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二期会「ドン・カルロ」 若手歌手たちの輝かしい名唱

 223日、東京文化会館大ホールで二期会公演「ドン・カルロ」を見た。素晴らしい公演だった。

 もっと前に見たかったのだが、先週は京都で集中講義をしていたので、最終日にやっと間に合った。ダブルキャストの若手中心のメンバーによるもの。二期会の若手の実力を思い知らされた。ただし、エリザベッタ役の安藤赴美子はインフルエンザだということで、横山恵子が代役。横山は二日続けての出演ということになる。安藤さんのエリザベッタが聴けないのはとても残念。

 4人の男声陣がいずれもすばらしい。ロドリーゴの上江隼人は張りのある美声で高貴な精神をうたい上げていた。ドン・カルロの山本耕平は張りのある澄んだ美声。姿かたちも申し分ない。気品ある王子を見事に演じている。フィリッポ2世のジョン・ハオは人物造型も明確、声も太くて威厳がある。宗教裁判長の加藤宏隆も迫力ある声で、狂信的な残酷さをうまく表現している。これほどレベルが高いと一人ひとりのアリアはもちろん、二重唱、三重唱も心が震えるような力感がある。ヨーロッパのひのき舞台で歌っても十分に通用すると思う。「ドン・カルロ」特有の男のドラマが炸裂。歴史ドラマ特有の思想と権力と恋愛がからんで、どす黒くも崇高な世界が展開する。かなり興奮した。

 女声陣も負けていない。エボリ公女の清水華澄の有名な二つの歌はいずれも大変感動的だった。エリザベッタの横山恵子も最終幕の歌は清純で悲しくて切ない。

 オーケストラは東京都交響楽団。申し分なかった。木管楽器にとりわけ美しさを感じた。ガブリエーレ・ファッロの指揮についても、私が不満に思うところはない。スケールの大きな深い演奏。じわじわとドラマを盛り上げていた。デイヴィッド・マクヴィカーの演出については、私はちょっとだけ不満。経費の問題もあるだろうが、もう少し幕ごとの違いが明確でもよいのではないかと思った。すべての幕を通して同じ雰囲気なので、雰囲気の違いが伝わらない。やはり第一幕はもう少しフォンテーヌブローの森らしくあってほしい。それがないと、ドン・カルロとエリザベッタの恋愛の出発点が曖昧になるのではないか。

「ドン・カルロ」というオペラについても小さな発見をいくつかしたが、明日までにしなければならない仕事があるため、今日はそれについて書く時間がない。そのうち、思い出したら書くことにしよう。

 ともあれ、小さな瑕疵はあるにせよ、全体的には本当に素晴らしかった。堪能し、感動し、世界に誇る日本オペラの実力を知ることができた。若手がどんどんと出てきていることにも頼もしさを感じた。昨日きいた岸七美子さんも、今日聴いた歌手たちも、本当にこれからが楽しみだ。

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