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ビエロフラーヴェク+チェコフィル+ファウスト、すばらしい演奏

 時間がないので、簡単に書き留めておく。

 1031日、サントリーホールでビエロフラーヴェク指揮、チェコフィルハモニーの演奏を聴いた。前半は「ルスランとリュドミラ」序曲と、イザベル・ファウストが加わってのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。後半はチャイコフスキーの「悲愴」。

 ファウストに関しては実にすばらしい。きわめて知的でありながら、リリック。硬質な音だが、澄んでいて限りなく音がきれいで、音に陰影があるので、凛とした雰囲気になる。形がまったく崩れず、情緒に負けることがない。とりわけ第二楽章が素晴らしかった。本当に美しい音。アンコールにバッハの第2番のパルティータのサラバンド。これも妙に小細工しないところがいい。真っ向勝負の音楽。

 ただ、ビエルフラーヴェクについては、実はもっと期待していた。99年、プラハ国民劇場の来日公演で、この指揮者の「ルサルカ」と「イェヌーファ」を見た。恥ずかしながら、その時はじめて私はビエロフラーヴェクの名前を知った。素晴らしい指揮者がいるものだと思った。緊迫感にあふれ、音の扱いが実に清潔だという印象を持った。

 今回、チャイコフスキーの「悲愴」も、もちろん素晴らしい演奏だ。音の重ね方が実に手際がよく、美しい。情緒に流されず、音楽的にしっかりと構成して聞かせてくれた。第3楽章など、とりわけ圧巻。だが、こうなると少し物足りなくなる。もう少し濃厚なロシアっぽさがほしくなってくる。ちょっと薄味で品のいいチャイコフスキーという感じ。そのため、あまり深く感動できなかった。

 

 オーケストラはとてもいい。菅楽器に実に雰囲気がある。弦の重なりも美しい。コンサートマスターは、先日、武蔵野で無伴奏曲を聴かせてくれたシュパチェク。

 アンコールはスラブ舞曲と日本の「故郷」。不思議な編曲の「故郷」だった。あまり日本的ではない。懐かしい雰囲気なのだが、日本的な懐かしさではない。そう、まるでドヴォルザークの一部のよう。

 ビエロフラーヴェクについては、もっともっと期待していたのだが、これがこの人の音楽性だろう。チャイコフスキー以外の曲を聴くほうが、私にはあったかもしれない。ドヴォルザークかブラームスの日に聴くべきだった(時間が合わなかったので仕方がないが)。とはいえ、もちろんとてもよい演奏だった。十分に満足。

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コメント

私は前日のブラームスの日に行きました。ドヴォルザークもよかったですが、後半のブラームスは、まさにブラームスそのもの以外何も付けず足さずというタイプの、それでいてひじょうに気合いの入った熱い演奏でした。この指揮者とこのオケでブラームスの全集をライブで録音してほしいと強く思ったほどでした。
ただこの指揮者、たしかに劇的な迫力はあるものの、ドラマ感覚というものを体質的にあまり持ち合わせていないせいか、曲によっては意外に温度差のある演奏に仕上がってしまうことがあるのかもしれません。もっともその割にはオペラは上手いんですよね。
次回来日時は日本フィル客演時にも評判がよかった、ヤナーチェクの「死者の家から」の組曲などぜひ演奏してほしいです。もちろんできれば「わが祖国」全曲も。

投稿: かきのたね | 2013年11月 2日 (土) 03時08分

かきのたね様
コメントありがとうございます。
そうですか、ブラームスの日に行かれましたか。きっと素晴らしかったでしょうね。マエストロは、まじめで芝居っ気のない人なのでしょうね。だから、ドラマのないところにドラマを付け加えるようなことをしないで、音楽そのものを描こうとするのだと思います。ただ、そうすると、ちょっと何かを付け加えるほうがおもしろくなるような曲の場合、ときに物足りなく感じられるのかもしれません。
私もヤナーチェクなどのチェコの曲をぜひ聴きたいですね。

投稿: 樋口裕一 | 2013年11月 3日 (日) 09時07分

はじめまして
私も、10月30日のブラームス1番と11月3日の新世界の日に行きました。
なかでは、ブラームスが本当にすごい演奏になっていました。白熱というか、終演まで会場の熱気は冷めることがありませんで、オケ解散後もマエストロの再登場に客席も大喜びでした。この人の演奏技術は、かなり安定していて、それ自体が聴きものだと思いました。小技はないけれど、ぶれない、その上優美なオーケストラに仕上げる。新世界の日もそれは共通していました。ただ、この日は日本シリーズの最終決戦と時間がかぶったせいか、あまり客席の余韻は長くひかずに終わりましたが。
チェコらしさも随所に感じました。オケがキラキラしてなくて、どちらかというと荒っぽいのも魅力に感じる時が多々ありました。今後に期待したいです。

投稿: なしお | 2013年11月 7日 (木) 17時46分

なしお様
コメント、ありがとうございます。
ビエロフラーヴェクのブラームス、きっと良かっただろうと思います。まさしくぴったりの音楽性ですね。次に来日して、再びブラームスを演奏してほしいものです。ほかに、ヤナーチェクも聞きたいものです。

投稿: 樋口裕一 | 2013年11月11日 (月) 23時07分

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