平林さんの通夜、そしてタヴェルナのリサイタル
昨晩(1月27日)、大学院時代の先輩である平林和幸さんの通夜に参列した。武蔵大学の前学長のため、武蔵大学と平林家の合同祭ということで、多くの人が参列していた。昔から人望の厚い人だった。この多くの参列者は平林さんの人柄を示している。
数日前のブログにも書いたが、平林さんには大変お世話になった。早稲田一文の演劇科を卒業した後、たんに就職できず、行き先に困ってどうしようもないという理由で立教大学の大学院仏文科に入ったが、学部のころにフランス文学を学んだわけではなかったので、右も左もわからなかった。そこでもいろいろと教えてくれたのが平林さんだった。その後の長い不遇の時代にも、すでに武蔵大学の専任になっていた平林さんがあれこれと力づけてくれた。私の書いた論文や雑文を読んでもらって感想を聞いたのも一度や二度ではなかった。妻と結婚する前、最初に先輩として紹介したのも平林さんだった。その後、私がフランス語フランス文学から離れたために縁が遠くなってしまったのが、今になって悔やまれる。
焼香の後、涙にくれる奥様とお嬢様お二人、そしてお母様を見て胸が熱くなった。65歳というから、まだ若い。ご家族を残してこの世を去るのはどんなに無念だっただろう。
先生、先輩、同輩、そして後輩までが世を去っていく。歳をとるとはこういうことかと改めて思う。合掌。
本日(1月28日)、武蔵野市民文化会館でアレッサンドロ・タヴェルナのピアノリサイタルを聴いた。ごく若いピアニスト。目を見張るような鮮烈な演奏。
ヴェネツィアや水をイメージした曲を集めたリサイタル。前半には,メンデルスゾーンの無言歌「ヴェニスの舟歌」、ショパンの「ヴェニスの謝肉祭」、ラヴェルの「海原の小舟」、リストの「ヴェネツィアとナポリ」(「巡礼の年第2年「イタリア」補遺」。ラヴェルとリストが圧倒的にすばらしい。完璧なテクニック。浮ついたところのないしっかりと落ち着いた音で知的に構築する。揺らぐところがなく、しかも音が明確。スケールも大きく、大きく律動する。しかも、十分にロマンティック。情緒的にならないのに、きわめて知的な抒情性にあふれている。すごいピアニストだと思った。
後半はリストの「悲しみのゴンドラ」、ラヴェルの「水の戯れ」、そしてストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」から3曲。最後の曲が圧倒的だった。知的に、そして立体的に構築されていく雰囲気。論理的興奮を覚えた。
アンコール2曲。タヴェルナ自身が曲名を語った。最初の曲はドビュッシーのようだったが、ピアノ曲に疎い私の知らない曲だった。2曲目はジャズっぽい現代曲。
私は長い間、ピアノ曲はあまり聴かなかった。最近聴き始めたばかり。だから、実を言うと、まだよくわからない。が、タヴェルナの演奏はピアノ不感症の私の心にもビンビンと響くものだった。
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