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2014年のはじまり

ここ数年、大晦日は「ベートーヴェンは凄い!」を見て一年の終わりにしていたのだが、今年はお休みした。ぜひ聴きたかったのだが、腹具合が最悪のため断念。残念だった。

 正月の間、いつものようにずっと仕事をしていたが、それでも普段よりは余裕を持てたおかげで腹痛は完治したようだ。

年末から正月にかけて、何枚かDVDを見た。感想を書いておく。

 

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「パルジファル」 ティーレマン指揮・2013年ザルツブルク音楽祭

演奏については素晴らしい。まず、言うまでもなくティーレマンの指揮がいい。スケールが大きく、しっかりとうねり、音の絡まりを魔法のように描き出していく。ただ、ちょっと官能性が不足しているような気がする。どうもこの指揮者、まじめすぎる。オケはドレスデン・シュターツ・カペレ。これまた素晴らしい。

歌手は、グルネマンツを歌うシュテフェン・ミリングがいい。深い声で実に安定している。クンドリーを歌うミヒャエル・シュースターも、不気味な雰囲気をまきちらしながらも妖艶。歌い回しも見事。パルジファルのヨハン・ボータは声そのものはとてもいいのだが、やはり、この体型ではパルジファルの役は難しい。動き回れないために演技を一切していない。これでは歌の表情も伝わらない。オペラ映像としてはつらい。ヴォルフガング・ コッホがアンフォルタスとクリングゾールの二役。前半はとてもよいのだが、後半少し疲労した感じ。

ミヒャエル・シュルツの演出にはかなり問題を感じる。アンフォルタスの分身(いわゆる侏儒と呼ばれる人)らしい黙役の人物が登場し、あれこれとアンフォルタスの心を演じる。また、同じく黙役の二人のキリストが登場し、クンドリーがキリストの重荷を背負いながら生きてきたこと、パルジファルによって、その重荷を吹っ切ることができ、新たなキリストを愛し始めることが暗示される。音楽そっちのけでたくさんのパントマイムがなされるのを、私はかなりうるさく感じる。もっと音楽に集中したい。

しかも幕の最後、騎士たちがキリストを磔にしてクンドリーにマグダラのマリアの役を押し付けようとする(?)場面が描かれる。演出家が何を言いたいのかは私にはよくわからないが、クンドリーを無理やりマグダラのマリアに仕立て上げようとするワーグナーへの批判なのだろうか。あまり説得力を感じなかった。

 

 

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「パルジファル」 ベルナルト・ハイティンク指揮・チューリッヒ歌劇場

部屋を掃除したら、このDVDがひょいと出てきた。しばらく見ていない気がしたので、見ることにした。2007年の映像。

ハイティンクの指揮については、やや中庸を行き過ぎる感じがする。もう少し激しく切り込んでもよいのではないか、もっとどす黒く描いていいのではないかと思うところが多々ある。だが、それをしないで、じっくりと描いていくところがハイティンクだろう。長い楽劇なので、もちろんこれはこれでじっくりと味わえる。あまりいじられると、むしろ疲れてしまう。

歌手については、グルネマンツを歌うマッティ・サルミネンがやはり素晴らしい。このころ、すでにかなりの年齢だと思うが、いかにもワーグナー歌い。パルジファルのクリストファー・ヴェントリスもクリングゾールのミヒャエル・ヴォレもとてもいい。ただ、クンドリーを歌うイヴォンヌ・ナエフはかなり弱い。声に強靭さがないし、歌も一本調子。容姿を重視しすぎた人選といえるかもしれない。演出はハンス・ホルマン。色彩的にとてもきれい。

 

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「パルジファル」 98年バイロイト音楽祭 シノーポリ指揮

これも掃除しているときに目に入ったもの。ついでに見たくなった。99年にバイロイトでみたものと同じプロダクション。実演を見て素晴らしいと思った。

あらためて見ると、やはり実にいい。まず、ジュゼッペ・シノーポリの指揮が最高に素晴らしい。びしっと締まり、しかもしなやかで繊細で官能的。昔のクナッパーツブッシュなどのような雄大さはないが、シノーポリの演奏を聴くと、こちらのほうが「パルジファル」らしいと思えてくる。演出はヴァルフガング・ワーグナーなので、きわめて妥当。安心して見ていられる。

歌手はみんながいい。とりわけ、アンフォルタスのファルク・シュトルックマンとクリングゾールのエッケハルト・ヴラシハが素晴らしい。グルネマンツのハンス・ゾーティン、パルジファルのポール・エルミング、クンドリのリンダ・ワトソンもまったく文句なし。第二幕のひしひしと押し寄せる官能と苦悩は圧倒的だ。

今回立て続けに3本見た「パルジファル」の中で、私はこれが一番好きだ。指揮は同点、歌手と演出でシノーポリのバイロイトのほうが感銘度が高い。

 

649


「アラベラ」 クリスティアン・ティーレマン指揮・メトロポリタン歌劇場

 このDVDも片づけの副産物。購入したままで見た記憶がないので、正月を機会に見てみた。メトロポリタンであるだけに、まさしくオールスターキャスト。悪かろうはずがない。1995年の録画というから、もう20年以上前の記録だ。

 アラベラはキリ・テ・カナワ。表現力に弱さを感じて好きな歌手ではなかったが、こうしてみると、やはりとても魅力的。これはきれいだし、やはり容姿の美しさは他の歌手にまねできない。ズデンカを歌うマリー・マクローリンも実にかわいらしい。美人役でよく映像に登場した歌手だが、歌もチャーミング。

マンドリーカはヴォルフガング・ブレンデル。とてもいいのだが、マンドリーカ役にしてはちょっと都会的すぎる。とはいえ、これがこの人の個性なので、致し方ない。ヴァルトナー伯爵はドナルド・マッキンタイア、アデライーデはヘルガ・デルネシュ。そして、なんとミリはナタリー・デセー。よくもまあこんなスターたちを集めたものだ。

演出はオットー・シェンクなので、ごくまとも。いかにもメトロポリタン・オペラらしく豪華で楽しく、美しい。

第三幕冒頭のティーレマンの棒さばきは本当に素晴らしい。映像で見ていても、特に何かをしているようには見えないのだが、出てくる音に驚嘆する。シュトラウス特融に音の絡まりを美しく、ダイナミックに描き切る。満足。

昨年は、大学の最も忙しい役職に就いたために、すべてが中途半端になってしまった。今年は役職から離れて、もう少し自由にしたい。昨年よりももう少し気合を入れて様々な仕事にあたりたい。

 

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