23日に樋口ゼミ主催コンサート、そして最近聴いたCD「さまよえるオランダ人」のことなど
12月23日、多摩大学経営情報学部101教室で、樋口ゼミ主催のクリスマス・コンサートを行う。入場料無料。外部の方も歓迎する。ぜひ多くの方においでいただきたい。
演奏するのは、ヴァイオリンの山口豊、ピアノの大石啓。
山口豊君は、桐朋学園大学在学中に元ベルリンフィルのコンサートマスターに才能を絶賛された逸材で、一時期、多摩大学に在学し、現在、朝日大学歯学部在学中。数々のコンクールに上位入賞している。私も一度実演を聴いて、その実力に舌を巻いたことがある。これまで、カール・ズスケ氏、サシュコ・ガヴリロフ氏、岩崎淑氏、岩崎洸氏とも共演している。
大石啓氏は、岩崎淑氏、ルース・スレンチェンスカ氏に師事し、数々のコンクールに上位入賞したピアニストで、海外の音楽祭にも参加している。
曲目は、以下の通り。
・ エルガー 「愛のあいさつ」
・ バッハ 「シャコンヌ」
・ ドビュッシー 「月の光」(ベルガマスク組曲より)
・ ショパン 「英雄ポロネーズ」
・ バッハ 「アリア」
・ アメイジング・グレース
・ ツィゴイネルワイゼン
12月23日は、天皇誕生日だが、多摩大学では通常通りの授業を行う。多摩大学経営情報学部は、聖蹟桜ヶ丘や永山駅からバスで15分ほどのところにある。
ところで、急ぎの仕事を終え、AO入試・推薦入試もひと段落して、昨日からゆっくりしている。あえて自らに仕事をすることを禁じ、録りためたテレビドラマの録画を見たり、音楽CDを聴いたり、落語のDVDを見たり(必要のために見ている。近日中に落語DVDについても書く予定)して、2日間を過ごした。
ただ、今日は、PCのCドライブが容量いっぱいになったために、CドライブにあったiTunesのファイルをDドライブに移動させたところ、プレイリストが消えてしまい、その復元のために、あれこれと試してみたり、サポートセンターに電話をして聞いたりして、午後いっぱいを使ってしまった。しかも、プレイリストは復元できなかった。ふだん外出時にはiPadを愛用しているので、これはじつに困る。近日中に何とか手を打たないと・・・。
ともあれ、聴いたCDについて簡単な感想を書き記しておく。
ルーヴル宮音楽隊をマルク・ミンコフスキが指揮した不思議なCD。4枚組で2つのオペラが含まれていて、1つはワーグナーの「さまよえるオランダ人」の初稿版、もう1つはピエール・ルイ・ディーチュというほぼワーグナーと同時代の作曲家の「幽霊船」。「さまよえるオランダ人」はフランスでは「幽霊船」という名前で知られているので、このフランスの会社のCDは2つの「幽霊船」のオペラを収録したということだろう。
ワーグナーの伝記には、「さまよえるオランダ人」の作曲当時、よく似た題材の「幽霊船」が先に上演されたためにワーグナーが困ったという話が出てくる。まさか、そのオペラを今になって聴けるとは思わなかった。昨年、ザルツブルク音楽祭で「魔笛」の続編としてヴィンターという作曲家の作曲した「迷宮」を見たが、それと同じようなものだ。
まず、「さまよえるオランダ人」だが、これはミンコフスキらしくきびきびしてエネルギッシュな演奏なのだが、それがデモーニッシュな雰囲気を出して、実に初期のワーグナーにふさわしい。すさまじい推進力でぐいぐいと聴き手をひきつける。ただ、かつてのトスカニーニがそうであったように、そのような音楽が2時間を超して続けられると、ちょっと一本調子を感じないでもない。舞台を見ていれば気にならないのだろうが、CDを聴いていると、もう少し別の雰囲気がほしい気になった。
初稿版ということで、あちこちで覚えのないメロディ、聞きなれているのとは異なるオーケストレーションが出てくる。とりわけ、最後の音はかなり衝撃的。
歌手はそろっている。オランダ人のエフゲニー・ニキーチンとゼンタのインゲラ・ブリンベリが素晴らしい。ドナルト(ダーラントという名前ではない!)のミカ・カレス、ゲオルク(エリックではない!)のエリック・カトラーも見事。全体的には実にすばらしい演奏。「さまよえるオランダ人」は、なぜか名盤が少ないが、これは名盤の一つと言えるだろう。
ディーチュ作曲の「幽霊船」については、かなり他愛のない曲。ワーグナーのあとで聴くと、同じテーマを扱っているとは思えないほど軽い。歌手がフランス語だということもあるが、のどかで抒情的な雰囲気が漂う。
とはいえ、それなりには楽しめる。マニュス(エリックに当たる人物)のアリアもミンナ(ゼンタに当たる)のアリアも、軽やかでとてもおもしろい。ワーグナーに比べると、トロイル(オランダ人に当たる)もバルロー(ダーラントに当たる)も毒気なく、実にのんきに歌っているように思える。逆にいえば、それほどワーグナーはドラマにあふれているということだろう。こちらも、ワーグナーに比べるとリリック名声の歌手たちで占められているが、こちらもよくそろっている。
メトロポリタン歌劇場などで大活躍中のジョイス・ディドナートのアリア集。いくつかのCDや放送を聞いたところあまりにすばらしいので、彼女の名演奏を集めたCDを購入してみた。ヘンデル、モーツァルト、ロッシーニなどの得意な曲が中心。ディドナートの声の威力に圧倒される。強くて明晰で、明るく、しかも迫力のあるメゾの声。表現力も豊かで、心を打たれる。久しぶりに表れた大型メゾ・ソプラノだ。
とりわけ、ネゼ=セガンの指揮で歌う「ドン・ジョヴァンニ」のドンナ・エルヴィラの凄さには、全曲盤のCDで知っていたが、あらためて圧倒された。それともうひとつ、大野和士指揮のリヨン国立歌劇場で歌う「ナクソス島のアリアドネ」の「作曲家」にも驚嘆した。この二つの曲は指揮も実にすばらしい。
かなり前に購入していたが、夏休み中からずっと大学の仕事が忙しくて、ゆっくりと聞く時間が取れなかった。やっと精神的な余裕ができて、CDを手に取った。
ヤノフスキの指揮とオーケストラに関しては、予想にたがわぬ素晴らしさ。きびきびしているばかりか、十分におどろおどろしさもあって、ぐいぐいと引き込まれる。スケールが大きく、しかも焦点がびしっとあった音楽とでもいうか。音の一つ一つの神経が行き届いている。CDの音質も最高。
ただ、私はどうもジークフリートを歌うランス・ライアンと相性が良くない。以前にCDや映像で聴いたものよりはかなり良くなっているとは思うのだが、それでも私にはこの声はジークフリートにふさわしいとは思えない。ドイツ語を解さない私は時々ミーメと聞きわけができなくなる。しかも、歌い回しが雑に感じるし、しばしば苦しげな声になる。音程もときどきあやしくなるように思うのだが、私の気のせいだろうか。
そんなわけで、私としては、ライアンの登場しない場面はぞくぞくするほどの感動を覚えながら聞いた。ジークフリート登場前の第二幕の森の場面の凄みには魂が震えた。ブリュンヒルデを歌うのは、ヴィオレータ・ウルマナ。しっかりした声でとてもいい。「神々の黄昏」が楽しみだ。これについては、あす以降に聴く予定。
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