ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013年初日 素晴らしい演奏の連続
5月3日。2013年、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン初日。大変充実していた。夜中の11時過ぎまでコンサートを聴いていたので、すでに真夜中。ごく簡単に初日のコンサートの感想をまとめる。
・ファニー・クラマジランのヴァイオリン、広瀬悦子のピアノでフォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番。プーランクのヴァイオリン・ソナタ、サン・サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソ。
午前中のコンサートなので、調子が上がらない様子。それでも、徐々に調子が上がってきた。フォーレの第1楽章後半は若々しくエネルギッシュ。ただ、プーランクについては、この遊び心をどう処理してよいかわからずにいるように感じた。
・トリオ・ヴァンダラー ショーソンとラヴェルのピアノ・トリオ。
見事な演奏。ショーソンのトリオはなまでは初めて聴いた。おもしろい曲。ラヴェルも実にいい。エネルギッシュで、しかもきわめて繊細。文句なし。
・竹澤恭子のヴァイオリン、萩原麻未のピアノで、サン・サーンスの「ハバネラ」「死の舞踏」、フランクのヴァイオリン・ソナタ。
すさまじい熱演。「死の舞踏」は鬼気迫る。まるで魔女のような姿勢で弾く。その演出もおもしろい。フランクのソナタも熱のこもった素晴らしい演奏。とりわけ第二楽章は圧倒的。感動した。ピアノも初々しくていい。
・「フォーレとその弟子たち」と題されたコンサート。フランソワ・サルクのチェロ、ユーリ・ファヴォリンのピアノ。フォーレの弟子ラドミローのチェロ・ソナタ、フォーレのチェロ・ソナタ第一番。「夢のあとに」。
かなり若いチェリストとピアニスト。ただ、曲についてはあまりおもしろいと思わなかった。実を言うと、私はフォーレの室内楽の半分くらいはかなり退屈に感じる。とりわけ、チェロ・ソナタの第1番と弦楽四重奏曲は、なんだかよくわからない。とりとめのなさを感じる。そんなわけで、あまり感動できなかった。
・アドリアーナ・ソアレのソプラノ、フィリップ・カサールのピアノでマスネ、ビゼー、フォーレの歌曲。最後にラヴェルの「シェエラザード」。
素晴らしい演奏。若い歌手だが、実にいい。音程がしっかりしていて、声もきれい。歌い回しも素晴らしい。ピアノも音がクリアで、ぴったりと歌に寄り添っている。最高に楽しめた。
・工藤重典のフルート、長崎麻里香のピアノで、ルーセルの「笛吹きたち」、フォーレの「幻想曲」、サン・サーンスの「ロマンス」ドビュッシーの数曲。そして、プーランクのフルート・ソナタ。
プーランクを目的にこのコンサートにした。とてもよかった。遊び心はあまり表に出ない、生真面目な演奏。だが、それはそれでかなり説得力がある。プーランクの、実はかなり内省的な面を強調した演奏。心の襞がわかる。最高に満足。
・ムジカ・ニゲラの演奏、根本雄伯の指揮。ラヴェルの「ステファヌ・マラルメの3つの詩」。プーランクの「黒人狂詩曲」。ラヴェル「シェエラザード」。歌手は、ソプラノのジェニファー・ヴェネン、バリトンはインド人のヴィクラント・スブラマニアン。
弦楽四重奏に管楽器が数人入った編成。とてもおもしろい。根本の指揮も生き生きとしていてとてもいい。ただ、ソプラノがちょっと音程が不安定に感じた(もしかしたら、ヴィブラートが強いために、そう感じたのかもしれない)。プーランクという作曲家にこれまで以上の魅力を感じた。とてもおもしろい曲。ふざけているようでいて、実に知的。
・モディリアーニ弦楽四重奏団の演奏。ラヴェルの弦楽四重奏曲。サン・サーンスの弦楽四重奏曲第1番。アンコールはドビュッシーの弦楽四重奏曲の第3楽章(だと思う)。
すごい演奏。びしっと音程が合い、えも言われぬアンサンブルで繊細で美しく生き生きとした音楽を展開する。ややもするとドイツ的になりがちなサン・サーンスの音楽が、完璧にフランス的な音楽になる。だが、そうでありながら、構成がしっかりしており、メロディ線が明快。私は、エベーヌ弦楽四重奏団とともに、現在最高のカルテットだと思う。しびれた。
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コメント
初日の竹澤恭子、萩原麻未は本当に良かったですね。フランクは最高でした。ピアノが直前に聞いたチェロソナタ(プーランクからフランクに変更)のピアノと雲泥の差で最高に良かった。感情、テクニック最高で日本の若きアルゲリッチという感じでした。ところで今日の夕刻のホールAでのラムルーO.もかなり良かったですよ。本当にフランスそのもの。ヤルヴィ・パリ管よりはるかにラヴェルの音がしてました。最後サプライズで佐渡豊が出てきてボレロを振りましたがこれもまたメチャメチャ名演でしたね。明日も朝の篠崎和子の序奏とアレグロから夜のコルボのフォーレクまで目白押しです。この音楽祭は是非長く続けてほしいものです。
投稿: 明田重樹 | 2013年5月 4日 (土) 23時14分
明田重樹 様
コメント、ありがとうございます。
佐渡さんのボレロ、私も聞きました。とてもよい演奏でした。ラムルー管弦楽団は、フランスのナントでも聞いたのですが、とてもフランス的な雰囲気のオーケストラでした。佐渡さんの時代に昔の栄光をかなり取り戻したのかもしれません。
ただ、昨日の私の最大の「サプライズ」は、グノーのレクイエムでした!
投稿: | 2013年5月 5日 (日) 08時58分