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最近聴いて驚嘆したCD ヤノフスキの「タンホイザー」など

 やっと大学の仕事がひと段落して、少しだけ時間が取れるようになったので、購入したまま聴けずにいたCDを何枚か聴いた。ほとんどがワーグナーなどの重いオペラのCD。大好きなオペラであるにもかかわらず、いや、むしろそうであるからこそじっくり聴きたいと思って、その時間が取れずにいるうちに、こんなに遅くなってしまった。しばらく前からのものも含めて、いくつか紹介しよう。

 

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「タンホイザー」 マレク・ヤノフスキ指揮、ベルリン放送交響楽団。

 昨年から立て続けて発売されているヤノフスキによるワーグナー全曲シリーズの一つ。私はまだこのシリーズを一枚も聴いていない。まずは「タンホイザー」を聴いてから、よかったらシリーズをすべて購入しようと思っていた。かつてヤノフスキが指揮した「指環」全曲のCDはとても良い演奏だった。ちょっと淡白すぎるし、歌手にちょっと弱い人がいるので、最も好きな「指環」のCDというわけではなかったが、大いに気に入った一つだった。だから、もちろん今回も期待して聴いた。が、その期待をはるかに上回る演奏。前回の録音から一回りもふたまわりもヤノフスキは大きくなっていた!

 これは本当に素晴らしい演奏。オーケストラのなんと雄弁なこと。音が生き生きしていてまさしく鮮烈。音が完璧にコントロールされて、見事に音が立ち上がってドラマを作っていく。若々しく、ドラマティック。引き締まっていて、芯が強く、スケールも大きい。揺るぎのない明確な輪郭を持つ。ちょっとエロスの不足を感じないでもないが、ないものねだりをしても仕方がないだろう。が、オケに色気が少し不足する分、ヴェヌスを歌うマリーナ・プルデンスカヤとエリーザベトを歌うニーナ・シュテンメに色気があるので、まったく不満はない。それにしても、シュテンメは実に美しく、女性的でしかも声に芯がある。ヘルマンを歌うアルベルト・ドーメン、ヴォルフラムを歌うクリスティアン・ゲルハーハーも文句なし。昨年のバイロイトでのトリスタンではまったく声の出ていなかったロバート・ディーン・スミスもとてもいい。そして、何よりも録音の素晴らしさも特筆もの。

 

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「トリスタンとイゾルデ」 マレク・ヤノフスキ指揮、ベルリン放送交響楽団。

「タンホイザー」があまりに素晴らしかったので、もう一つ買ったままになってまだ聞いていなかった「トリスタン」も聴いてみた。

 これも素晴らしい。「タンホイザー」と同じように、引き締まった音楽づくり。緻密に音を重ねて、見事にコントロールされた演奏。胸のすくような音の躍動がある。歌手もそろっている。とりわけ、イゾルデを歌うシュテンメが圧倒的。女性的な色気を保ちながらも強靭。理想的なイゾルデといえるだろう。スティーヴン・グールドのトリスタン、クワンチュル・ユンのマルケ王、ヨハン・ロイターのクルヴェナール、ミシェル・ブリートのブランゲーネも文句なし。

ただ、ヤノフスキの指揮はかなり腰の据わったものなので、「揺らぎ」や「たゆたう」というのがこのオペラの最大の特質だと考えている私からすると、少し違和感がある。第一幕は船の中の場面なのだから、もっと揺れがあってよいし、第二幕以降も、心の揺らぎがあってよいような気がする。が、もちろん、これはこれで要所要所には素晴らしい効果を発揮する。何度も魂の震える個所があった。

未購入だったヤノフスキのワーグナーのシリーズをすべて注文した。このシリーズは実に楽しみ。

 

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「ドン・ジョヴァンニ」 ヤニック・ネゼ=セガン指揮、マーラー・チェンバーオーケストラ

 これも素晴らしい。ともあれ、歌手たちがすごい。ダルカンジェロのドン・ジョヴァンンニ、ダムラウのドンナ・アンナ、ディドナートのドンナ・エルヴィラは言葉をなくすほど。いずれも圧倒的な存在感。まさしく現代を代表する名歌手たちだ。ピサローニのレポレッロも、ヴィラゾンのドン・オッターヴィオも、モイカ・エルトマンのツェリーナもそれに劣らぬ素晴らしさ。大スター達による圧倒的な声の饗宴とでもいおうか。

だが、私がそれにもまして感動するのは、ネゼ=セガンの指揮。昨年のザルツブルク音楽祭でのこの指揮者の演奏する「ドン・ジョヴァンニ」を聴いて驚嘆したのだったが、その時のことを思い出した。悪のエネルギーが渦巻き、まさしくディオニュソス的な激しさがある。表面だけを美しく整えるのではなく、中身が詰まっている印象。ある種の凄味がある。内的な深いドラマが渦巻いている。ぐいぐいと引き込まれて、最後まで聴いた。

 

 ほかにも心ひかれたCDが何枚かあった。それについては、明日か明後日にでも書きたい。

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