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最近聴いたCD そして恩師の訃報

 

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ヤノフスキ指揮 「神々の黄昏」

 

 最近聴いたCDのうち、印象に残ったものについていくつか感想を書く。

 かなり期待して、ヤノフスキ指揮、ベルリン放送交響楽団による「神々の黄昏」のCDを聴いた。序幕の三人のノルンが歌う部分は最高に素晴らしい。見通しの良い大宇宙を思わせるような深くてスケールの大きな音。少しも濁りがなく、しかも深い。だが、わくわくするうち、ペトラ・ラングの歌うブリュンヒルデが登場し、そのあとランス・ライアンの歌うジークフリートが歌い始めて、私としてはかなり失望した。

「ジークフリート」のブリュンヒルデはウルマナが歌っていたので、「神々の黄昏」もウルマナのつもりでいたら、ラングだった。ラングのブリュンヒルデはかなりコンディションが良くないのか、それともこのような歌い方をするのか、音がとても不安定に私には聞こえる。これまで、実演や録音でペトラ・ラングの歌を聞いた記憶はあるのだが、悪い印象はなかった。ところが、今回の歌は私としてはかなり聴くのがつらい。

ライアンのジークフリートは、ラング以上につらさを感じた。ジークフリートとブリュンヒルデの二人の主役が、決して美しいとは言えない声で、苦しげにあやしい音程で歌っていると私には感じられる。これを評価する人がいるのがどうしても私には信じられない。

 二人の主役を除けば、実にすばらしい。ハーゲンはマッティ・サルミネン。先日、BSで放送された今年のザルツブルク音楽祭の「ドン・カルロ」にも出演していた。往年の凄みは影をひそめたが、相変わらず深くて迫力のある声を聴かせてくれる。そして何よりも指揮がいい。ジークフリートの葬送の部分も、じっくりと腰を据えて深々とした音楽を聴かせてくれる。

 二人の主役歌手さえほかの人でいてくれたらなあ・・というのが率直な感想。

 

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ネマニャ・ラドゥロヴィチ(ヴァイオリン) 「パガニーニ・ファンタジー」

 私が若手の最高のヴァイオリニストだと考えているネマニャの最新のCDで、パガニーニの曲を集めたもの。以前、フランスで購入した同僚から借りて聴いたときに、これについて書いた。自分のCDを入手して改めて聴いて、その素晴らしさを確認したので、再び感想を書きつける。

 私は何よりも、3曲納められたカプリース(5番・11番・24番)に魅力を感じる。音程のしっかりした細身のクリアな音。すがすがしいというのを超えて、音そのものは怜悧でもある。その音が大きなスケールで律動する。完璧なテクニック。一つ一つの音がこの上なく美しく、一点の濁りもない。情熱的なのだが、情熱によって音楽がゆがむことはない。メリハリが大きくジプシー風の表現なのだが、そこにしっかりした論理がある。息をのむ演奏といえるだろう。

 大植英次指揮のRAI国立交響楽団が伴奏をするパガニーニの協奏曲第1番も、素晴らしい。振幅の大きな演奏で、ネマニャと大植の息もぴったり合っているのを感じる。私は、パガニーニの曲はアルヴァトーレ・アッカルドがデュトワ指揮ロンドン・フィルと共演したCDしか持っていない(アッカルドのパガニーニは、その昔、昭和女子大人見記念講堂で聴いた記憶がある)が、それと比べると、まるで別の曲のような印象を受ける。もっとずっと力感にあふれ鋭く切り込む。ヴァイオリンのテクニックは冴えわたっているが、曲全体としては平板な印象のあるパガニーニの音楽が、がぜん生き生きとして流動し、すきあらば攻撃してくるような龍に変貌した印象を持つ。

 これを聴くと、ネマニャにカプリースの全曲、そしてパガニーニの協奏曲全曲の録音をしてほしいとつくづく思う。いや、その前に、バッハとイザイとバルトークの無伴奏の全曲、そして正統派の大作曲家たちのソナタや協奏曲の録音をしてほしい。 

 ここまで書いて、朝刊に目を通して愕然。大学院時代の恩師・渡辺一民先生の訃報が出ていた。私はもともと地道な「研究」などにはまったく向かない人間であり、先生の指導にも逆らうばかりだった。それでも渡辺先生は期待をかけてくださり、連絡を取るごとに、「君は本来、文学研究をするべき人間だ。つまらない本ばかり書いていないで、本来の文学研究をしろ」というお叱りをいただいていたが、それも私は裏切ってばかりだった。生涯の恩師であった米川良夫先生もすでに亡く、私を叱ってくれる人はいなくなってしまった。合掌。

 

 

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