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往年のテレビドラマ「ローン・レンジャー」DVDを見た

 数日前、書店で見かけて、懐かしさのあまり「ローン・レンジャー」のDVDを購入した。「ローン・レンジャー」といっても最近のディズニー映画ではない。テレビ放映が始まってほどない1950年代に放送されていたアメリカの西部劇だ。8枚組1980円という激安商品。

小学生のころ、「ローン・レンジャー」が大好きだった。白馬に乗って「ハイヨー・シルバー」と呼び掛け、覆面をして西部にはびこる悪漢たちをやっつけていく。痛快この上なかった。

実はこの番組の冒頭、タイトルの出る場面で毎回、白馬に乗ったローン・レンジャーの映像とともにロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲の第4部「スペイン軍の行進」がかかる。

 私はこれまで人に聞かれるごとに、「小学校5年生の時、学校の音楽鑑賞の時間に聴いた『ウィリアム・テル』序曲に感動してクラシック音楽にのめりこんだ」と答えてきた。本の中にも何度かそのことを書いた。もちろん、これは嘘ではないが、実を言うと、「ウィリアム・テル」序曲に感動した理由の一つは、大好きな「ローン・レンジャー」の冒頭に使われているのがこの曲だと発見したことだったのだ。もし、当時私が「ローン・レンジャー」を見ていなかったら、きっと『ウィリアム・テル』序曲に感動することもなく、クラシック音楽好きになることもなく、もしかしたらまったく違った人生を歩んでいたかもしれない。

 そんな意味もあって、家での仕事の合間に「ローン・レンジャー」を見てみた。もちろんストーリーにはまったく覚えがない。だが、ローン・レンジャーの乗馬姿が最高にカッコよかったこと、トントという原住民が登場していたことなど、ドラマの雰囲気は思い出した。山のように仕事があるというのに、ついやめられなくなって、ちょこちょこと6話ほど見た。

 基本的に23分程度で一話完結なので、実にスピーディに話が進む。登場人物たちはさまざまなことを二言三言話を交わすだけで納得し、すぐに決断し、すぐに実行に移す。あまりに都合よく話が進んでいく。が、そうでありながら、ストーリーに起伏があっておもしろい。さすがにアメリカのドラマはよくできている。映像も映画並みに本格的。

 現代のドラマのように、まるで観客がその場に立ち会っているかのように詳細に状況を描かない。当時の日本の子供たちが見ていた紙芝居のように、あるいはアメリカ人が好んでいた「スーパーマン」の漫画のように、臨場感が強調さえることなく、かなり客観的に描かれる。それほどしつこくリアルに描かなくても、インパクトある西部の風景、ヒーローのカッコよさで、当時の人々はリアリティを感じたのだろう。むしろ、近年の映画やドラマはあまりに臨場感を重視しすぎているようにも感じた。

 それにしても、団塊の世代前後の人々(私は団塊の世代のほんの少し下の世代に当たる)がいかにアメリカ文化を吸収していったのか、改めてよくわかる。小学生時代には、「名犬ラッシー」「ルーシー・ショー」「ローハイド」「サンセット77」「アンタッチャブル」でテレビドラマの面白さを知り、その少し後、「コンバット」「逃亡者」「ナポレオン・ソロ」に夢中になった。これらによってアメリカの正義、アメリカの家庭、アメリカの歴史さえ知った。「コンバット」が放送されていたのは、日本がアメリカ軍とあれほど熾烈に戦い、あれほどの死者を出して20年もたっていないころだった。このドラマはヨーロッパ戦線でのドイツ軍との戦いを描いているとはいえ、日本のテレビ視聴者がアメリカの兵隊に感情移入して見ていたのが不思議だ。

ところで、子どものころにローン・レンジャーというのは主人公の名前だと信じ込んで、これまでまったく疑問に思ったことがなかったが、「たった一人のレンジャー隊員」という意味だったことを、第一話を見て知った。考えてみると、そりゃそうだ。英語を学び始めたころに気付くべきだった。

 子供のころはまったく疑問に思わなかったが、今見ると、主人公が覆面を付けている必然性がないのを強く感じた。ほとんど常に覆面はむしろ強盗か何かと間違われて逆効果になるし、覆面で顔を隠すメリットもない。同じころテレビで放送されていた「怪傑ゾロ」(これも大好きだった!)などは、正体を知られては困るので覆面を付ける必要があるだろうが、ローン・レンジャーについてはそれはなさそうだ。もう少し必然性を示してほしいと思った。逆にいえば、覆面というものの持つ魅力というのは、とりわけテレビ初期の映像が重視される時代には、大きな意味を持っていたのだろう。

 もうひとつ気づいたのは、音楽にクラシックがかなり使われていること。小学生だった私が知るはずもなかったが、「さまよえるオランダ人」序曲が頻繁に出てくる。そのほかベートーヴェンの交響曲第7番やらリストの「レ・プレリュード」やらボロディンの「イーゴリ公」やらに気付いた。曲名は思い出せないが、聞き覚えのある曲がほかにもいくつもある。当時のテレビドラマにはクラシック音楽が普通に使われていたのだろうか。

 ともあれ、童心に戻って、実に楽しめた。といっても、まだ6話までしか見ていない。あと10話楽しめる。ディズニー映画の「ローン・レンジャー」も見たくなった。

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コメント

ローン・レンジャー、懐かしいです。4畳半の茶の間にテレビが入って、夢中で見ました。名犬ラッシーやローハイドも……。4畳半の部屋と3畳の部屋しかない貧しい家でしたが、楽しい思い出です。

投稿: Eno | 2013年11月 5日 (火) 09時59分

ENO様
コメントありがとうございます。
昔のドラマを見ていると、それを見ていたころの状況が浮かびます。私は、小学校4年生(たぶん1961年)までは大分県中津市の農村地域にある藁ぶきの家で、そのあとは大分市の丘の上の墓地の隣にある家で見ていました。友人の中には、当時の私と同じくらいの年齢の孫のいるものもいます。昔々の思い出です。

投稿: 樋口裕一 | 2013年11月 6日 (水) 08時14分

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