ヨゼフ・シュパチェクのヴァイオリンに魂を震わせた
3月4日、武蔵野市民文化会館でヨゼフ・シュパチェクの無伴奏ヴァイオリン・リサイタルを聴いた。素晴らしい演奏だった。
1986年生まれというから、まだ20代。チェコフィルのコンサートマスターに最年少で抜擢されたという。
前半はバッハの第1番のパルティータとイザイのソナタ第2番、後半には、クライスラーの「レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース」、プロコフィエフの無伴奏ソナタニ長調、イザイのソナタ第5番、最後にミルシテインの「パガニーニアーナ」。
前半と後半のイザイの2曲のソナタがとりわけすごかった。超絶技巧でバリバリと弾きまくる。細身の実に美しい音。しかし、技巧をひけらかすというよりも、端正で知的。構成がしっかりして、崩れることがない。バリバリ弾きまくるように見えて、音楽の真実に肉薄していく。前半のイザイの2番は「怒りの日」がたびたび出てくる曲だが、まさに聴く者を震撼させるかほどの凄味がある。いや、もっと正確に言うと、少しも誇張せず、ただ端正に弾きながら、そこに凄味がにじみ出てくる。これは本当にすごいことだ。後半の5番も美しく躍動する。
アンコールはチェリスト(この人も素晴らしかった)が加わって、ヘンデルのパッサカリア。圧倒的な音楽性。
私の大好きなネマニャ・ラドゥロヴィチが異端の典型だとすると、シュパチェクは正統の典型だが、同じほどに圧倒的な力がある。
これほどすばらしいと、音楽の素人としては、どのように形容してよいのかわからない。ともあれ、感動し、震撼させられ、心を奪われ、満足した。
このところ、大学の仕事で猛烈に忙しく、気苦労が絶えない。しばしの間、現実を忘れてヴァイオリンの音に酔うことができた。
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