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METライブビューイング「ファルスタッフ」 楽しい人間賛歌

 1月14日、銀座の東劇でMETライブビューイング「ファルスタッフ」を見た。

 休養していたジェイムズ・レヴァイン復帰の第一作。車椅子に乗っての指揮。メトロポリタン歌劇場だから、よくないわけがない。歌手たちの力量は最高。このオペラには最高度の演技力も要求されるが、それも見事。最高に楽しい。

 やはり、ファルスタッフ役のアンブロージョ・マエストリが自在な歌唱と演技で素晴らしい。これまでもその時代時代にファルスタッフを歌うために生まれてきたような歌手がいたが、マエストリはその一人。まさに現代のファルスタッフ。

クイックリー夫人のステファニー・ブライズ、アリーチェのアンジェラ・ミード、ともに文句なしの歌。明るくて楽しくて溌剌としている。ナンネッタのリゼット・オロペーサとフェントンのパオロ・ファナーレは若い歌手だったが、これも若々しくてとてもよかった。メグを歌うジェニファー・ジョンソン・キャーノもしっかりした声で、演技がとてもいい。

演出はロバート・カーセン。カーセン自身が映像の中で語っていたが、「人間賛歌」として描いている。舞台を1950年代に設定し、ハリウッド映画全盛期の幸せなブルジョワ家庭の楽しいごたごたを描いたドラマのような作りにしている。楽しそうに食べるシーンが何度も現れ、食欲賛歌にもなっている。

おそらくカーセンも意識していたのだと思うが、主たる三人(ファルスタッフ、クイックリー夫人、フォード夫人)がそろっていずれ劣らぬ巨体。この3人が主役を演じるとすれば、食欲賛歌にせざるを得ない。ただ、二人の女性はファルスタッフの巨体をしばしばなじるが、「あんただって、他人のことを言える体型ではないだろうに」という「ツッコミ」がどうしても頭の中をよぎってしまう。が、美男美女が登場するハリウッド映画の肥満版パロディの人間賛歌だと思えば、意図はわからないでもない。ほほえましくも愉快。

やはり第三幕は圧巻。第二幕まで、実はレヴァインの指揮に多少の不満を感じていた。復帰戦としてはもちろんとてもいいのだが、野球に例えて言えば、復帰後の最初の試合でノーヒットノーランというわけではなく、ランナーを出しながらも何とか抑えている雰囲気だった。が、やはり第三幕になると、観客を圧倒する力を持っている。人間賛歌が高らかに鳴り響いて終わった。

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