« テストの花道、広島のことなど | トップページ | 京都5日目 »

デュヴィヴィエ監督の2本の映画と日本ワーグナー協会賞のこと

 今週は、あえてほかの仕事はできるだけしないで締め切りの迫っている本の執筆に集中している。が、そうもいっていられない。別の仕事が次々と入ってくる。原稿もはかどらない。そんなわけで、原稿にうんざりして、知人に借りた昔の映画のDVDを2本見た。感想を記しておく。

 

31ingrbb6bl__sl500_aa300_


ジュリアン・デュヴィヴィエ監督「運命の饗宴」(1942年)

フランスの名匠ジュリアン・デュヴィヴィエ監督がハリウッドにわたって作った映画。昔々、どこかで見て、とてもおもしろいと思った記憶がある。あらためて見て、やはりとてもおもしろかった。

 次々と持ち主が変わっていく一着の燕尾服を追いかけ、持ち主の運命を描いていくオムニバス映画。6つのエピソードから成る。原題はTales of Manhatttan。当時の大スターだったシャルル・ボワイエ、リタ・ヘイワース、ジンジャー・ロジャース、ヘンリー・フォンダ、エドワード・G・ロビンソンが次々と登場。

 モーパッサンの短編小説のような、気のきいた、そして人生の断片を垣間見せてくれるエピソード。語り口が実にうまく、わかりやすい。遊び心があり、しゃれっ気があって、しかも人生の断片を上手に描く。最後のエピソードが実にいい。燕尾服を着て強盗を働いた男が逃走中に小型飛行機から燕尾服を捨てるが、そのポケットに大金が入っていた。燕尾服は貧しい黒人たちの村に空から落ちる。黒人たちはそれを神からの奇跡と信じ、村の人々でお金を分ける。そして、最後、燕尾服は案山子として村人を守る。オラトリオ的。

 



51b2hd80bvl__sl500_aa300__2


ジュリアン・デュヴィヴィエ監督「埋れた青春」 (1954年)

 ディヴィヴィエの戦後の作品だ。傑作としての評価が高いという。原題はL’affaire Maurizius「モリジウス事件」。多感で正義感の強い少年が検事である父親の担当したモリジウス事件に疑問を持ち、真相を調べ始める。そうするうちに、17年前の事件の愛憎が明らかになり、厳格で、人の気持ちを理解しようとしない検事である父と息子の亀裂が明らかになっていく。

なかなかおもしろかったが、私自身としては、「運命の饗宴」のほうが好みだ。歳をとってしまったせいなのかもしれないが、多感で正義感の強い少年の行動にも、愛に理性を失う若い女性の行動にも、そして、ろくに調べもしないのに自信を持って被疑者を有罪にする検事にも、そして、やすやすと過去の真実を知りあったばかりの少年に語ってしまう当事者にも私は十分に納得できなかった。

私は、ディヴィヴィエの映画についてはちょっとウソくさくて人工的なところに魅力を感じる。「埋れた青春」はリアルにしようとしすぎている感がある。

 

 ところで、数日前、日本ワーグナー協会から、私の書いたエッセイ「野球とワーグナー」が日本ワーグナー協会賞を受賞したという知らせが届いた。エッセイは2人受賞とのこと。

 実は、ずっと前から「野球とワーグナー」というテーマでエッセイを書きたいと思っていた。頭の中ではほとんどできあがっており、書くための場を探していた。そんなとき、日本ワーグナー協会のエッセイ募集の告知を見つけた。書きたいことをまとめるにはよい機会だと思って書いてみたのだった。(ちなみに、私は発会時と10数年前の2度、日本ワーグナー協会に入会したが、初回は貧しくて会費が払えず、2度目は忙しくて少しも会に出られないために退会した。現在も忙しくて会を利用することができそうもないので、入会をためらっている)。

 野球のルールとワーグナーの「指環」はそっくり同じような構造になっている。両者は同時代のものであり、ともに入れ子細工になっており、二元論が崩れて西洋主義に疑念が持たれはじめる時代精神を反映している・・・といった内容だ。私としてはこの発見はそれなりの本質を突いていると思っている。そう思ってくださる人がどのくらいいるかは大いに疑問ではあるが。いずれにせよ、賞をいただけるということは、私の考えに多少なりと説得力があると思ってくださったということだと思う。大変うれしいことだ。

 

|

« テストの花道、広島のことなど | トップページ | 京都5日目 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/58135115

この記事へのトラックバック一覧です: デュヴィヴィエ監督の2本の映画と日本ワーグナー協会賞のこと:

« テストの花道、広島のことなど | トップページ | 京都5日目 »