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エリシュカ指揮、音楽大学フェスティバルオーケストラのすごさのことなど

 昨日(3月29日)、ミューザ川﨑でラドミル・エリシュカ指揮による音楽大学フェスティバルオーケストラの演奏を聴いた。学生オケによる演奏だが、プロの演奏家にまったく引けを取らない。正真正銘の名演奏だった。

 前半はスメタナの「わが祖国」から「高い城」「モルダウ」「シャルカ」の3作。後半にドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。ともに名演。

 もちろん、私の目当ては名指揮者エリシュカ。札幌交響楽団での名演の噂を聞いて初めて東京での演奏を聴いたのが2010年。その素晴らしさに驚嘆した。その後、何度か実演、録音を聴いたが、いずれにも圧倒された。

 まず音に独特の表情がある。しなやかで厚みがあり、深みがある。私はワイエスの描く農具の絵を連想する。生活に根付き、命が宿っている。そして、その音で、少しも誇張なく、しかししっかりとした情緒を伴って音楽が展開していく。音の重ね方も実に美しく理にかなっている。謙虚で堅実で温かく、しかも内面の激しさを備えている。

 オーケストラも実にすばらしい。エリシュカの求める音をしっかりと出している。とりわけ弦のしなやかな厚みに驚いた。もちろん、クラリネットやオーボエ、フルート、そしてイングリッシュホルンの音の抒情にも圧倒された。

 世界の若者を集めたグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラのすさまじさ(ベルリン・フィルにも勝ると思った!)を知っている私は、日本の音大生のエリート集団であるこのオーケストラも素晴らしいに違いないと思っていたが、予想通りのすごさ。グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラのように、この音大生選抜のオーケストラを常設化して、エリシュカのような指揮者に振ってもらったら、どんなに大きな活躍の場が広がることだろう。そんなことを夢想した。

 ところで、音大生の身内の人が多かったのか、演奏中、プログラムをガサガサさせる人がとても多くて閉口した。完全に静まることがなかったのではないかと思えるほど。私の隣に座った高齢の女性二人組は演奏中にチラシを見たり、それを下に落としたり、バッグに入れたり。できるだけ寛大でいたいと思っている私もさすがに耐えかねて、「新世界」の第二楽章で、口頭で注意をした。不満そうに私の顔を見ていたが、ともあれ静かになった。

 終了後、友人のS氏(大学院時代からの付き合い。広告・出版業界で活躍し、私の本の編集をしてくれたこともある)とともに、そのまま仙川に移動。仙川駅付近のプラザ・ギャラリーで開かれる「春のトーク&レコード・コンサート 野村あらえびすコレクションからドイツの名唱を聴く」に出席した。

 野村あらえびすというのは、クラシック音楽好きにはなじみ深いが、「銭形平次」の原作者、野村胡堂のもう一つのペンネーム。日本最初の音楽評論家と言って間違いない。膨大なレコードのコレクションを残したが、その一部が最近CDで復刻された。それを聞きながら、野村胡堂研究家でもあるエッセイストの太田愛人さん、ドイツ文学者の高辻知義さん、コーディネーターとして 小中陽太郎さんが主体となって話を進めるという会だ。

 ロッテ・レーマンなどの歌手たちの歌、とりわけワーグナーの中のアリアやシューベルトの歌曲を聞いた。とてもよい音で復刻されている。

 野村胡堂の奥の深さ、その周囲に集まる人脈について、太田さんは生き生きと話してくれた。80歳を越しておられるのに、固有名詞にも年代にも詰まることなく、膨大な知識を披露してくれるのに圧倒された。高辻先生は、これまでワーグナーに関してたくさんの著書を読ませていただいて、その博識と見識はよく存じ上げている。今回もいろいろと教えてもらえた。

 小中さんに勧められての出席だったが、突然、小中さんに振られて、前に出て再生するCDの曲名や演奏家名を読み上げるように指示された。しかも、「ワーグナーにとって大事なのは音楽か文学か」という「論争」についての発言を求められたりもした。小中さんとお付き合いして数年になるが、何かの会に誘われて何気なく出席すると、突然、何かをさせられたり、発言を求められたりするので、実に困る。が、小中さんのお人柄もあって、それが実に楽しく進んでいく。昨日も楽しく話ができた。その後、ワインを飲みながら歓談。

 とても充実した一日だったが、少々くたびれた。

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