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新国立「ホフマン物語」、その後、ワーグナー協会例会

 12月7日、新国立劇場にて「ホフマン物語」を見た。素晴らしい上演だった。

 何よりもフィリップ・アルローの演出が美しい。色鮮やかでわかりやすく、実に楽しい。しかも、ホフマンの悲劇性もしっかりと描いている。かつて同じ演出を見たはずだが、よく覚えていない(ちょっと、記憶力に自信をなくした・・・・)。

 私はオッフェンバックは大好きなのだが、好きなのは不真面目なオペレッタのほうで、「ホフマン物語」には実はあまり深い思い入れはない。とても楽しいオペラであるし、機会があるごとに見ているが、過去にレコードやCDで繰り返し聴いたという経験はない。だからもちろん、ふだん以上に、演奏について論評できる立場にはない。

 歌手は全体的に大変充実していた。とりわけ素晴らしかったのは、リンドルフなどを歌ったマーク・S・ドス。張りのあるバスで悪役を見事に演じている。実に存在感がある。ホフマンのアルトゥーロ・チャコン=クルスもニコラウスのアンジェラ・ブラウアーもよく通る声でしっかりと歌っていた。

 三人のヒロインは全員が日本人の女性歌手。特にオランピアの幸田浩子に私は惹かれた。外国人勢にまったく遜色がない。声が美しく、役柄通りに機械的で躍動感がある。難しい役だと思うが、見事に演じていた。アントニアの浜田理恵もしっとりとした声で切々とした情緒を出していた。ジュリエッタの横山恵子もよく声が出ていたが、どうも私の耳にはフランス語らしく聞こえない気がした。声域のせいなのだろうか。アントニアの母やステッラと歌った山下牧子も、少ない出番ではもったいないくらいの素晴らしさ。ルーテルの大澤建、スパランツァーニの柴山昌宣も遜色なし。

 とりわけ素晴らしかったのが、フランツなどを歌った高橋淳。アクの強い歌を歌わせたら、日本にはこの人にかなう人はいないと思う。日本人離れした強い声とコミカルな演技はこのオペラを断然光るものにしている。久しぶりに高橋さんの声を聞けて、実にうれしかった。

 指揮はフレデリック・シャスラン。とてもよい指揮だと思った。盛り上げるところは盛り上げ、美しく仕上げている。新国立劇場合唱団も相変わらず見事だし、東京フィルについても見事。特に不満はない。

満足のできる上演だった。

ただ、「ホフマン物語」は、完成させずにオッフェンバックが死んだために、さまざまな版があり、見るたびに細かいストーリーも音楽もエピソードの順番も異なる。だからこそ楽しめるともいえるが、このオペラに特に思い入れのない私としては、よくわからずに困る。

 

終演後、半蔵門駅近くの「いきいきプラザ一番町」のカスケードホールで開かれた日本ワーグナー協会第351回例会の参加。私はワーグナー協会の会員ではない(過去に2度会員になったが、2度とも会費を払わずに退会になった)が、私の書いた「野球とワーグナー」というエッセイがワーグナー生誕200年記念のワーグナー協会賞エッセイ部門の一作に選ばれたので、授賞式に出席。その後、コンサート。田中三佐代さんと岸七美子のソプラノ、小栞寺美樹さんのピアノでシュトラウスやワーグナーの曲を。最前列で聞くとすごい迫力。大いに楽しめた。その後、ワーグナー教会の忘年会に出席。名前を知っているだけだった諸先生方、オペラの場などで顔をしばしばお見かけする方たちと歓談した。

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コメント

こんにちは。
私も、「ホフマン物語」を鑑賞してきましたので、興味をもって読ませていただきました。
今回のこの否両論があると思いますが、軽妙なオペラッタ的な場面とシリアスなオペラ的場面が交錯していく舞台の中で、音楽の転換の切れ味は見事で聴きごたえのある音楽は良かったと思いました。
私も「ホフマン物語」の感想などを書いてみました。読んでみて頂き、ご意見、ご感想などコメントしてくださると感謝致します。

投稿: dezire | 2013年12月10日 (火) 13時53分

dezire様
コメント、ありがとうございます。
ブログ拝見いたしました。私と同じような感想、そして、私よりもずっと辛辣なところのあるお言葉など、とても興味深く読ませていただきました。しかし、ともあれとても素晴らしい演出と演奏だったと思います。
ところで、私はほかの方のブログにコメントすることは遠慮しております。私は一応「物書き」の一人なのですが、ときどき私の著書を褒めてくださっていたり、逆に最大限の非難を浴びせていたりする文章をネット上に見かけることがあります。そんなとき、お礼を言いたくなったり、相手の甚だしい誤解を解きたくなったり、ときには議論を仕掛けたくなったりすることがあります。が、それを始めるときりがなくなって、泥沼に入り込むように思います。
ですから、ブログを始めるとき、他人のブログには一切コメントしないことを決めました。ときどき、コンサートの感想などを読ませていただいて、コメントしたくなることはあるのですが、ぐっと我慢しております。ご理解ください。

投稿: 樋口裕一 | 2013年12月12日 (木) 08時04分

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