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岡田博美リサイタル、ネマニャのCD「パガニーニ・ファンタジー」

 11月14日、東京文化会館小ホールで岡田博美リサイタルを聴いた。ただし、大学のゼミの後半を学生に任せ、車で会場に向かったが、首都高速が大渋滞で少し遅れた。30キロほどの距離に高速道路を使って2時間ほどかかった。焦りに焦った!

ショパンはきけず、ブラームスのパガニーニによる変奏曲はドアの外で聴く羽目に。残念無念。後半はシューマンの「森の情景」と「クライスレリアーナ」。アンコールにメンデルスゾーンの無言歌の「春の歌」、リストの「愛の夢」、シューマンの「トロイメライ」。

実は私はシューマンの音楽がかなり苦手だ。いや、嫌いではない。「詩人の恋」をはじめとする歌曲やいくつかの室内楽はかなり好きだ。だが、ヴァイオリン協奏曲などのいくつかの曲に関して、私の頭の中で曲の構成が整理できず、しばしば途方に暮れる。あえて差別的に言わせてもらうと、「この人、やっぱり頭がおかしい」と思ってしまう。あちこちで唐突だったり、執拗に同じことを繰り返したり。

岡田さんの演奏を聴いて、そのシューマンの繊細さ、情緒不安定さが研ぎ澄まされ、余計なものがそぎ落とされ、しかも絶妙のニュアンスをもって再現された感じがした。ある種の狂気が目の前に現れるように思った。破綻しかけたロマンティズム。だから、心地よくはなかった。ベルリオーズの「幻想交響曲」の中にある毒気を、もっとずっと内向的にしたかのよう。しかし、同時に、このようなシューマンを聴いているうち、なんと美しい、しかもなんと愛するべき曲だろうとも思った。シューマンを愛する人の気持ちがよくわかった。

それにしても、岡田さんのピアノのタッチの美しさ、完璧なリズムと音の重なりに驚いてしまう。情緒に流されないがゆえに、ロマンティックな情感が、その毒気を含めて立ち上ってくる。

先日、このような圧倒的なピアニストを迎えて多摩大学でリサイタルを運営できたことを改めて誇りに思った。そして、またぜひ、私たちの手で岡田さんのリサイタルを実現したいと強く思った。

 

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ところで、ネマニャ・ラドゥロヴィチの新しいCD「パガニーニ・ファンタジー」を聴いた。ネマニャのファンになった多摩大学の同僚がフランスで購入したものを借りて聴いたのだ。カプリースからの3曲がとりわけ素晴らしい。パガニーニの協奏曲第1番もいいし、ほかの小曲もいいが、カプリースのすさまじさは言葉をなくす。それにしても、先日の来日でも感じたが、ネマニャの音楽スタイルに変化が表れているようだ。以前のように激情を表に出すことが少なくなった。より本格的になり、音楽の中身に肉薄するようになっている。三鷹で聴いたバッハやイザイと同じような深い凄みがカプリースの中に表れているように思う。近日中にカプリース全曲を録音してほしいと改めて思った。

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