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最近見たオペラDVD フランクフルトの「リング」、トゥルーズの「リエンツィ」、「賭博者」

 忙しいとはいえ、少し前に比べると、多少は時間的な余裕が出てきた。何本か、ためていたオペラDVDを見た。感想を書きしるしておく。

 

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 「ニーベルングの指輪」全曲  セバスチャン・ヴァイグレ指揮 フランクフルト歌劇場

 ひと月以上前から、少しずつ見ていたが、やっと見終わった。全体的に大きな感銘は受けなかった。歌手たちは、全体的には悪くないのだが、突出した存在はいない。それぞれにちょっとした傷を感じる。声がよかったら、音程に少し難があったり、音程は良くても声の輝きに不足があったり。とてもまとまりの良い歌手なのだが、あと少しの迫力に乏しかったり。ヴォータンを歌うテリエ・ステンスヴォルトやブリュンヒルデのスーザン・ブロック、ハーゲンのグレゴリー・フランクはとても良いと思う。劇場で聴くと十分に感動するだろう。だが、映像として家庭でみると、声の響きについても少し不満を感じる。

 ただ、私は肝心のジークフリート役のランス・ライアンについては、私は最大限の不満を覚える。以前、ヴァレンシア歌劇場の「リング」のDVDを見たときも同じように感じたが、私の耳には音程が不安定に聞こえるし、発声が苦しく、声自体に美しさを感じない。むしろミーメの声のほうが美しいくらいだ。私はこの人が歌い始めると、しばらく耳をふさぎたくなる。なぜこの人がバイロイトで主役を歌えるのか、なぜこの人をほめる人がいるのか、私にはわからない。もしかしたら、実演を聞くと気にならないのだろうか。

 指揮のヴァイグレについても、びしっと決まらない。間延びしたような瞬間を感じてしまう。もう少し力感がほしい。ヴェラ・ネミロヴァによる演出についても、かなり穏当。細かいところでは多少の違いはあるが、ラインの三人の乙女は娼婦のようだし、グンターとハーゲンは現代的な服を着ているし、この10年ほどの間に上演されてきた「リング」を寄せ集めたような印象を持った。

 

 

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ワーグナー 「リエンツィ」 トゥルーズ・キャピトール管弦楽団 ピンカス・スタインバーグ(指揮)

とてもよかった。先日、ベルリン・ドイツ・オペラのこのオペラのDVDを見て、なかなかおもしろかったが、それに勝るとも劣らない。ベルリン・ドイツ・オペラのものも主役は今回と同じトルステン・ケルルだった。実にすばらしい。当たり役といえるだろう。強くて豊かな声で明確に歌う。かなり癖のある声なので、けっして美声とは言えないと思うが、最高の存在感。イレーネ役のマリカ・シェーンベルクもしなやかでありながらしっかりした声で自在に歌う。若い歌手だと思う(登場人物は全員が顔を白塗りにしているので、顔の造作がよくわからない)。アドリアーノ役のダニエラ・ジンドラムもしっかり歌ってドラマを盛り上げる。この主役三人は特に充実している。

指揮のピンカス・スタインバーグも力感があってとても好ましさを感じた。きびきびと、そしてダイナミックにオペラを進めていく。「リエンツィ」は、「さまよえるオランダ人」以降のオペラと違ってめったに聴く機会がないが、聴いてみると、なかなかの名曲だ。めったに上演されないのは実に惜しい。

演出は、ジョルジュ・ラヴェッリ。全員が顔を白塗りにしていること以外は、それほど驚くような斬新な演出はない。白塗りになっているのは、二つの敵対する家族も、そして英雄的なリエンツィも、一様に人類の一人でしかないこと、実は個性などない、生命のうごめきのような存在でしかないことを象徴しているのかもしれない。ただ、こうされると、見ているほうは登場人物の識別ができなくなる。合唱団も含めて全員が匿名の存在になる。もちろん、それが狙いなのだろうが、これでは歌っているほうも歌い甲斐がないのではないかと余計な心配をしてしまう。

 ともあれ、ワーグナー生誕200年だということでこのような映像が発売になるのはうれしい。

 

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プロコフィエフ 「賭博者」 マリインスキー歌劇場 ヴァレリー・ゲルギエフ指揮。

 プロコフィエフ作曲、ドストエフスキー原作のオペラ。原作は高校生時代に読んだ記憶があるが、よく覚えていない。したがって、ほとんど予備知識なしに見たに等しい。いかにもドストエフスキーらしい登場人物なのだが、オペラでこのような人物を見せられ、せりふを聞かされても、深層が描かれないので、見ているほうは納得できない。そのせいか、ストーリーに納得のいかないところがあった。そのうちドストエフスキーの原作を読み返してみたいものだ。

 プロコフィエフの音楽はショスタコーヴィチのようには鬱積していないので、ここに展開されるのはドストエフスキー的世界とは言い難い。だが、最後の、アレクセイがルーレットに勝つ場面と、ポリーナとのいかにもドストエフスキー的なやり取りの部分の音楽は破滅的で狂気じみていて、とてもいい。名作オペラというわけではないと思うが、とても楽しめた。

 はじめて聴くオペラなので演奏については何とも言えないが、不満はない。将軍をうたうセルゲイ・アレクサーシキンが実に芸達者で、太い声が魅力的。ポリーナを歌うタチヤナ・パヴロフスカヤは知的な美人だが、得体のしれないドストエフスキー的な魅力を振りまいて、とても魅力的。アレクセイを歌うウラジーミル・ガルージンは、さすがに25歳には見えないが、声も出ていてとてもいい。青を基調にしたテムール・チヘイーゼの演出もとても面白かった。ゲルギエフの指揮も実にダイナミックで躍動的。

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