そうですが是非聴きに行きたいものです。昔小澤・NJPで子供と魔法を聞いたことがあります。CDではラトルとか新しい録音も出てきてますがやはり50年代のステレオ最初期のアンセルメ盤がベストです。
以前ラヴェル好きのおっさんで投稿したことがありますが今後はラヴェル愛好家の明田ということでよろしくおねがいします。また地域に根ざした上質のコンサート企画に賛同し、今後のますますの発展をお祈りいたします。

投稿: 明田重樹 | 2013年2月20日 (水) 21時40分

明田重樹 様
コメントありがとうございます。そうですか。「ラヴェル好きのおっさん」さんでしたか。
アンセルメの「子どもと魔法」はきいたことがありません。私はずっとドイツものばかり聞いており、ラヴェルに関心を持ったのはかなり最近ですので、すでにアンセルメの声望は落ちていました。
山本さんのバッハをお楽しみになってください。

投稿: 樋口裕一 | 2013年2月23日 (土) 08時04分

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