パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルの「英雄」に興奮
11月29日、武蔵野市民文化会館でパーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聴いた。プログラムは、前半に「フィデリオ」序曲と交響曲第4番、後半に交響曲第3番「英雄」。アンコールはブラームスの「ハンガリー舞曲」第1番とシベリウスの「悲しきワルツ」。感動した。興奮した。
ヤルヴィ+ドイツ・カンマーフィルの組み合わせでかつてベートーヴェンの第5を聴いて圧倒された記憶がある。メリハリがきいているとか何とかいうレベルではなく、波乱万丈でスリル満点の、ある意味で曲芸的な演奏なのだが、そうでいながら少しも不自然でなく、ぐいぐいと聴衆を引き込まれた。
これは必ずしもヤルヴィの指揮のためというよりも、両者の組み合わせのたまものと言えるようで、フランクフルト放送響などのほかのオケで聴くと、ヤルヴィ指揮でももう少し大人しい。こんな波乱万丈な音楽はカンマーフィルの持ち味なのかもしれない。
まさに今日も期待通り。前半を聴いた時点で、凄まじい演奏だと思った。わくわく感にあふれている。第4番第1楽章の序奏が終わって盛り上がっていく部分が素晴らしい。そして、スケルツォも第4楽章も、立ち上がって叫びだしたい気持ちになるような昂揚感を覚えた。
後半の「英雄」はもっとすごかった。第1楽章からして、若々しくて気合のこもった音楽がスリリングに展開される。巨匠風なところは少しもなく、スピーディー。リズムが動き、躍動するが、構成感は崩れない。まるで生き物のように音楽が躍動する。こんな凄まじい「英雄」は初めて聴いた。とりわけ、第4楽章のすごさ。変奏形式なのだが、様々な形に目まぐるしく姿が変わり、律動していく。
めくるめく思い。息をのんでいるうちに音楽が終わった。
アンコールのハンガリー舞曲のほうは、ヤルヴィがほとんど即興的に棒を振り、オケの団員がそれについていく醍醐味。リズムを伸縮自在にした音楽。しかし、それが実に楽しい。「悲しきワルツ」は、しずかにしなやかにしみじみと聞かせてくれた。
実に芸達者な指揮ぶり。父上のネーメに対して、その芸達者に驚いたことがあったが、パーヴォも負けていない。
音楽の楽しさ、わくわく感を存分に楽しんだ。私は、ヤンソンスのようなはったりのない細かいところまで神経の粋とどいた正攻法の音楽も大好きだが、パーヴォのような派手に動き回る音楽も大好きだ。
家に帰っても、まだ興奮している・・・
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コメント
樋口先生
まったく同感です!同じプログラムを、たまたま出張でいた名古屋で聴きました。全身のすべての細胞が覚醒したような、、とはこのことか!という演奏でしたね。オケが非常に鍛え上げられていて、敬礼ものでした。もう心拍数が上がりっぱなしでした。
投稿: なしお | 2013年11月30日 (土) 18時42分
なしお様
コメント、ありがとうございます。
名古屋で聴かれましたか。武蔵野と同じようにすごかったのでしょうね。確かに、全身のすべての細胞が覚醒・・・まったくそのとおりですね。しかも、少しも不自然ではないのですから、驚異だと思いました。オケのメンバーがいかにも楽しそうに演奏しているのも印象的でした。
投稿: 樋口裕一 | 2013年12月 1日 (日) 21時55分