クリスチャン・ツィメルマンのベートーヴェン 格調高い精神の遊びの世界
1月10日、武蔵野市民文化会館でクリスチャン・ツィメルマンのベートーヴェンのピアノ・ソナタ30、31、32番のリサイタルを聴いた。オーケストラ曲やオペラや弦楽器の曲が好きな私としては、久しぶりのピアノ独奏のコンサート。
しばしば、なんだかわけがわからずに魂が震えた。特に盛り上がるところでもないのに、「あ、なんと美しいんだ。時間よとまれ、音楽は美しい!」、そう言いたくなる瞬間が何度かあった。
30番と31番もよかったが、特に31番は素晴らしいと思った。
緻密に組み立てられているのはよくわかるが、その中で、ベートーヴェンが最後にたどりついた自由な境地を明確に示してくれているように思った。とりわけ第2楽章の、研ぎ澄まされ、この上なく覚醒した精神によるジャズの世界にも通じるような、自由闊達で何ものにもとらわれない世界は素晴らしかった! しかも、なんと格調高いことか。無意味な音が何一つなく、いたずらに感情を掻き立てることなく、くっきりと孤独で自由な音が紡ぎだされる。最晩年のベートーヴェンの精神世界とはこんなものだったのかと初めてわかった気がした。
ただ、ピアノソロをあまり聞かない私としては、これ以上のことは言えない。ともあれ、至高の世界に触れたと思った。
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